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第4章
6.
しおりを挟む帰りの車の運転は、ユカ姉が引き受けてくれた。
すっかり遊び疲れた若い二人は、後部座席で仲良く爆睡している。
「いい気なもんよねぇ」
「うん」
「あんたも眠かったら、寝てていいわよ」
「ありがと」
かなり渋滞してるし、家に辿り着くのはたぶん深夜だろう。
「……ねぇ、」
「ん?」
助手席の窓から、夕日で輝く海を見ながら言った。
「あたし、覚悟決めたよ」
さっきまで、ミケ達のことがすごく遠くに思えたけど。
でもあたしも、知ってるはずだ。
みつめられるだけでドキドキしてその人のことを思うと胸がいっぱいになって。
まるで初恋みたいに純粋で、きらきらしたその気持ち。
今まで幾つも恋をしてきて、忘れかけてたけど。
……でも、失ったことでわかったことも、きっとあるから
「だから、大丈夫」
「……そう、」
あたしは、いつかまた恋をするだろう。
でもその時はもう、打算的な事を考えたり駆け引きなんてしないで、真っ正面から向き合いたい。
わかりあえなかったり、泣くこともあるかもしれないけど、それでも海斗くんとミケのように相手の幸せを自分の幸せだと思えるような、そんな恋がしたいと思った。
「ところでお昼ご飯の時、海斗くん、ミケになんて言ったと思う?」
ユカ姉は笑いながら言った。
「あんまり可愛いことすると、今すぐここでチューするぞ、って」
「……うわぁ」
「言うわよねぇ、海斗くんも」
「……完敗よ、もう」
あたしは健やかな寝息をたてている二人を見て溜め息をつくと、ちょっと笑った。
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