異世界来たんだから気ままに過ごしたっていいんじゃない?

華町はる

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7話 カリキュラム〜午後編〜

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 お昼を食べ終えて、部屋に戻り、しばらくブルーと戯れていると扉をノックする音が鳴り響いた。

ーーコンッコンッ

 「ケータ様、午後のカリキュラムのお時間です。中に入ってもよろしいでしょうか。」

 俺はすぐ様、ブルーを服の中に隠して、返事をする。

 「どうぞ。」

 入ってきたのは、メイド姿をした、若い女性だった。
 グリーンの綺麗な髪をした女性だったが、年齢は中学生くらいの小さい子だった。手が震えているところを見ると、緊張しているようだ。

 「こんにちは。午後はどこに行けばいいのですか?」

 俺は、優しく語りかける。
 すると、メイドは恐る恐る顔を上げたが、自分よりも年下な俺を見て、少し緊張が解けたようだった。

 「はい、ここでご支度をしていただき、城の門まで行っていただきます。お支度から、門までの移動は私が案内させて頂きます、よろしくお願い致します。」

 ぺこりと頭を下げて、お辞儀をする姿は、非常に可愛かった。

 「ケータ様のために、こちらの防具と剣をご用意致しました。」

 そしてメイドが持ってきた箱から、取り出した防具類を見て、俺は、目を見張った。
 黄金で出来たキラキラの防具と、鏡のように磨かれた長い長剣だったのだ。

 「えっ!?こんなの…こんなの貸してくれるの!?」

 「いえ、貸すのではありません、これはケータ様の専用防具でございます。遠慮することなくお使い下さい。」

 「ほぇー……マジか…こんなのくれるのか、こりゃ凄いわ。ねー、ねー、これってみんなもらってるの?」

 「あ、はい、防具は皆さん同じ仕様のものをお渡ししております。ただ、剣に関しては……」

 後半、何か言いづらそうにしていたので、少しの沈黙の後、再度尋ねた。

 「ん?どーしたの?」

 「あ、はい、少し言い辛いというか、言っていいのか分からないんですが、皆様は召喚された際に、自分の成長と共に強くなる武器をお持ちです。ただ、ケータ様はお持ちでないようでしたので、こちらで準備させて頂きました。」

 「え、みんな剣なんて持ってたかなぁ?いや、持ってなかったような…」

 「あ、いえ、所有者が武器が欲しいと思うまで、実態があるわけではないので、見えないんです。ただ、午前中の際に教師の方々が、とあるアイテムで鑑定したそうです。その際にケータ様には反応しなかったとかで……。」

 「へ、へぇ…俺は無いのか…そーか…うん。分かったよ。あ、君が気にすることじゃないからね、言いづらいのにありがとう!」

 とは言いつつも、俺の心は沈んでいた。
 今まで自分ステータスが低かったから、薄々気づいてはいたけど、お前は勇者じゃない、そう言われているような気がして、なんか、落ち込んだ。

 「……あの~……私は、勇者様のことは分からないですが、勇者様って力だけじゃないと思うんです。力で解決できないことだって沢山ありますし…それに。それに、民たちが求めてるのだって力だけじゃなくて優しさだったり、話を聞いてくれる事だったりするかもしれないです。いえ、きっと、いや、絶対そうです!だからそんなに落ち込まないでくださいね。……あぁ、私は何を…申し訳ございません。出過ぎた真似を致しました。」


 俺は、彼女の言葉を聞き、はっとした。


 俺は日本で、"力"のせいで苦労して悲しい思いをしてきた。力には良い面もあるけど悪い面もあることを誰よりも分かってるはずじゃないか。
 それなのに、異世界に来て、気分が上がり、自分の力が無いことを悲しんで……はぁ。力を求めるなんて、これじゃ俺を虐めてたアイツらとおんなじだな。


 「いや、ありがとう、君の言葉のお陰で、俺の大事なものを取り戻せた気がする。そういえば、君はなんていう名前なの?」

 「いや、そんな恐れ多いです……出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ございませんでした……私の名前は、給仕見習いのフェルです。以後、宜しくお願い致します。」

 「フェルか、覚えておくよ。また帰ったら話し相手になってくれないかな?フェルと話すと心が洗われる気がするよ。それじゃあ行ってくる。って、あれ?どっちだっけ?」

 「クスッ、うふふふ…ご案内致します、勇者様。」

 俺は、若干の恥ずかしさを感じながら、フェルの後に続き部屋を出た。

 そして、城の門まで行くと、兵士達が数人待っていたので、フェルと別れ、兵士達と合流した。

 「おー、勇者様。これはこれは、勇者様ともなれば遅刻も許されるんですねぇ。いいご身分だ。これからは俺たちと訓練だからな、楽しくいこうぜ。」

 合流した兵士達の中で俺に話しかけてきたのは、なんともガラの悪い兵士の3人組だった。

 そんな兵士達と合流して、ため息をついていると、トントンと肩を叩かれる。

 後ろを振り向くと……


 「おー良かった。アンリさんも一緒なんですね。今兵士達に絡まれて、どうなる事になるかと思ってました。でも、アンリさんと一緒で安心です!」

 「私も、安心しました。良かった、見知ってる顔があって。男の人たちの中で一人は、少し不安だったんです。」


 そんな話をしていると、突然号令がかかり、森へと移動が始まった。

 俺とアンリさんを入れて兵士12人で出発だ。
 また、訓練の際のチームが3つに振り分けられていて、そのチーム毎で縦になり、移動を行うようだった。

 先頭の4人組に俺を含む、先程絡んできたガラの悪い兵士3人、中間に4人の兵士、最後尾にアンリさんを含む4人組での移動だった。

 移動中は、俺のチームの3人の兵士がずっと下らない話をしながら歩いている。
 なんとも緊張感のない……俺は半ば呆れながらも付いていった。

 森にポッカリと空いた広い草原のような場所で、一時、停止しアンリさんのチームにいた、この部隊のリーダー的な人から、号令が響いた。

 チーム毎にこの付近にいるゴブリンを殲滅しろとの事だった。


 その号令と共に、3組のチームはそれぞれ森に入り、バラバラに行動をすることになった。

 俺らのチームは、最初こそゴブリンを狩っていたのだが、面白くねーと、一人が言い出した事を皮切りに、森の奥に行こうと提案が上がる。

 俺は、止めようと進言したが、勇者様が怖がってるなんて、と爆笑された後、話を聞かずに先に進んで行ってしまった。

 もちろん、俺も一緒に連行される形でだ。


 数時間ほど歩いただろうか。
 森の奥に進めば進むほど、鳥の鳴き声もしない、薄暗い静寂に包まれた森になっていった。

 しかし、気にする様子もなく、3人の兵士達は前に進む。喋り掛けても、全然返答が無く、ただひたすらに前を向いて歩いている。
 俺は愛想を尽かし、一人で戻ろうと、後ろ振り向く。

 しかし、森が深すぎて、戻ろうにも来た道さえ分からなくなっていた。これは、まずいと、兵士達の肩に手を掛けようとした


 そんな時だった。


 「グォォォォオオオア」

 
 恐ろしい声が森中に響き渡り、前の兵士達もビクリと飛び上がった、かと思うと今度は、声とは反対方向に一目散に全力疾走で逃げるように走っていった。


 俺は何が起きているのか分からないまま、呆然と声の方を見つめてしまっていた。
 恐怖と突然の出来事に足がすくんでいたという表現方法も的確だろう。

 何秒ほどそのままだっただろうか、やっと俺の足は動き始め、兵士たちと同じように声とは逆方向に逃走を図る。

 ちらりと背後に目をやると、大きな木々が根っこから倒されて、その奥に超巨大な生物が走ってくる事が分かる。

 しかし、まだ6歳の体。歩幅も小さく、逃げきれるとは思えなかった。

 「はぁ、はぁ、このままじゃ、追いつかれる……もう一か八か、やるしかないか。」


 俺は、辺りを見渡す。すると、すぐ右側にゴロゴロと大きな石が転がっている場所を発見した。


 すぐさま進行方向を右に逸れ、大きな岩の、岩と岩の隙間に身体を埋めて、土魔法で、出入り口を覆う。
 幸い、出入り口は1つしかなく、そこに今できる全魔力を注いだ。


 初めてやるから心配をしていたが、どうやら、成功したようだった。

 岩の隙間には、土で出来た壁が作られ、出入り口を覆っていた。

 その中で、俺は息を潜めた。


ーードシンッドシンッ



 大きな足音が、俺の方に向かって近寄ってくるのが分かる。

ーースンスンッスンスンッ

 岩の近くで歩みを止めた巨大生物は、鼻を動かして匂いを嗅いでいるようだ。

 (しまった……匂いで分かるのか!?)

 そう思った瞬間だった。

 ブルーが俺の懐から飛び出して、俺と土壁の間で、もぞもぞと身体を伸ばし始めた。

 (こんな時に何やってるんだっ!?土壁が壊れたら…あっ…)

 俺の心配など御構い無しに、身体を伸ばしたブルーは、土壁と岩の隙間を完全に埋めるようにぴったりと収まったのだ。

 しばらく、スンスンとやっていた巨大生物だったが、匂いがしなくなったのか、走ってどっかに行ってしまった。

 (そうか、ブルーは小さな隙間を埋めて、匂いの漏れを防いでくれたのか……助かっ……た)

 そして、俺は、緊張から解放され、安堵からか、意識が薄れていき、いつのまにか意識を手放した。

 
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