逃げるが勝ち

うりぼう

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4のその後

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(三木視点)




ガタッ

「……」

春日が秋吉くんをトイレに連れ去った後、一つ大きな音がして静かになった。

成り行きを見守っていた店内の客が固唾を飲む。
あれだけ騒いでいたのだ、中で一体何が行われているのかが気になってしまうのだろう。
それが強面の春日と気弱そうな秋吉くんだから尚更。

(……ありゃちゅーの一つは確実だな)

ずずずー、とジュースを飲みそんな事を思う。

そもそもキスしようとしたのをオレが止めたからトイレに籠もったのだから。
止めなかったら、目の前でキスどころか服の中に手突っ込むくらいはするんじゃないかといった雰囲気を醸し出していた。

あのまま見ていても面白いといえば面白かったのだが、あいにく男同士の絡みを見てニヤニヤする趣味はない。

それにしても、春日も珍しいタイプに手を出したものだ。
どう見たって地味で真面目な眼鏡の男にしか見えないのにどこが良いのだろうか。
以前直接聞いた時はあいつもわかっていなかったみたいだけれど、どうやらいつの間にかふっきれていたようだ。

(べたぼれだねー)

隣に座っていたから気付かなかったみたいだけれど、秋吉クンがハンバーガーを口にした時のあの表情といったらもう。
あんな愛おしそうな可愛くて堪らないみたいな目は初めて見た。

そもそも春日が誰かに奢るなんて事すら見るのは初めて。
ついでにちゃっかりオレまでご相伴に預かってしまってラッキー。

(さあてどうするかなあ)

このまま置いて帰った方が春日が大喜びなのはわかるのだが、秋吉くんの鞄を放置していくわけにはいかない。
春日の鞄はどうせほぼ何も入ってないから知らん。

(あ、鞄だけ中に突っ込んで帰っちゃうか。いや、でも邪魔したら後が怖いしなあ)

鞄を届けに(といってもトイレだけど)行って、ちょうどいちゃいちゃしてる真っ最中だったらそれこそ明日の日は拝めない。

(うーん)

どうするのが得策か考えていると。

ゴンッ
ガンッ
ガチャガチャッ

「……お」

静まりかえっていたトイレからの音が響き、何人かがびくりと肩を震わせた。
ますます何が起こっているのかが気になるのだろう。
秋吉くんが殴られてるとか思っている人もいるかもしれない。

ガチャッ、バンッ!

目を向けると同時にドアが開いた。

「……あーらら」

中から出てきたのは秋吉くん。
眼鏡がずれて顔が真っ赤で目は潤んでいて制服が多少乱れている。

ああやっぱり襲ってたか。
ほんとに服に手突っ込んだか。
我慢しろよせめてちゅーまでにしとけよバ春日め。

「秋吉くん!」
「!」

一目散に逃げようと出口へ向かう姿に声を掛けると同時に、振り返った秋吉くんに彼の鞄を投げる。

「えっ、うわ!?」
「ナイスキャーッチ。頑張って逃げな」
「っ、あ、ありがと!」

眼鏡だから反射神経鈍いかと思ってたら意外と良いようだ。

「テメェ、三木!余計な事すんな!」
「ははっ、春日くんこわーい」
「!!!」

続いて出てきた春日の吠える声に脱兎の如く逃げるのを再開する秋吉くん。
猛ダッシュである。

「あ!コラ秋吉待ちやがれ!」
「うっせえばーか!誰が待つかセクハラ野郎!ばーか!」
「ばかばか言うんじゃねえええ!!!」
「ついてくんなああああああ!」

二人の声がドップラー効果で段々と小さくなるのを聞きながら、オレもその場を立ち去る。
改めて、オレでもたまに本気で怖いあの春日に、あそこまで悪態吐ける秋吉くんって凄いと思った。

翌日、怒り心頭の春日に鞄を渡すと同時に拳骨を戴いたのは言うまでもない。








end


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