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39.ミシェル視点
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「あと、取り巻気にしていた男子学友の人生を失わせた」
「・・・」
「そこにいる男もその一人ね」
わたしはまだ俯いたまま銅像のように動かなくなったファルスを見た。
「薬の匂いのせいで適正な判断ができなくなっているわ。
他にいた取り巻きたちはやっと薬の効果も消えてまともになってはきたけど、皆、自国への強制送還にともない、地位の剥奪になったわ。ここにいるカルロもね。薬の効果はなくなったとはいえ、後遺症はあるもの、今後まともな仕事に付くことはできないでしょうし・・・。なにより、しでかした内容の方が処罰の対象になるものね」
「なんで・・・」
「あなたは自分の家族だけではなく他人の人生をも狂わした。あなたは信用さえなくしてるの」
「そんな・・・。あたし・・・認めない。認めない」
レイチェルは首を何度も何度も振り、ベツブツと呟いている。
「そうそう、薬が届かなかっただろう」
セルジオ兄様が皇太子ではあるまじき悪人顔で笑った。
空な目をしたレイチェルがわずかに頷く。
「国境でとらえた。商人としての交渉はなかなかだっだが、顔芸はお粗末だったな」
「そんなぁ・・・あれがないと・・・。あたしじゃなくなる・・・」
レイチェルの目から涙が溢れてきた。
ここに至っても、自分のことばかりしか考えていない。
「あんな薬で自分の本質が変われるはずありませんわ」
セイラが小さいながらもはっきりした言葉をだした。
「なによ!あたしがどんなふうに生きてきたから知らないくせに。あれがないとあたしじゃないのよ・・・」
子供のように表情も感情も変わる。
すべて薬の影響なのかもしれない。
どれだけ言っても、私たちの言葉は届かないのだろう。今、聞こえている言葉だけに反応して、意味を深く考えていないのがわかった。
「どんなことにせよ、あなたには罪を償って貰うわ」
「ひどい、ひどい。あたしのせいばかりにするなんて。誰か助けてよ。ねぇ!」
レイチェルはもがく。醜いほどに泣き叫んでいた。
「言ったはずよ。この国ではあの薬は規制されていると。一定の理由もなく所持し使用する場合は刑に処せられるの。覚悟しなさい」
「やだ、やだ、助けてよ。あたしを助けて。お願いだから」
涙で化粧がとれるのも構わず泣き、暴れた。けれど、誰も助けようとはしない。冷静な眼で見ているだけだった。
私の隣でいたロディク殿下がファルスのそばに行く。
私たちにだけ聞こえるような声で最後に彼に声をかける。
「君には療養所行きが待っている。サーシャス国に君の帰る場所はない。セイラ嬢と婚約破棄をした時点で君の両親は後継者からはずされていた。だが今回のことで、身分の除籍、なお死んだ者として、王宮に報告されている」
ファルスは悲壮にくれた眼差しだった。
「君たちは敵にしてはならない者を怒らせたんだよ」
ーまぁひどい
「覚悟もなく、私に喧嘩をふっかけてきたのが悪いのよ」
悪女のように私は笑った。
ファルスとレイチェルは衛兵に連れて行かれた。
まだザワザワとする会場で、私は腹の底から声をだした。
「皆様。私の我儘をきいていただきありがとうございました。
こんな私ですが一人だけ尊敬する大事な方がいます」
ざわめいていた会場に静寂が訪れる。
私はセルジオ兄様とセイラに身体を向けた。
「セイラ。私はあなたの優しさ、それでいて芯のある強さを尊敬しています。私のかけがえのない方です。
皇太子殿下、いえセルジオ兄様、セイラを幸せにしてくださいませ」
「ああ、約束する」
セルジオ兄様はセイラの手をとり、顔を見合いながら笑った。
「皇太子殿下、セイラ様。おめでとうございます」
私は二人に頭を下げた。
ざっ・・・。
その場にいた誰もが一斉に首をたれたのだった。
「・・・」
「そこにいる男もその一人ね」
わたしはまだ俯いたまま銅像のように動かなくなったファルスを見た。
「薬の匂いのせいで適正な判断ができなくなっているわ。
他にいた取り巻きたちはやっと薬の効果も消えてまともになってはきたけど、皆、自国への強制送還にともない、地位の剥奪になったわ。ここにいるカルロもね。薬の効果はなくなったとはいえ、後遺症はあるもの、今後まともな仕事に付くことはできないでしょうし・・・。なにより、しでかした内容の方が処罰の対象になるものね」
「なんで・・・」
「あなたは自分の家族だけではなく他人の人生をも狂わした。あなたは信用さえなくしてるの」
「そんな・・・。あたし・・・認めない。認めない」
レイチェルは首を何度も何度も振り、ベツブツと呟いている。
「そうそう、薬が届かなかっただろう」
セルジオ兄様が皇太子ではあるまじき悪人顔で笑った。
空な目をしたレイチェルがわずかに頷く。
「国境でとらえた。商人としての交渉はなかなかだっだが、顔芸はお粗末だったな」
「そんなぁ・・・あれがないと・・・。あたしじゃなくなる・・・」
レイチェルの目から涙が溢れてきた。
ここに至っても、自分のことばかりしか考えていない。
「あんな薬で自分の本質が変われるはずありませんわ」
セイラが小さいながらもはっきりした言葉をだした。
「なによ!あたしがどんなふうに生きてきたから知らないくせに。あれがないとあたしじゃないのよ・・・」
子供のように表情も感情も変わる。
すべて薬の影響なのかもしれない。
どれだけ言っても、私たちの言葉は届かないのだろう。今、聞こえている言葉だけに反応して、意味を深く考えていないのがわかった。
「どんなことにせよ、あなたには罪を償って貰うわ」
「ひどい、ひどい。あたしのせいばかりにするなんて。誰か助けてよ。ねぇ!」
レイチェルはもがく。醜いほどに泣き叫んでいた。
「言ったはずよ。この国ではあの薬は規制されていると。一定の理由もなく所持し使用する場合は刑に処せられるの。覚悟しなさい」
「やだ、やだ、助けてよ。あたしを助けて。お願いだから」
涙で化粧がとれるのも構わず泣き、暴れた。けれど、誰も助けようとはしない。冷静な眼で見ているだけだった。
私の隣でいたロディク殿下がファルスのそばに行く。
私たちにだけ聞こえるような声で最後に彼に声をかける。
「君には療養所行きが待っている。サーシャス国に君の帰る場所はない。セイラ嬢と婚約破棄をした時点で君の両親は後継者からはずされていた。だが今回のことで、身分の除籍、なお死んだ者として、王宮に報告されている」
ファルスは悲壮にくれた眼差しだった。
「君たちは敵にしてはならない者を怒らせたんだよ」
ーまぁひどい
「覚悟もなく、私に喧嘩をふっかけてきたのが悪いのよ」
悪女のように私は笑った。
ファルスとレイチェルは衛兵に連れて行かれた。
まだザワザワとする会場で、私は腹の底から声をだした。
「皆様。私の我儘をきいていただきありがとうございました。
こんな私ですが一人だけ尊敬する大事な方がいます」
ざわめいていた会場に静寂が訪れる。
私はセルジオ兄様とセイラに身体を向けた。
「セイラ。私はあなたの優しさ、それでいて芯のある強さを尊敬しています。私のかけがえのない方です。
皇太子殿下、いえセルジオ兄様、セイラを幸せにしてくださいませ」
「ああ、約束する」
セルジオ兄様はセイラの手をとり、顔を見合いながら笑った。
「皇太子殿下、セイラ様。おめでとうございます」
私は二人に頭を下げた。
ざっ・・・。
その場にいた誰もが一斉に首をたれたのだった。
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