嘘をついた平凡、片想いの幼馴染の恋愛相談に乗る

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あっという間に土曜になった。
いつもの居酒屋で合流すると、蒼弥は唐突に切り出した。

「端的に言うが…俺のことを男として好きになってほしい。」

……は?思わず吹き出しかけた。
あの蒼弥が、そんな純情なことを言うなんて!?
てっきり「そういう男女関係のノウハウ」を聞かれると思っていた俺は拍子抜けだ。
危うく「デート前に爪切っとけ」とかアドバイスするところだった。

「そ、そうだな。とりあえずは、会う回数やスキンシップを増やすしかないんじゃないか?」

「……もうやってる。あの鈍感は気づきそうにない。」

苦虫を噛み潰したような表情。
……どんだけ手強い相手なんだ。

「そっかー、やっぱり地道な努力が身を結ぶんだよ!ご飯食べに行ったり、遊びに行ったり。そういう努力をしていれば、きっと報われるさ!」

まあ俺は恋愛経験ないけどな!(n回目)

「……そっか、」

蒼弥の声は、納得というより諦めの響きだった。

――やっぱり一般論じゃダメか。

「……というか何で俺に聞くんだよ?

とりあえず、本来なら最初に聞くべきだった疑問を俺はぶつけてみることにした。

「……うん?」

キョトンとする。いや何でだよ。

「お前、恋愛経験豊富だろ?俺みたいに経験ゼロに等しいやつに聞くより、自分で動いた方が――」

俺は直球で聞いてみることにした。本当は「ゼロに等しい」じゃなく、完全にゼロなんだけどな。ははは、笑えてくるぜ。

「……俺、受け身の恋愛しかしたことないんだ。自分から積極的に相手を好きになってほしいと思った相手は…それこそ"あいつ"だけなんだ」

蒼弥は遠い目をして呟く。
そうだったのか…。
そういえば高校の頃、こいつの前には告白待ちの列ができてたな。学年を越えてギャラリーまで集まる始末で、クラスメイトからは“蒼弥参り”なんて言われてた。

「どうしても諦めきれないんだ。失いそうになって、やっと気づいた。ほんと遅いよな。俺はあいつとずっと一緒にいたいし、合法的にイチャイチャしたい。……だから決めた。例え倫理的にアウトでも、どんな手を使ってでも、あいつを手に入れる」

息を呑んだ。
冗談に聞こえないほどの重さだった。
……本気なんだな。想い人のことがよほど好きらしい。
というか高校の同級生?ならもしかしてクラスで一番可愛かった田中さんとかかな?俺は少し胸の奥がチクリと痛むのを無視し、こいつの恋を成就するために、全力を尽くすことに決めた。

「なるほどな。なら俺はお前の幸せを全力で応援する!何つったって幼馴染だからな!」

俺はビシッと指を突き出す。決まったぜ。

「……ありがとう」

蒼弥は笑った。いつもの爽やかな笑顔なのに、どこか影が差して見える。
まあ、片想いは辛いもんな。

さて、経験ゼロ男よ。今こそお前の脳をフル活用する時だ!

「なあ、直。お前はどうやって相手を落としたんだ?」

ズキッとした。そこ聞くなよ!
……いや、仕方ない。設定上、俺には恋人がいることになってるんだから。今の俺の恋人=蒼弥になってるのだから、こいつとの出会いを話せばいいか。

「えっとな……リサーチだな。相手の好きなものを徹底的に調べた。そして極めた。それで仲良くなったんだ」

幼稚園の時、某妖怪ゲームが大流行した時に、俺は蒼弥と同じ組になった。顔が超好みだった。仲良くなりたいが、席も遠いし、会話の糸口すら見当たらない。俺は、考えた末、あいつの好きな妖怪ゲームを極めることにした。

『す、すげぇ』

公園で見せたときの蒼弥の反応はいまだに覚えてる。
あの時から仲良くなれた。……確かに、あいつは受け身だ。俺が動かなきゃ、一生接点なかったかもしれない。

「……なるほど」

「後はライバルや敵がいるなら、それを知ることも大事だな!」

そう、蒼弥は男女問わず人気だった。俺は“蒼弥争奪戦”を勝ち抜くために必死で動いた。ライバルのリサーチをしつくして、必死に戦った。
……今思えば、ずっとそうやって俺はあいつにしがみついてきたんだ。
——でもそうやって続けることのできた、幼馴染ポジはすごい。あの後俺が本気で蒼弥を好きになっても、あいつに彼女ができても、俺たちは離れることはなかった。むしろ、あいつは俺との関係に口出しされたから別れたこともあるみたいだ。その時の彼女さんには悪いが、ちょっと優越感を感じた。大学生になってからは、さすがにお互い忙しくて、ちょっと疎遠気味だったけど。
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