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しおりを挟むあれからずっと想いを確かめ合っていた俺達は昼過ぎにやっと目を醒ました。
こうして肌を重ね、朝まで(今は昼だが)共に過ごすのは初めての事だ。
日を浴び、自分の腕の中で目覚めたノエルが可愛くて堪らない。
恥ずかしそうに頬を染め目を反らす様も可愛い。
「大丈夫か?身体は辛くないか?」
「大丈夫です。少し気怠いけど、嬉しいです」
「ノエル……!」
「っ、だ、駄目ですよ、もう行かないと!」
「今日はもう何もしなくても良いだろう」
「そういう訳にはいかないでしょう?」
ただでさえ大寝坊しているのだ、とそそくさとベッドから出てしまうノエルを追いかける。
「っ、アスター?」
「一緒に入ろう」
「!!!」
身を清める為に部屋を出ようとするノエルを背後から抱き締め、共に浴室へと入る。
恥ずかしがり軽く抵抗をされたが、子猫がじゃれつくようなその抵抗も、お互いの気持ちが通じ合った今は可愛くて仕方がない。
浴室でもう一度盛り上がりそうになったが、早く執務に取り掛からなければと焦るノエルに本気の抵抗をされ渋々了承。
だがどうにも離れ難く、執務室に至るまでの廊下でもずっとくっついていたら使用人達が珍しい目を丸くして驚いていたのが面白かった。
「おやおや、やっとお出ましですか。アスター様の朝は随分とゆっくりなんですねえ」
開口一番、廊下で待ち構えていたらしいレイの嫌味が炸裂。
それにびくりと震え、申し訳なさそうにノエルが謝る。
「申し訳ありません、俺が……」
「ノエル様は何も悪くありませんよ、いけないのはこのバカ王子ですから」
「ば……?」
「レイ!」
「本当の事でしょう?全く、想いが通じたからと言って政務に支障が出るようでは困りますよ?」
「俺がそんなヘマをする訳ないだろう」
ノエルの肩に腕を回しながらふんと答える。
実際、ここ最近はノエルとの時間を確保する為に執務は事前にある程度前倒しで済ませているのだ。
とはいえまだまだやる事は大量にあるのだが。
「ふふ、うまくまとまったようで安心しました」
「……!」
俺達の様子にいつになくふわりと優しい笑みを浮かべるレイ。
全てを見透かされているような笑みに、こいつはどこまで察しがよくてどこまで知っているのだと毎回疑問に思う。
「ノエル様、このバカ王子に何か理不尽な事をされたらすぐ私に相談して下さいね。きちんと制裁を加えますから」
「え?いや、あの……」
「レイ!ノエルに余計な事を吹き込むな!」
「おやおや、男の嫉妬は見苦しいですよ」
「な……!」
「……ふっ」
いつも通りの俺とレイのやりとりにノエルが噴き出す声が聞こえた。
「……ノエル?」
「ふっ、ははっ、すいません、二人のやりとりが面白くて……っ、あははっ」
「……!」
そのまま声をあげて笑い出すノエルに俺は見惚れてしまう。
こちらに来て初めて見る、初めて聞く明るい笑顔と笑い声だ。
そうだ、この笑顔だ。
俺はずっと、この笑顔を求めていた。
可愛い。
可愛すぎる。
「……アスター様、マヌケ面になってますよ」
「っ、う、うるさい!悪いか!?」
「ふふ、いいえ、とても良い事だと思いますよ」
部屋中に響く楽しそうな笑い声に俺の頬も緩んでいく。
その後、実は相当なブラコンだったシャノンとの一波乱や、ノエルがシュベリアであっという間に人気者になり俺が更に嫉妬心を燃やしたりと色々あるのだが。
「ノエル」
「!」
俺はノエルを引き寄せそのこめかみに唇を落とし、ひとまずはこの幸せをじっくりと噛み締める事にした。
end.
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とても良かった!
いい作品をありがとうございます!!
ありがとうございますー!
こちらこそ読んでいただきありがとうございます!!嬉しいです!!
アスターにはもう少し嫉妬に狂ってもらいたいです。続編あれば読みたいです
そうですね、私も狂って欲しいです!今ならノエルに別の相手を紹介していたと思います笑
ありがとうございました!
号泣しました…枕がびちょびちょです…アスターの子供っぽいところとノエルの育ちからくる卑屈さがお互い絡み合って最高の夫婦ですね…いつまでもお幸せに…アスター野郎にはノエルの笑顔をしぬまで守りきってほしいです…。。。
号泣ありがとうございます!
そうですね、しぬまでノエルの可愛い可愛い笑顔を守ってもらわないと!いつまでも幸せに暮らしていくと思います!
ありがとうございました!