【本編完結】運命の番〜バニラとりんごの恋〜

みかん桜

文字の大きさ
72 / 106

☆閑話☆親友の恋 side一樹

しおりを挟む
 俺には岩清水日向という、中学時代からの親友がいる。日向と初めて話したのは部活の仮入部期間だった。確か身長が近いからとペアを組まされたんだよな。

 俺達が仲良くなるのに時間はかからなかった。

 家も近く、登下校はもちろん休みの日だってよく遊んだし、中3ではクラスも同じで、バカなことばっかりしてた。中学時代を振り返ると、必ず隣に日向がいるくらいに。

 そんな日向が変わり始めたのは中3の春。たまに理由なくソワソワしたり、いちご好きから急にバニラ好きになったり。その理由はこの前聞いて理解したんだけどな。

 高校に入学して、見るからにアルファな香坂に速攻で好かれちゃってさ。そこから日向と2人で話すことはなくなった。実はそれがちょっと寂しかったりもした。

 そんな日向がオメガだって気が付いて、話してくれるのをずっと待って…。でも日向がずっと悩んでいたことを知って、俺から世間話をするように、聞いてやればよかったって後悔したんだ。


 あー、香坂と運命の番ってやつだと聞いた時は流石に驚いたな。

 お試し期間を経て正式に付き合い出した2人。日向から報告された時は嬉しかった。

 どっちが先に彼女ができるか、なんて話してたこともあったから、彼女じゃなくて彼氏だったなって盛り上がって。幸せそうな日向に、幸せのおすそ分けしろ~とかふざけあったり。

 うん。俺、幸せを分けてくれって確かに言った。

 言ったけどな?

 彼女いない歴=年齢の俺からすると、中々辛いものがある。

 おすそ分けしすぎ。もう俺、お腹いっぱい。

 昨日だって、電話の内容の大半が香坂の話。なーにが『光琉を見上げるとさ、いつも目が合うってことに気が付いたんだ』だよ。

 知ってるわ!

 あいつ、1年の時からずーっと日向しか見てないわ。むしろ日向に熱い視線を送ってるのに、日向はそれに気付かないし、去年、クラスの男子はみんな香坂に同情してたくらいだからな。

 今だってそうだよ。体育館に向かうだけなのに、手なんか繋いで。大体、更衣室って体育館の建物内にあるんだぞ? 目的地、目と鼻の先だから。

 ただ繋ぎたいだけなんだろうけどさ、俺、甘いの苦手って日向知ってるじゃん。砂糖吐くって。

 ……他の3人は全く気にしてない。これってアルファとオメガの恋愛では普通なのか?

 ん~、でも日向がオメガ用の更衣室を使うようになったのは良かった。誰も日向の着替えなんかに興味ないのに、威圧っていうかさ…ベータってフェロモンとか分からないはずなのに、アルファが本気だしたフェロモンだと感知できるんだなって、勉強になったわ。

 日向がオメガであることは、すぐに噂になった。そりゃに一番人気のモテ男、香坂の恋人だからな。

 これで堂々と守れるって香坂はもちろん、宇都宮も稜ちゃんも言ってて、既に堂々と守ってるじゃんと思ったのは、俺の心の内に止めておいた。

 あー。あと、学校一のモテ男、蓮は日向を狙っている。この噂がなくなって良かったと日向は言うけど、それ、日向の名前が俺の名前に変わったんですけど。もちろんここにいる誰も助けてはくれない。

 まぁでも…日向がオメガだと分かっても、みんな好意的に受け入れたことには安心した。同じ中学出身のやつも変わらず日向に接しているし。……変わらずではないな。あんまり馴れ馴れしくすると香坂に睨まれるから。

「そんなにずっとくっついときたいもんかねぇ」
「あの2人?」
「悪い。独り言」

 呟いただけのつもりが、隣にいた宇都宮の耳には届いていたようだ。

「光琉、アレでも結構我慢してるんだし、許してやってよ」
「アレで!?」
「アルファの執着と独占欲、甘く見ないほうがいいぞ」

 まじかよ…

「GPSも付けたの最近だって言ってたし」
「GPS!?」

 アルファってこえぇ……。

 心の中で、親友へ応援の言葉を送っておこう。



しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

逃げた先に、運命

夢鴉
BL
周囲の過度な期待に耐えられなくなったアルファーー暁月凛(あかつき りん)は、知らない電車に乗り込み、逃避行を計った。 見知らぬ風景。 見知らぬ土地。 見知らぬ海で出会ったのは、宵月蜜希(よいつき みつき)――番持ちの、オメガだった。 「あははは、暁月くんは面白いなぁ」 「ありがとうね、暁月くん」 「生意気だなぁ」 オメガとは思えないほど真っすぐ立つ蜜希。 大人としての余裕を持つ彼に、凛は自分がアルファであることを忘れるほど、穏やかな気持ちで日々を過ごしていく。 しかし、蜜希の初めての発情期を見た凛は、全身を駆け巡る欲に自分がアルファであることを思い出す。 蜜希と自分が”運命の番”だと知った凛は、恋を自覚した瞬間失恋していたことを知る。 「あの人の番は、どんな人なんだろう」 愛された蜜希は、きっと甘くて可愛らしい。 凛は蜜希への秘めた想いを抱えながら、蜜希を支えることを決意する。 しかし、蜜希の番が訳ありだと知った凛は、怒り、震え――同時に、自分がアルファである事を現実は無情にも突き付けて来る。 「凛さん。遊びは終わりです。帰りますよ」 強引に蜜希と引き剥がされる凛。 その凛の姿と、彼の想いを聞いていた蜜希の心は揺れ――。 オメガバースの世界で生きる、運命の二人の逃避行。 ※お気に入り10突破、ありがとうございます!すごく励みになります…!!

【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。 そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。 オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。 (ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります) 番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。 11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。 表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

Ωの不幸は蜜の味

grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。 Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。 そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。 何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。 6千文字程度のショートショート。 思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

多分嫌いで大好きで

ooo
BL
オメガの受けが消防士の攻めと出会って幸せになったり苦しくなったり、普通の幸せを掴むまでのお話。 消防士×短大生のち社会人 (攻め) 成瀬廉(31) 身長180cm 一見もさっとしているがいかにも沼って感じの見た目。 (受け) 崎野咲久(19) 身長169cm 黒髪で特に目立った容姿でもないが、顔はいい方だと思う。存在感は薄いと思う。 オメガバースの世界線。メジャーなオメガバなので特に説明なしに始まります( . .)"

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...