【完結】にゃん!てステキなおんがえし!

ユリーカ

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038: 誘拐です?《アリス》①

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「いたたたた‥」

 アリスは暗がりで目を覚ました。両手両足を縛られて動けない。寝転がった状態から後ろで縛られた腕を動かそうとすれば縛るロープが手足を締め上げ悲鳴が出た。

「もう!こんなにきつく縛ることないじゃない!痕が残ったら承知しないんだからッ」

 闇に目が慣れたところでアリスは辺りを見回した。倉庫のような部屋。木箱が山のように積まれ砂埃が舞っている。微かに差す明かり取りの窓からここが半地下だとわかった。部屋の中や外に人の気配はない。今はアリス一人だ。

 攫われそうになったダリアを咄嗟に庇い自分がダリアだと名乗った。仕方なかったとはいえ無茶をしたなとアリスは反省する。だが第二王子レオナードの婚約者で公爵令嬢のダリアを攫われるわけにはいかなかった。自分もカラバ家だがダリアよりはマシだ。

「りおん君ごめん‥心配してるよね‥」

 襟元から覗き込めばリオンの瞳と同じ金色の石が暗がりで光り輝いている。アリスを守る石だと言われその日から肌見放さず身につけている。これのおかげか不思議とリオンの気配を感じられた。攫われたアリスのことをきっと心配しているだろう。

 せっかく両思いになれてこれからというところでこの展開。今日だってホントだったら今頃りおん君と公園デートにはずだったのに‥‥

 持ってないとアリスはため息が出た。誘拐犯の目的はわからないがダリアではないとバレたら大変なことになる。絶対シラを切り通さなくては。

 そこへ部屋の外、廊下の遠くから足音が聞こえた。足音は一人。近づいてきた足音はアリスの部屋の扉の前で止まり扉が軋んで開いた。床に寝ているアリスからでは脚しか見えない。男の足だ。それがゆっくりと近づいてきた。
 見張りが様子を見にきたのだろうか。アリスは咄嗟に顔を伏せて寝たふりをするが内心ガタガタと震えが止まらない。脚がアリスの側で止まりアリスにかがみ込んだ。そして馴染みのある楽しげな声が降ってきた。

「大丈夫ですかい?お嬢さん」
「?!リック?!」

 その声に驚いて見上げれば笑い皺を目元に浮かべた笑顔のリックが見下ろしていた。子供の頃からアリスに向けられたあの笑顔が見えた。

「どうしてここに?!」
「いやぁカンというか。ここら辺かなぁと思いましたが当たってよかったです。わしもまだまだ現役でいけますなぁ」

 何で切ったのか鋭い音と共にロープが切れてアリスの手足が自由になった。リックがアリスの体を抱き起こして体からホコリを優しく払い落とした。手足は長時間の拘束で痺れていたためか痛みがあるが、なんとか動けそうだ。

「立てそうですかい?」
「ええ、大丈夫よ」
「これは酷いアザだ。少し待ってくだせぇ」

 硬いロープできつく縛られて手足に赤黒いアザができていた。リックの手がアリスの足首を撫でた。撫でられた箇所がふわりと暖かくなり痛みが引いていく。よく見れば赤黒かったアザが薄くなった様な気がした。

「え?リック?」
「痛みがひくツボをついたんでさぁ、少し楽になりましたか?」
「すごく楽になったわ、ありがとう。どうやってここに?」

 攫われらのだからここまでに見張りくらいいただろう。体こそ大きくて屈強に見えるが歳のいったリックがどうやってここまで入ってこれたのか。そもそもあの公園にいなかったリックがなぜここに?

 その疑問にリックが笑顔で答える。

「わしには味方が大勢いるんですよ。そいつらがお嬢さんの危機を知らせてくれました。お嬢さんがいいものを身に着けてくれてましたんでそれを頼りにたどり着けやした」

 その時遠くでドスンと地響きがする。笑顔だったリックが顔を顰めやれやれとため息をついた。

「全く、若いもんは血の気が多い。すぐ突撃したがる。まずはお嬢さんの身の安全の確保だろうに。こうなるだろうとわしが出向いて良かった」
「若いもん?」
「ええ、あの青年が迎えにきてますよ」
「え?ひょっとしてりおん君?」

 りおん君が来てくれた!それだけで怖い気持ちがアリスの心からすっ飛んだ。

「えぇえぇ、あれは相当怒ってますな。お嬢さんを心配してます。すぐに会って安心させてやってくだせぇ」

 以前クッキーを奪ったひったくりを捕まえた時のリオンの様子は毛が逆立った獣だった。急がなくちゃいけない。

「それに友達を連れているようですが‥‥あれもいかんですな。どうにもケンカっ早い。あれではチンピラ同士の抗争ですな」
「お友達?チンピラ?」
「ですがいい目くらましです。今のうちに脱出といきましょう。わしについてきてくだせぇ。すぐに会いに行きましょう」
「え?二人で?大丈夫かしら」
「えぇ、大丈夫ですよ。お嬢さんはわしがお守りしますんで」

 ちょっと近所に散歩にでも出かけしましょう的なノリでリックは微笑んだ。アリスを連れて監禁部屋から外に出る。

 廊下に出たところで見張りらしき男と出くわした。リックを見て相当に驚いている。アリスからくぐもった悲鳴が上がるがリックは動じない。怒声と共に男がナイフを振りかぶったと同時に鋭い音で男は床に倒れ込む。アリスには何が起こったのかさっぱりわからなかった。なんとなくリックの右手が動いたように見えたのだが。

 アリスは恐る恐る倒れた男を覗き込んだ。血は出ていない。うめき声がするから死んではいないようだ。

「リ?リック?これって?」
「大丈夫です。手加減したので死んでません。寝ているだけですから。さぁ行きましょうかね」

 同様に鉢合わせした男たちを瞬殺で眠らせ二人で進んでいけば地響きと犬の吠える声と人の悲鳴が大きくなる。よく聞けば猫の鳴き声も聞こえ随分と賑やかだ。地響きはこちらに向かってきているようだ。

 あれ?ここは動物園?だとしたらあの破壊音は?

「え?一体何が?」
「お迎えが来たようですな。さぁて、わしはここまでです。実は買い出しの途中でして」
「え?」
「早く帰らんとメリアにどやされます。そうそう、あの青年にわしのことは内緒にしてもらえませんか?」
「え?なぜ‥」
「その方が面白いからですよ」

 リックがウインクして人差し指でアリスの額をとんとついた。途端にふわりと軽い眩暈がする。

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