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第60話 偽島組②
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「ア、アルテマさん!?」
「……? なんですこの巫女は?」
突然現れたハチマキ巫女姿の少女に、偽島は訝しげに眉を歪めた。
そして面倒くさそうに軽いため息を吐きつつしゃがみ込むと、
「お嬢ちゃん、ここはこれから工事用のトラックやクレーンがいっぱい入ってくるからね、遊ぶのならどこか他に行ってくれるかい?」
と、笑わない目と張り付いた笑顔でアルテマを追い返そうとする。
「……失礼な奴だな。私は嬢ちゃんではない」
「ん?」
しかし、そんな偽島を一歩も引かず睨み返すアルテマ。
なんだこの生意気なチビっ子巫女は? と偽島もアルテマを睨み返すが、
――――♫♪♬♫~~。
背広の胸ポケットから着信音が鳴り響くと「チッ!!」と舌打ちをして立ち上がり電話に出るため校庭の外へと出ていった。
「アルテマさん」
不安げな顔をしてヨウツベが駆け寄ってくる。
アルテマは『やれやれ面倒くさいことになってるぞ』とため息をつくと、
「話は大体聞いている。いま元一と六段がブチ切れて村長の家を襲撃しに向かった」
「え? あの二人が!? ……なぜ村長宅に?」
「……朝からゴゴゴゴ、ゴゴゴゴうるさいのでな。年寄連中が事情を調べたら、またあの村長が勝手に話を進めていたことが知れてな」
昨日と同じ巫女服とハチマキに加え、新しく短い竹刀(子供用)を装備したアルテマは不機嫌そうにそれを肩に回して言った。
「そ、そうなんですよ!! 僕もそれをいま聞いて驚いてるんです!! でもこの人達、既に決まった契約だと聞く耳を持たず……おまけに脅迫じみたことまで……」
「そうよ!! ヒドいのよ、私たちの家を乗っ取るみたいなこと言ってさ!!」
いつの間にか降りてきていたぬか娘も話に加わり、地団駄を踏んで怒り出した。
「ああ、それも全部聞いていた。……契約とか、こちらの世界の細かいルールは知らんが、こいつらは私らの敵という認識で間違いないか?」
異世界の話なのだと、昨日からあまり突っ込まずに距離を置いていたアルテマだったが、今朝の様子からどうも元一たちが騙し討ちにあっていると理解し、黙っていられなくなってきた。
「カントクゥ~~!! 鉄筋ってこっちでよかったですかい!?」
何百キロもありそうな鉄筋の束を吊り上げているクレーン車。
その運転手が大声で監督に指示を求めてくる。
「違う、そっちだ!! そう!! もっと入り口の……そうそのオンボロ校門の隣だ!! その辺に適当に積んどけばいい!!」
「あ~~~~ぃ!!」
言われて、運転手はぎこちない動きでレバーを操作する。
釣られた鉄筋の束が、アームの動きに引かれて大きく揺れた。
そして校門の側まで持っていかれると、
「っと、やべ」
――――ゴシャァンッ……!!
少し手元を誤ってしまい、校門にぶつけてしまう。
横殴りを食らった校門は鉄筋の重さと固さに耐えきれず、ガラガラと上半分が崩れてしまった。
「――――ちょっとっ、何やってるんですか!?」
その様子にヨウツベは顔色を変えて目を吊り上げる。
しかし運転手と監督は、
「おーーいっ!! 大事な資材だぞ、雑に扱うな!!」
「すんませーん。でも壊れちゃいませんって、大丈夫大丈夫(笑)」
と、まるで校門の事など気にしていない。
むしろ自分たちの資材の心配をしている。
「あんたら――――っ!??」
その横暴な態度に、さすがに堪えきれなくなったヨウツベが文句を言おうと監督に詰め寄るが、
「あ~~? ……あんたらまだ居たの? もう話はわかったでしょう、これ以上作業の邪魔をするってんなら……こっちにも出方ってもんがあるんだがな……?」
態度をガラリと変威圧的に睨みつけてきた。
そしてさり気なく腕を捲って、その下にある彫り物を見せてくる。
「く……」
虎をモチーフにしたのだろうその刺青《いれずみ》を見て、その男の素性を察したヨウツベは悔しそうに血の気を引かせる。
いまどきヤクザまがいの建設屋なんてまだ生き残っていたのかと揶揄してやりたくなったが、周りの作業員を見てみるとどうやら全員おかしな雰囲気を纏っていて、どうも彼らはそういう集まりらしかった。
「……ははは……いや、こりゃ失敬。シロウト様相手にこちらも荒いことをするつもりはないですがね……。しかしあまりイチャモンをつけられちゃ……私が黙ってても、気の短い連中が多いんでね、ウチもね」
――――ずん、ずん。
言ってヨウツベの肩を、重く静かに二、三回叩く。
そして『わかるよな?』とひと睨みすると、業務に戻って行く監督。
その威圧に怯えたヨウツベは何も言えずに固まっていた。
そこに、
――――黒炎竜刃《アモン》。
――――――――ドゴッ!!!!
アルテマの火炎系攻撃魔法が炸裂した。
「んのぁ!? うあっちゃっちゃちゃちゃちゃ~~~~っ!????」
なにが起こったのか?
一瞬にして火の塊に変わったクレーン車から、慌てて運転手が飛び出してくる。
「――――はっ!? ちょ、何してんだお前、大丈夫か!???」
突然燃え上がったクレーン車。
意味が解らず、唖然と立ち尽くした監督。
何かの事故か? 機械トラブルか!?
とりあえず燃えている運転手の火を消すため、手とタオルで叩きに走る。
そこへさらに、
――――黒炎竜刃《アモン》。
ドゴッ!!!!
今度は資材を積載した大型トラックが黒い炎に包まれた。
「ぎゃあぁっちちちちちちちちちちち!! なんだなんだぁ~~っ!???」
同じく火の塊と化したトラックから飛び出し、転がり回る運転手。
もう一発、
――――黒炎竜刃《アモン》。
ドゴッ!!!!
「ぐあちゃちゃちゃちゃちゃ~~~~なんだ、どうしたぁぁああぁぁっ!???」
組み立て前のプレハブ資材、その他、小型機械や作業員の弁当やらが置いてある区画もまとめて炎に包まれる。
「おぉおぉぉい、なんだなんだっ!? どうした!? なんで突然火が!??」
「知るかよっ!! とにかく消せっ!! 水だ水持って来い!! はやくっ!!」
「あっちちちちちちちちちちちっ!!!!」
「なんだよ、この火!? なんでコンクリが燃えてんだよ!??」
一気にパニックになる作業員たち。
「い……いや。これは……アルテマ……さん?」
嬉しいけども……ちょっとやり過ぎでは……?
下手をすれば死人が出てもおかしくないぞと冷や汗を流すヨウツベ。
しかし、
「ふん。魔力の炎だ。岩だろうが鉄だろうが何でも燃やし尽くしてくれるぞ、ふふふ、ふはは、ふっはははははははははーーーーーーーーーーっ!!!!」
「そうだ、やったれーーーーっ!! こんな奴ら全部燃やして薙ぎ払ってしまえ~~~~~~~~ぃっ!!!!」
「ぶふぶふふ~~。いい気味でござる、いい気味でござるぅぅぅぅ~~っ!!!!」
悪の女帝が如く高笑いしているアルテマと、その側で気持ちよさげに小躍りを踊るアニオタとぬか娘がそこにいた。
「……? なんですこの巫女は?」
突然現れたハチマキ巫女姿の少女に、偽島は訝しげに眉を歪めた。
そして面倒くさそうに軽いため息を吐きつつしゃがみ込むと、
「お嬢ちゃん、ここはこれから工事用のトラックやクレーンがいっぱい入ってくるからね、遊ぶのならどこか他に行ってくれるかい?」
と、笑わない目と張り付いた笑顔でアルテマを追い返そうとする。
「……失礼な奴だな。私は嬢ちゃんではない」
「ん?」
しかし、そんな偽島を一歩も引かず睨み返すアルテマ。
なんだこの生意気なチビっ子巫女は? と偽島もアルテマを睨み返すが、
――――♫♪♬♫~~。
背広の胸ポケットから着信音が鳴り響くと「チッ!!」と舌打ちをして立ち上がり電話に出るため校庭の外へと出ていった。
「アルテマさん」
不安げな顔をしてヨウツベが駆け寄ってくる。
アルテマは『やれやれ面倒くさいことになってるぞ』とため息をつくと、
「話は大体聞いている。いま元一と六段がブチ切れて村長の家を襲撃しに向かった」
「え? あの二人が!? ……なぜ村長宅に?」
「……朝からゴゴゴゴ、ゴゴゴゴうるさいのでな。年寄連中が事情を調べたら、またあの村長が勝手に話を進めていたことが知れてな」
昨日と同じ巫女服とハチマキに加え、新しく短い竹刀(子供用)を装備したアルテマは不機嫌そうにそれを肩に回して言った。
「そ、そうなんですよ!! 僕もそれをいま聞いて驚いてるんです!! でもこの人達、既に決まった契約だと聞く耳を持たず……おまけに脅迫じみたことまで……」
「そうよ!! ヒドいのよ、私たちの家を乗っ取るみたいなこと言ってさ!!」
いつの間にか降りてきていたぬか娘も話に加わり、地団駄を踏んで怒り出した。
「ああ、それも全部聞いていた。……契約とか、こちらの世界の細かいルールは知らんが、こいつらは私らの敵という認識で間違いないか?」
異世界の話なのだと、昨日からあまり突っ込まずに距離を置いていたアルテマだったが、今朝の様子からどうも元一たちが騙し討ちにあっていると理解し、黙っていられなくなってきた。
「カントクゥ~~!! 鉄筋ってこっちでよかったですかい!?」
何百キロもありそうな鉄筋の束を吊り上げているクレーン車。
その運転手が大声で監督に指示を求めてくる。
「違う、そっちだ!! そう!! もっと入り口の……そうそのオンボロ校門の隣だ!! その辺に適当に積んどけばいい!!」
「あ~~~~ぃ!!」
言われて、運転手はぎこちない動きでレバーを操作する。
釣られた鉄筋の束が、アームの動きに引かれて大きく揺れた。
そして校門の側まで持っていかれると、
「っと、やべ」
――――ゴシャァンッ……!!
少し手元を誤ってしまい、校門にぶつけてしまう。
横殴りを食らった校門は鉄筋の重さと固さに耐えきれず、ガラガラと上半分が崩れてしまった。
「――――ちょっとっ、何やってるんですか!?」
その様子にヨウツベは顔色を変えて目を吊り上げる。
しかし運転手と監督は、
「おーーいっ!! 大事な資材だぞ、雑に扱うな!!」
「すんませーん。でも壊れちゃいませんって、大丈夫大丈夫(笑)」
と、まるで校門の事など気にしていない。
むしろ自分たちの資材の心配をしている。
「あんたら――――っ!??」
その横暴な態度に、さすがに堪えきれなくなったヨウツベが文句を言おうと監督に詰め寄るが、
「あ~~? ……あんたらまだ居たの? もう話はわかったでしょう、これ以上作業の邪魔をするってんなら……こっちにも出方ってもんがあるんだがな……?」
態度をガラリと変威圧的に睨みつけてきた。
そしてさり気なく腕を捲って、その下にある彫り物を見せてくる。
「く……」
虎をモチーフにしたのだろうその刺青《いれずみ》を見て、その男の素性を察したヨウツベは悔しそうに血の気を引かせる。
いまどきヤクザまがいの建設屋なんてまだ生き残っていたのかと揶揄してやりたくなったが、周りの作業員を見てみるとどうやら全員おかしな雰囲気を纏っていて、どうも彼らはそういう集まりらしかった。
「……ははは……いや、こりゃ失敬。シロウト様相手にこちらも荒いことをするつもりはないですがね……。しかしあまりイチャモンをつけられちゃ……私が黙ってても、気の短い連中が多いんでね、ウチもね」
――――ずん、ずん。
言ってヨウツベの肩を、重く静かに二、三回叩く。
そして『わかるよな?』とひと睨みすると、業務に戻って行く監督。
その威圧に怯えたヨウツベは何も言えずに固まっていた。
そこに、
――――黒炎竜刃《アモン》。
――――――――ドゴッ!!!!
アルテマの火炎系攻撃魔法が炸裂した。
「んのぁ!? うあっちゃっちゃちゃちゃちゃ~~~~っ!????」
なにが起こったのか?
一瞬にして火の塊に変わったクレーン車から、慌てて運転手が飛び出してくる。
「――――はっ!? ちょ、何してんだお前、大丈夫か!???」
突然燃え上がったクレーン車。
意味が解らず、唖然と立ち尽くした監督。
何かの事故か? 機械トラブルか!?
とりあえず燃えている運転手の火を消すため、手とタオルで叩きに走る。
そこへさらに、
――――黒炎竜刃《アモン》。
ドゴッ!!!!
今度は資材を積載した大型トラックが黒い炎に包まれた。
「ぎゃあぁっちちちちちちちちちちち!! なんだなんだぁ~~っ!???」
同じく火の塊と化したトラックから飛び出し、転がり回る運転手。
もう一発、
――――黒炎竜刃《アモン》。
ドゴッ!!!!
「ぐあちゃちゃちゃちゃちゃ~~~~なんだ、どうしたぁぁああぁぁっ!???」
組み立て前のプレハブ資材、その他、小型機械や作業員の弁当やらが置いてある区画もまとめて炎に包まれる。
「おぉおぉぉい、なんだなんだっ!? どうした!? なんで突然火が!??」
「知るかよっ!! とにかく消せっ!! 水だ水持って来い!! はやくっ!!」
「あっちちちちちちちちちちちっ!!!!」
「なんだよ、この火!? なんでコンクリが燃えてんだよ!??」
一気にパニックになる作業員たち。
「い……いや。これは……アルテマ……さん?」
嬉しいけども……ちょっとやり過ぎでは……?
下手をすれば死人が出てもおかしくないぞと冷や汗を流すヨウツベ。
しかし、
「ふん。魔力の炎だ。岩だろうが鉄だろうが何でも燃やし尽くしてくれるぞ、ふふふ、ふはは、ふっはははははははははーーーーーーーーーーっ!!!!」
「そうだ、やったれーーーーっ!! こんな奴ら全部燃やして薙ぎ払ってしまえ~~~~~~~~ぃっ!!!!」
「ぶふぶふふ~~。いい気味でござる、いい気味でござるぅぅぅぅ~~っ!!!!」
悪の女帝が如く高笑いしているアルテマと、その側で気持ちよさげに小躍りを踊るアニオタとぬか娘がそこにいた。
応援ありがとうございます!
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