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017: 妖精殺し①
しおりを挟むもうコレどうすんだよ‥‥
この状況にリオンは頭を抱えていた。
アリスが黒猫を伴い人形リオンに会いに市場に来る。だが当然リオンは現れない。仕方なくリオンが黒猫から人形に変化するも今度は黒猫がいなくなる。結果二人で黒猫を探し回ることになる。そして変化の魔法が解ける夜に黒猫リオンはアリスの元に帰還する。
この謎の循環から脱するべく発動したギード→黒猫リオン変身作戦は一発でアリスにバレた。真っ黒になった太っちょ長毛種猫の登場にアリスは微塵も騙されなかった。
「あれれ?こないだの灰色ブチ猫ちゃん?随分真っ黒ね。家でお風呂入れてあげようか?」
「にゃにゃにゃ!!」
ギード逃走。ギードにとって風呂は何が何でも避けなくてはならない苦行だ。人語はわからなかったが背筋の悪寒でそれとわかった。
だがこのままでは主人の命を受けたギードも引き下がれない。ギードは知恵を絞り市場にいたリオンっぽい黒猫を連れてきた。別にリオンの替え玉が自分である必要はない。だがリオンはその猫に不満げだ。
『これがボク?まあ確かに黒いが‥毛艶が悪い。手足がボクより短い。ちょっと太いな。顔も似てない。それに鳴き声も———』
『どんなクオリティをお望みですか?!私が化けるよりよっぽどマシですって!それに人族にはこの程度見分けはつきません!』
『まあ確かにそうだが‥‥』
リオンがブチブチ文句を言うも替え玉作戦再決行。人形リオンとアリスの前にタイミングよく代役黒猫が現れる。にゃぁぁと鳴く黒猫をずんむと掴んでリオンがドヤ顔でアリスに猫を差し出した。
「あ!お嬢!これ!探してた黒猫じゃない?!」
「にゃぁぁ」
「え?うーん?」
差し出された黒猫をしげしげと見たアリスは顔を左右に振った。
「違う。リオンはもっと毛がツヤツヤだし、耳の中の毛だけちょっと白いし。手足も長いし体もキレが良くてシュッとしてるの」
「‥‥‥‥は?え?」
「リオンは甘えた時の鳴き声もにゃぁぁじゃなくってなぉぉんっていう感じなんだよ。顔ももっとハンサムだし。この子じゃないわ」
『「えええ?!』」
物陰で様子を見ていたギードも愕然とする。たかが黒猫、人族に見分けなどつくはずもない。
マジか?!全部その通りなんだけどさ!お嬢ホントに人族か?!猫目利きが鋭すぎる!
そうしてこうして。そんな調子で四日が過ぎてしまった。リオン的にはアリスと一緒に過ごせて充実した日々だったが謎の循環の中で恩返しも成立していない。朝食を終えた黒猫リオンがギードとバルコニーで作戦会議中だが状況は膠着していた。
『今日も同じ展開だと五日目だって!猫が消えて人が現れるんだぞ?流石にお嬢もおかしいと思うだろ?怪しすぎてもう人形になれないって!』
『私的には既にもう十分おかしくて怪しいです』
『あ———ッ もう!何かいい手はないのか?!』
『いやぁ、もう出来ることはやり尽くしてますし‥。あのお嬢さん手強すぎる』
『だろうな、お嬢は特にカンがいい。気をつけろ』
バルコニーの下にはキングが伏せて目を閉じている。居眠りしている態だが実際は起きて猫たちの作戦会議に念話で参加していた。
『こと猫に関しては恐ろしい能力を発揮する。個体認識も可能だ。できれば人形の姿は晒すべきじゃなかったな』
『はぁ‥そのようですね』
『人形の姿でお別れ申し上げては?国に帰るとか言って』
『それはしたくない』
リオンがぶすッとつぶやいた。自分が黒猫である。すでに一つアリスに隠し事をしている。方便であってもアリスになるべく嘘をつきたくない。嘘であっても別れを言うなど耐えられない。
『そろそろ諦めて下さるといいのですが。あとはお嬢さんの学校が始まれば時間もなくなりますのでそこまで』
『あと十日はあるぞ。お前たちそれまでこの茶番を続ける気か?』
「リオーン!——————!」
「なぉぉぉん」
黒猫が愛らしい鳴き声と共にギードをベランダからゲシッと蹴り落とす。ギードは二回転してキングの隣に着地した。もう慣れたものだ。アリスがバルコニーでにこやかに黒猫を抱き上げた。
「さあ!——————!りおん——————!」
「にゃぁぁ?!」
え?りおん?ひょっとして今日も行くのか?まだ諦めてない?!お嬢ガッツあるな!
「———クッキー———!———、りおん————————」
「にゅ?」
クッキーというの言葉を耳聡く拾い黒猫の首がにゅっと伸びる。ふんふん鼻を鳴らしごくりと黒猫の喉が鳴った。
こッこの匂いは?!朝から何かしてると思ったが今日のおやつはまさかのお嬢お手製のクッキー?!絶ッ対食べたい!猫用?人用?どっち?どっちだ?どっちなら食べられるんだ?!どっちでもいい!今食べたい!!
カバンに顔を突っ込む黒猫をアリスが引っ張り出した。
「——!———!——————!」
「ごにゃぁぁん」
「——!———?———!」
言われたことは全くわからないがお預けを食らったとわかった。黒猫を抱き上げアリスは市場に向かう。一方黒猫リオンはクッキーお預けで悶々としていた。
さっきは何で食べられなかった?猫じゃクッキー食べられないってことか?!そういうことならさっさと人形になっちゃおう!
もう人形にはなれないとおっしゃっていたのでは?と言うギードのツッコミ幻聴をリオンは華麗に無視する。
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