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俺たちは蒼弥の家に行くことになった。
なんなら久々に泊まることになった。
幸い夕食の材料は買ってあるらしい。なんと家庭的な男だ。ふつう一人暮らしの男子大学生といえばカップラーメンとコンビニ弁当が主食だろうに。ちなみに俺は実家暮らし。だから料理なんて全然できない。そう言ったら「じゃあ俺が作ってやるよ」と即答してくれた。……これで落ちない相手とか、もう恋をしないって決めてる人間くらいじゃないのか?想い人は。
「風呂入ってこいよ、沸かしといたから」
さらっと言ってのける。風呂まで沸かしておいてくれるなんて、至れり尽くせりだ。
惚れ直しそう。いや、もう十分惚れてるんだけど。
そんなアホみたいなことを考えながら、俺は素直に風呂へ向かった。
「ふぅ~気持ちよかった」
風呂から出て、タオルを首にかけていると、キッチンで配膳をしている蒼弥と目が合った。
「ならよかった。そろそろご飯できるぞ」
軽く笑ってそう言う。……本当にいい旦那になりそうだな、こいつ。
女癖が治った今になってはこいつは無敵な存在かもしれない。こいつの女癖を治してくれた想い人には感謝しかない。……いや、こいつの女遊びがはじまった原因も想い人か。表裏一体だな世の中。
「悪いな、手伝えなくて。風呂入ってこいよ。配膳と取り分けくらいなら俺でもできる」
そう言って蒼弥に近づく。
「……いいのか?悪いな。じゃあ任せた」
エプロンを外すと、彼はそのまま風呂場へ直行した。
俺はというと、めんどくさくて髪も乾かさずに配膳と取り分けを済ませる。ちょうど二人分揃ったタイミングで、風呂上がりの蒼弥が現れた。
髪から滴る雫をタオルでざっと拭いながら、こちらを見てくる。……水も滴るいい男とはこのことを言うのか。俺はそう思った。
「お、できたのか。ありがとな。……って、お前まだ髪乾かしてねえのかよ」
「だってめんどいし」
「はぁ……仕方ねえな。ほら、こっち来い」
そう言われるがままに近づくと、蒼弥は自然な動作でドライヤーを手に取った。
スイッチを入れると、ぶぉおお……と温風の音が部屋に響く。
「乾かし合いっこしようぜ」
冗談みたいに言うけど、その手つきは妙に慣れていて、俺はされるがままベッドに座らされた。
耳のあたりを温風がかすめる。
蒼弥の指が、タオル越しに髪を梳くように触れてくる。思った以上に優しい感触に、心臓が跳ねた。
「お前、ほんと世話焼かれるの似合うよな」
にやっと笑う声が、頭上から降ってくる。
「う、うるせぇな。」
ドライヤーの温風がふわりと耳を撫でた。
蒼弥の指がタオルの上から髪を梳くように触れる。ごしごし雑にやるわけじゃなく、根元から丁寧に拭き取っていく。その度に、髪だけじゃなくて心臓までじわじわ熱くなっていく気がする。
「お前、髪柔らかいよな。乾かすの楽しいわ」
頭のすぐ近くから声が降ってくる。吐息が耳にかかるくらいの距離だ。
やめろ、それ以上近づくな。意識してしまうだろ。
「……っ、自分でやれる!」
「へえ?さっき“めんどい”って言ってたやつが何を言う」
軽口を叩きながら、前髪をかき上げるように指が額に触れる。
その仕草が妙に自然で、恋人にされてるみたいだ、なんて思ってしまった瞬間、胸の奥が苦しくなる。
「なあ直、こういうの、女の子にやられるのと俺にやられるの、どっちがドキドキする?」
「なっ……!」
反射的に振り返ろうとしたら、蒼弥の手に押さえられて正面を向かされた。
彼の指先が後頭部に触れている。力は優しいのに、逃げ場がない。
「ほら動くなって。乾かしにくい」
わざとらしく真面目な口調で言うけど、耳元で小さく笑った気配がした。
ずるい。完全に俺で遊んでる。
「……練習、なんだろ? そういうのは相談相手にしてやれよ」
必死に誤魔化すけど、自分の声が震えているのが分かる。
蒼弥はしばらく黙っていた。温風の音だけが部屋に響く。
……と思ったら、ふっとドライヤーのスイッチが切られた。
突然の静けさに、心臓の音がやけに大きく聞こえる。
「直」
短く名前を呼ばれる。
振り返ると、思った以上に近い距離で目が合った。濡れた髪を後ろに撫でつけた蒼弥の顔が、普段より大人びて見える。
「俺に乾かされるの、嫌じゃなかっただろ?」
にやっと笑う。挑発めいた口調なのに、その目は冗談みたいに軽くはなかった。
なんなら久々に泊まることになった。
幸い夕食の材料は買ってあるらしい。なんと家庭的な男だ。ふつう一人暮らしの男子大学生といえばカップラーメンとコンビニ弁当が主食だろうに。ちなみに俺は実家暮らし。だから料理なんて全然できない。そう言ったら「じゃあ俺が作ってやるよ」と即答してくれた。……これで落ちない相手とか、もう恋をしないって決めてる人間くらいじゃないのか?想い人は。
「風呂入ってこいよ、沸かしといたから」
さらっと言ってのける。風呂まで沸かしておいてくれるなんて、至れり尽くせりだ。
惚れ直しそう。いや、もう十分惚れてるんだけど。
そんなアホみたいなことを考えながら、俺は素直に風呂へ向かった。
「ふぅ~気持ちよかった」
風呂から出て、タオルを首にかけていると、キッチンで配膳をしている蒼弥と目が合った。
「ならよかった。そろそろご飯できるぞ」
軽く笑ってそう言う。……本当にいい旦那になりそうだな、こいつ。
女癖が治った今になってはこいつは無敵な存在かもしれない。こいつの女癖を治してくれた想い人には感謝しかない。……いや、こいつの女遊びがはじまった原因も想い人か。表裏一体だな世の中。
「悪いな、手伝えなくて。風呂入ってこいよ。配膳と取り分けくらいなら俺でもできる」
そう言って蒼弥に近づく。
「……いいのか?悪いな。じゃあ任せた」
エプロンを外すと、彼はそのまま風呂場へ直行した。
俺はというと、めんどくさくて髪も乾かさずに配膳と取り分けを済ませる。ちょうど二人分揃ったタイミングで、風呂上がりの蒼弥が現れた。
髪から滴る雫をタオルでざっと拭いながら、こちらを見てくる。……水も滴るいい男とはこのことを言うのか。俺はそう思った。
「お、できたのか。ありがとな。……って、お前まだ髪乾かしてねえのかよ」
「だってめんどいし」
「はぁ……仕方ねえな。ほら、こっち来い」
そう言われるがままに近づくと、蒼弥は自然な動作でドライヤーを手に取った。
スイッチを入れると、ぶぉおお……と温風の音が部屋に響く。
「乾かし合いっこしようぜ」
冗談みたいに言うけど、その手つきは妙に慣れていて、俺はされるがままベッドに座らされた。
耳のあたりを温風がかすめる。
蒼弥の指が、タオル越しに髪を梳くように触れてくる。思った以上に優しい感触に、心臓が跳ねた。
「お前、ほんと世話焼かれるの似合うよな」
にやっと笑う声が、頭上から降ってくる。
「う、うるせぇな。」
ドライヤーの温風がふわりと耳を撫でた。
蒼弥の指がタオルの上から髪を梳くように触れる。ごしごし雑にやるわけじゃなく、根元から丁寧に拭き取っていく。その度に、髪だけじゃなくて心臓までじわじわ熱くなっていく気がする。
「お前、髪柔らかいよな。乾かすの楽しいわ」
頭のすぐ近くから声が降ってくる。吐息が耳にかかるくらいの距離だ。
やめろ、それ以上近づくな。意識してしまうだろ。
「……っ、自分でやれる!」
「へえ?さっき“めんどい”って言ってたやつが何を言う」
軽口を叩きながら、前髪をかき上げるように指が額に触れる。
その仕草が妙に自然で、恋人にされてるみたいだ、なんて思ってしまった瞬間、胸の奥が苦しくなる。
「なあ直、こういうの、女の子にやられるのと俺にやられるの、どっちがドキドキする?」
「なっ……!」
反射的に振り返ろうとしたら、蒼弥の手に押さえられて正面を向かされた。
彼の指先が後頭部に触れている。力は優しいのに、逃げ場がない。
「ほら動くなって。乾かしにくい」
わざとらしく真面目な口調で言うけど、耳元で小さく笑った気配がした。
ずるい。完全に俺で遊んでる。
「……練習、なんだろ? そういうのは相談相手にしてやれよ」
必死に誤魔化すけど、自分の声が震えているのが分かる。
蒼弥はしばらく黙っていた。温風の音だけが部屋に響く。
……と思ったら、ふっとドライヤーのスイッチが切られた。
突然の静けさに、心臓の音がやけに大きく聞こえる。
「直」
短く名前を呼ばれる。
振り返ると、思った以上に近い距離で目が合った。濡れた髪を後ろに撫でつけた蒼弥の顔が、普段より大人びて見える。
「俺に乾かされるの、嫌じゃなかっただろ?」
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