クラスで転生〜元いじめられっ子、異世界で気ままに暮らす〜

華町はる

文字の大きさ
11 / 13
1章〜世界を気ままに生きさせて貰います〜

10話 大爆発でストレスも大発散

しおりを挟む
ーーチュンチュン

 窓の外からは、朝を知らせる鳥の鳴き声が聞こえてくる。
 まだ日は完全に顔を出していないようだ。空はうっすらと白くなっていて、もうすぐ朝が訪れることを知らせようとしている。

ーーガバッ

 「あー、もうっ!寝れないっ!チクショーッ!」

 結局、昨日から俺は一睡も出来てなかった。

 目を閉じると、シズルさんのあの胸糞悪い、生々しい話が映像として脳裏に流れてくるのだ。

 イノサイとの戦いで疲れていたはずなのに一睡も出来ない。
 イライラするのも仕方ないよね?

 泊めてもらった部屋は、シズルさんの大きな家の二階にある、広いわりにベットが二つしかない、簡素な部屋だった。

 俺が一つのベットを使い、もう一つでロロ、ググ、豆シカが眠りについている。

 三人(匹?)は、昨日よほど疲れていたのか、シズルさんの話が始まる前から一度も起きずに深い睡眠に落ちている。

 薄暗い部屋の中でも夜目が効く俺には、三人(匹?)の可愛らしい寝顔が見え、少しホッとし笑みがこぼれる。

 昨日の話を聞いてなくて本当に良かった。

 そんなことをふと思ってしまう、自分自身に、いつから俺はお父さんみたいになったんだと、ツッコみ、苦笑した。

 (ちょっと早いけど、もう起きるかぁ。寝れないし……イライラした時は思い切り魔法をぶっ放して、憂さ晴らししよう。うん、それがいい。)

 俺は三人(匹?)を起こさないように隠密スキルを発動しながら静かにベットから這い出て、家を出た。



 まずは、場所の確保をする。
 魔法の音でせっかく寝ているのに起こしてしまったらかわいそうだ。

 そう思い、家の周りをウロウロしてみる。

 シズルさん宅のちょうど裏手に伸びる獣道を歩いて行くと、茂みの奥に程よい空き地を見つけた。


 森に囲まれ、静寂に包まれたここなら、多少の音の心配はしなくて良さそうだ。


 そう思い、さっそく空き地の真ん中に『グローアップ』を唱えて目の前に巨木を成長させる。

 今日はヒマワリは咲かなかった。順調だ。


 そして俺は、残りの魔力を全て使い、今ある全魔力を掌に持ってきてみた。

 身体中の魔力がごっそりと流れ、掌に集中してくる。
 もはや身体の中の魔力はない。

 だが、まだ発動はしない。

 もっと、もっと、もっと溜めて最高威力の火力の魔法を出すために俺は出力を我慢する。

 そのくらい今はイライラしている。やるなら一発集中だ。
 それに、きっと溜めれば溜めるほど強い魔法が出るに違いない。

 そんな謎の確信を持ちながら、俺は溜め続けた。

 暫く溜めていると、身体中の魔力は無くなっているはずなのに、また魔力が集まり始めるのを感じた。


 (あれ?どこから集まってる??)


 俺は、魔力感知スキルを発動して魔力の流れを探してみることにする。

 すると原因は、すぐに判明した。

 俺は魔法というものは自分の中から体内を通して発動するものだと思っていたのだが……

 空気中から俺という台風の目に集まるように渦を巻きながら集まっているではないか。
 

 (え、こんなことって出来るのか?知らなかった……。ってかこれなら無限に集まるんじゃね?え、もっと集めてみてもいいかな??)


 興味本位だった。

 俺は全神経を掌に集めさらに魔力を集めるようにしてみる。

 空気中から魔力はどんどんと集まり、遂に俺が制御できる限界点にまで達した。身体が震えて悲鳴を上げている気がする。

 (くっ……限界か…?でもかなりの量の魔力が集まったぞ?まぁもう、やってみるかっ!)

 「っしゃぁ……大きなキャンプファイアーになれっ!最高火力でぇぇぇえ『バーーーーン』ッ!!」

 俺は先程作った巨木めがけて、『バーン』を発動する。


ーーッシュッッッッッッッドゴォォォッンッッ


 発動した瞬間、一瞬朝日が上がったのかと思うほどの強烈な光が辺りを照らす。


 そして遅れて、鼓膜が引き裂かれるかと思うほどの大きな音と共に、目の前の森の包まれるような程の爆発と爆風が巻き起こった。

 「……ファッ!?」

 気づけば、身体中に肌が焼き爛れるような強烈な痛みを感じ、俺は意識を手放したのだった。






 その日、ミウリ村の上空には大きな火柱とともに巨大なキノコ雲が立ち登った。
 周辺の木々は全て燃え、倒れ、全ての生き物はこの世を去った。


 そして。


 空に舞い上がる巨大なキノコ雲を見た、周辺国のある国では、敵襲だという話と敵国はどこかという話で持ちきりになり、またある国では誰かが、神の怒りを買って、古龍が蘇ってしまったという噂が広まった。


 そんな爆風の中心地には、全身が炭のように真っ黒になり小さく浅い息をしている死にかけの男が横たわっていた。

 そしてそんな男に近づく、焼き爛れた大地に相応しくないほどの真っ白なローブに包まれた一人の白髪の老人がいた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...