王子の恋

うりぼう

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(アスター視点)





「同情じゃない、同情じゃないんだ……!」

そうして必死に思いで告げた気持ち。
俺の正直な想いをどう受け取られているのだろうか。
名前も呼んでくれないというノエルの言葉に、呼びたくて仕方がなかった名前をそっと唇で紡ぐ。
両頬を包み、まっすぐに瞳を見つめて更に想いを告げる。

ノエルの瞳は俺の言葉を信じられないと語っていた。
我ながら酷い態度を取り続けたのだからそれも仕方がないとは思う。
けれどそのままでは嫌だ。
どうしたら俺の気持ちを信じてくれるだろうか。
ノエルに信じてもらう為なら何でもすると言ったのは本当だ。

信じられないというのなら毎日望むだけ愛を囁こう。
ノエルが望むのなら世界にひとつしかない宝石も探し出してみせる。
望むのならノエルの為に城でもなんでも建ててやる。
望むのなら国のひとつでもふたつでも喜んで差し出す。
俺から離れる以外の願いなら何だって叶えてやりたい。

「どうしたら信じてくれる?」

いつにない弱々しさでノエルに問う。
レイが見たら影で笑われてしまうに違いない。
それくらい余裕がなく、どうにかしてノエルを繋ぎ止めたいと思っているのだ。

「……」
「!何だ!?」

小さく呟かれた言葉に全力で耳を傾ける。

「……名前を」
「え?」
「……もう一度、名前を呼んで下さい」
「……!」

告げられたのは可愛らしい、そんな小さな小さな願い。
それにぎゅうっと胸を締め付けられた。

「ノエル」
「……っ」

愛しい人の名前を呼ぶと、その瞳からぽろりと涙が溢れる。

「ノエル」
「アスター様」

名を呼ぶと静かに返されるが、余計な物が付いているのでなしにしてもらいたい。

「様はいらない」
「ですが……」
「良いんだ、ノエルにはそう呼んでもらいたい」
「……アスター?」
「何だ?ノエル」
「……っ」

名前を呼ぶと嬉しそうに頬を緩めるノエル。
幸せを噛み締めるようなその笑みに何度も胸を締め付けられる。
これが愛おしいという気持ちなのだろうか。
ノエルを見ているとずっとそんな思いが溢れて止まらない。

そしてノエルの様子から、きっと俺の言葉は信じてもらえたのだろう。
それがまた嬉しくて、更に好きな気持ちが増していく。

自分の気持ちを理解して受け止めてくれるのがこんなにも嬉しい事だったのか。
もっと早く伝えるべきだった。
何度も機会はあったのに何も告げずにただただノエルを傷付けただけの過去の自分を殴り飛ばしに行きたい気分だ。

「ノエル、好きだ、愛してる」
「……俺も」

嬉しそうに返される言葉に、俺は再びその身体をきつく抱き締めた。



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