【完結】わたしの大事な従姉妹を泣かしたのですから、覚悟してくださいませ

彩華(あやはな)

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7.ミシェル視点

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 急いで帰ってきたこともあり夏頃予定だった復学手続きを前倒しでおこなった。

 週が開けてから学園に行きます。
 すこぉし、にメイクして、私の趣味よりのセイラの好む衣装にします。
 そして、私の決して趣味ではない『テンフェアール』という名前の香水を手首に一滴。
 ほんの一滴だというのにあまりの甘い匂いに眉を顰めてしまった。


 学園内を歩くと皆様、私を見るなり一斉に顔をそらせました。
 
 きちんと伝わっているみたい。
 それに、この香水のせいかも・・・。

 クスリと笑いたくなるのを堪えながら、素知らぬ顔で学園内を歩きます。
 
 だけ俯いてしずしずとお淑やかに行動する。

「セイラ!本当に君には幻滅したよ。またレイチェルを虐めたそうだな」

 いきなり一人の男性が私の前に立ちはだかりました。
 聞いていた特徴からするにカルロ(敬称なんてつける価値はないので口に出す以外略)なのだろう。

「なんのことですか?」

 弱々しく、それでいて控えめに聞いてみる。

「白々しい。レイチェルの教科書を破いたそうじゃないか」
「知りません。はしていませんっ」

 手を胸の前で握りしめ俯き首を振った。

「セイラ、認めないのか?はぁ・・・・・・」

 わざとらしい大きなため息。

「本当にじゃ・・・ないです」

 秘技、嘘泣きで涙をながしてみた。

「泣いてまで嘘をつこうとするとは・・・見損なったよ」

   カルロは顔をしかめ去っていった。

 ほほう・・・、この香水と私の涙が通用しないとは。
 そんなにレイチェル彼女に価値があるとでもいうのかしら?

 まぁ、いいわ。

 話の通じない男だというのがわかったのだから、婚約者の話も聞かない男は碌でもないわね。

 涙をハンカチでぬぐいながら思わずにはいられなかった。

 そんな時にまた、芝居がかった怒声が降ってきた。

「セイラ、僕のレイチェルに近づかないでくれ。彼女を悲しませないでくれ」
「・・・・・・」

 誰?

 あっ、あぁ、これが元婚約者の脳内お花畑ファルスか・・・。

 確かにセイラのおじ様から聞いていた話を思い出し確信した。

 だが、一体わたしは何の茶番を見せられているのだろう。

 おじ様もよくこんな男をセイラの婚約者にしたものだ。悲劇・・・いえ喜劇の主人公のようだわ。演劇の一幕を見ているのかしら?

 折角だしこの舞台に、乗っかってみてあげるわ。

「なんのことですか?」
「とぼけないでくれるかい?君がレイチェルのブローチを盗ったことは知っているんだ。あれは、レイチェルにとって大事な物なんだ。返してくれ」
 
 一つ一つに無駄な動きをしながら手を差し出してくる。
 キラキラの粉でも振りかけたように格好を決めても気持ち悪いだけなのだが。
 それを当然のようにしてくるのだから鳥肌が立った。

 口元が引き攣りそうになるのをハンカチで押さえた。

はそんな物を知りませんわ。そもそも、その『レイチェル様』とも会話をしたことはありません」
 
 事実よね。

 セイラでさえ会話をした事ないわ。

「嘘をつくのか?」
「嘘などついていませんわ。それはいつの話ですの」
「先週末の学園内だ」
「・・・・・・」

 セイラは休んでいたのですけど?それも1週間以上も。
 お分かりじゃない?気づいていない?
 その目は腐ってるのかしら?

はその日休んでおりましたわ」

 そもそもは帰って来てなかったし。

「はっ?」
「学園に来ておりませんのに、が盗るなんてできませんわ」
「嘘だ!お前が!!」
「話になりませんわね」
 
 非常にくだらないわ。つい素の私がでたじゃないの。

 しかも思っていたのと斜め上以上違う。

 『いつものセイラとどこか雰囲気違わないか』を想定してこのをつけていたのだが・・・。その違和感を隠すためにつけてきたのに。そんなことが無意味なぐらい腹立たしい。

 まだ、騒いでいるファルスを無視して歩き出した。

 はぁ・・・、こんなことなら香水をつけてこなくてもよかったかもしれない。
 早く香水を落としたくなった。
 
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