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アニス編
告白
しおりを挟むアニスをしばらく見下ろしてた後、グライドは跪いてアニスの手を取った。
「——アニス。結婚してくれ。」
アニスは笑顔で固まった。うん?結婚?
「異動もあるし今後に心配なこともあると思うが、俺が全力でお前を守るから!俺もお前が一緒ならなんとかなると思う!美人で賢くって俺の副官で!俺の妻になってくれたら最高だから!一生大切にするから!!な?すぐ!すぐ結婚しよう!!な?な?」
手をぎゅっと握られ、グライドからの怒涛の求婚にアニスは目眩がした。勢い良すぎて結婚を申し込まれている気がしないんだけど。何でこんなに急かされるの?
好きの一言を言ってくれるだけでよかったのに。色々順番が‥‥。話が急展開過ぎる!そもそもいつから?!全然その気配なかったくせに!何だか腹も立ってきた!!
アニスは何とか笑顔でグライドに問いかけた。
「えっと。いつからそういう感じになったのかな?」
「いつ、というのは難しいな。最初に出会った時は俺がぶっ倒れたし。」
アニスは目を瞠る。魔獣から庇ってくれたこと憶えていたのか。
「その後邸の顔合わせでまた会えた時に、柄にもなく運命だと思った。でもお前は憶えてなくてそんな都合よくないかと思ったよ。話しててお前の猫かぶってる時と素の差が可愛くってな。手懐けたいと思った。もしそれが好きということならそうかもしれない。」
グライドが笑ってアニスを見上げた。あの時と変わらない笑顔にアニスはきゅんとした。
「ただ火がついたのはもっと後。バース様に森に置いてかれてなんとか邸に戻って。それで廊下でいつもと違う雰囲気のお前を見てぐっときた。肩肘張らないお前が欲しいと思った。でもお前は他のやつと笑って話していて、それが無性に腹が立った。アレクがお前の言うことを聞いたことですら許せなかった。あの時は疲れてておかしかったんだと思う。‥‥怖い思いさせて悪かったな。」
手首をするりと撫でられ謝られる。それはもう一年近く前の話。アニスが誘惑を諦めおしゃれを捨て素を出した日。
「そこからずっと?ずっと想ってくれていたの?全然わからなかった‥‥」
途中からアニスは涙声になる。グライドは苦笑いした。
「バース様に感情を殺せって言われてたから。″心に刃を持て、相手に弱みを悟られるな″って。だからあの人の下にいる間はこの気持ちを伝えるのも悟られるのも禁じられた。あの人ほんと鬼だよ。何よりもこれが一番キツかった。なのに人の気も知らないでお前はズカズカ俺の中に入ってきて仮面を剥がしちまう。ほんと、かなわねぇなと思った。」
あははと笑うグライドにアニスは堪えきれず抱きついた。
「グライド、私も、大好き。」
「うん、知ってた。」
グライドがそっとアニスを抱き締め囁いた。
「いつから?」
「ずっと前、と言いたいが、実はついさっき。執務室で異動受けてくれた時のアニスの顔を見て、俺は愛されてるな、と思った。気がついた上で答え合わせをするとそれらしい気配が以前からアニスにあったなと思った。なんで気がつかなかったんだろうな、俺は。」
「ほんと、鈍い騎士様。助けてもらったお礼が言いたくて奉公にあがったのよ?」
グライドは目を見張る。それは四年も前の話。体を離してアニスの顔を見た。
「憶えてくれていたのか?言ってくれればよかったのに。」
「話しても、そうだっけ?、で終わりそうだったから。そんなの寂しすぎるでしょ?グライドはよく憶えてたのね。怪我してたのに。」
「美人は忘れないさ。気張って無茶してカッコ悪いとこ見せたとあの時は落ち込んだもんだ。——アニス、さっきの答えをくれ。」
アニスの耳元にキスを落としながらグライドが囁く。
「ずるい。私が断れないのわかってるでしょ?」
「そうだな、お前はいつも俺のわがまま聞いてくれたもんな。だから今回も聞いてくれ。な?」
グライドが優しく促せばアニスがこくりと頷いた。それを見てグライドは顔を綻ばせてアニスを抱き締めた。グライドの腕が暖かい。とっても幸せでふわふわする。アニスは嬉しくてほぅとため息を漏らした。
と思っていたらゆっくりと草の上に押し倒される。アニスは目を見開いてグライドを見上げた。
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