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013: リオン←→りおん③
しおりを挟む従者ギードが屋敷に戻ってきたのは陽が落ちた後だった。人形のリオンと灰ブチ猫は木から降りて草むらの中で会話する。人形と猫では会話はできない。正確には念話での会話だ。
『はぁ‥そんな大変なことが‥』
リオンから話を聞いたギードが深いため息をついた。恩返しの魔法の発動。そして自分がついていない間に主人にツガイ(仮)ができてしまった。これは大変な失態ではなかろうか。しかもあのお嬢さんは妖精殺し、精神中毒兵器“神の手”持ちで厄介だ。すでにアリスの調査内容を知っているギードは猫の手で目元を覆った。
『心配するな、恩返しは探し物のボクがアリスの元に戻れば完了する‥はずだ!ツガイもボクがお嬢の名前を呼んでないからセーフ‥なはずだ!第二王子のボクがおいそれとツガイを選べないからな』
『そうなんですが‥、そんな簡単に片付くでしょうか?なんとも言えませんが。恩返しが発動されたのでしたら不要かもしれませんが、今日集めたお嬢さんの調査報告をお聞きになりますか?猫の姿に戻られるまで』
『ああ、そうだな。どうだった?』
ギードの特技”猫使い“で近隣の猫を強制召集し情報を集める。街中で猫も多く、半日仕事だったがなかなかの情報が集まった。
『まずはですが。あのお嬢さんには婚約者がいます』
『コンヤクシャ?なんだそれ?』
『ツガイになる約束をしている異性のことです』
『んんん?』
ツガイになる約束?よくわからない。
『ツガイになる約束ならツガイではないのか?』
『人族独特のルールでツガイではないですが婚約者は将来ツガイになる約束の者ということです』
リオンからざーッと血の気が引いた。もうアリスにはツガイ予定のオスがいる。では自分は?もう名前を呼ばれてツガイ(仮)状態なのに?!怒りとも恐怖ともつかないざわざわする感情が背筋を這い上がった。
だがさらに続くギードの言葉に愕然とする。
『ですがこの婚約者にどうも別の女がいるという情報です』
『別の女?ツガイのオスにお嬢じゃないツガイのメスがいる?まさか?!』
『この女の飼い猫からの情報なので間違いありません。この婚約自体がパパさんがまとめたためお嬢さんの意思ではないようです』
『お嬢の‥意思じゃない‥って?』
だがお嬢のツガイのオスに別のメスがいる。その話にリオンがガチギレする。ずいずいとギードに詰め寄った。
『はぁ?!何?お嬢が浮気されてるってことか?!けしからんだろが!!』
『そそそうですが!あれ?ダメですか?』
『ダメだろ!浮気だぞ?もしお嬢がそいつのこと好きだったらお嬢泣くぞ!』
『いやぁ別に好き合ってないので大丈夫じゃあないですか?』
『だとしても!なんだこのオスは?!不誠実すぎる!ゲス野郎が!ボクがぶん殴る!』
『えっと、殴るのでしたらこいつだけじゃあないですね。もう一人います』
『あ?なんだと?!』
力一杯念話で絶叫するリオンにギードが冷静にカウンターを放つ。
『猫クチコミ情報によるとですね、お嬢さんが通う学園にこの国の第二王子がいるそうで』
『学園?お嬢はそんなとこに通ってないぞ?』
『今は夏季休暇、夏休みというやつで通っていないだけです。で、その王子とお嬢さんがどうも仲が良いらしいんですよ』
第二王子。自分と同じステータスの王族登場にリオンが目を瞠る。冗談で王子との結婚を恩返しにしようとしたがまさか本当にアリスが王子と関係があるとは思わなかった。
『え?王子?人族の第二王子と仲がいい?お嬢が?』
『この第二王子の飼い猫からの情報なので間違いありません。どうやら恋愛関係じゃないかとのことです』
『えええ?!』
アリスにツガイ予定のオスがいるのに恋するオスもいる?リオンは大混乱だ。
『お嬢さんはとびきり可愛らしいそうで人族のオスにも大人気らしいのですが、王子と恋仲という噂で他のオスは遠巻きにしているようです』
『確かにお嬢はすんばらしく可愛いが。え?え?これはどういう?』
『ですがこの第二王子にも婚約者がいまして』
「はぁ?!」
『男爵令嬢如きが!とその王子の婚約者の公爵令嬢にお嬢さんがいじめられてるとかいないとか?しかも王子はそれを止めるでもなくにこにこと見てるとか』
「はぁぁ?!お嬢がイジメられてるのに笑ってみてる?!なんだそのベタ設定は?!で?!誰がお嬢をイジメてて誰が笑ってるって?!」
リオンの口から思わず肉声で声が出てしまった。ハテナと激怒が止まらないリオンに人語でもなんとなく理解したギードが地面に枝でかりかりと絵を描いて冷静に図解説明する。
『えっと?まずお嬢さんには婚約者がいて‥この婚約者には別の女‥で、ここに第二王子が‥さらに王子の婚約者がいて‥この婚約者がお嬢さんをイジメと』
『なんだこれ?入り乱れすぎだろ?人族では当たり前なのか?人族はおっかないな』
『えっと?殿下もここに鋭意参戦中なのですが』
ギードがその入り乱れた図にリオンを書き足した。その図に愕然とする。
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