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「葬儀後、あなたにはここから出て行ってもらいたい」
パドリック様の息子であるセジャント様が言ってきた。
葬式もまだだというのに何であろうか?
彼は私より少し上だ。
威厳のある姿をみてアルドもいつかこんな感じになったのではないかと不意に思ってしまった。
今はこんなことを考えてはいけない。気持ちを切り替えて、彼を見た。
彼は眉を寄せ、苦々しい表情をしている。
「勿論、金はきちんと用意する」
「・・・何か、私にしてほしいことがありますの?」
彼はますます顔を顰め苦々しい声を出した。
「父が死んだ理由を知っているだろう!」
私は頷く。
真実を聞いて呆れてしまった。どれほど色ボケしていたのかと。
彼はあえて口にした。
「こともあろうにまだ14歳の少女に手を出しやがった。色ボケが!醜聞でしかない!!」
ダンっと拳を机に振り下ろす。
確かにこんなことが巷に広まれば商売どころでなくなるだろう。
「つまり、疫病神のせいで侯爵様が亡くなったということにしたいのですね?」
「・・・ものわかりが早くて助かる。今後の暮らしを保証でくるくらいは金をだす。あなたは、一応正式な妻ではいるからな」
正式な妻・・・。
二度も夫に先立たれるとは思わなかった。
それも数年で・・・。
「それで、構いませんわ。ですが一つだけお願いしたいことがあります」
「なんだ?」
「名前・・・ダージアの名前はこのままでも構いませんか?」
「なぜ?」
「その噂が回れば私はますます疫病神として知られるでしょう。私は静かに暮らしたいのです。海向こうにでも行こうと思っています」
「そうか・・・。わかった。それくらいならゆるそう。だが、関係は断つ。それだけは絶対だ」
「はい、構いません」
本来なら家名なんてどうでも良かった。
でも、もうこの国にいたくなかった。私の知らない国へ行き1人で生きていきたかった。
女1人が異国に行くには障害がある。ならばこのダージアという家名があれば、生きやすいかもしれない。
ダージア侯爵家は貿易商なのだから。
パドリック様の葬儀は身内だけで済ました。私は疫病神だから参列することはしない。喪服姿で窓辺にたち、私なりに見送ることしかしなかった。
1週間後、私は内々に屋敷をでる。
この頃には疫病神のせいでパドリック様は死んだという噂が流れていた。呪われたのだと信じる人もいるようだった。
だが、疫病神を追い出したことで、これからは繁栄するだろう。
私は大きな屋敷を1軒は買えるほどのお金を手にした私は実家に帰る。
父も兄も嫌な顔はしなかった。
きっと、疫病神が身代わりになることでの取引がここでも行われたのだろう。
「いつまでいる?」
私の部屋にノックもなく入ってきた兄は素っ気なく言った。
「向こうに行く手筈が整いましたら、すぐにでも出発します」
「そうか・・・・・・。すまなかった」
最後の言葉は小さかった。
「何がですか?」
私は兄を見た。今まで見たこともない後悔の念を浮かべた表情。
「いや・・・。大丈夫か?」
「大丈夫ですけど?」
何が言いたいのか私にはわからなかった。
「いつから、そんな顔をしているんだ?」
「?」
何の話なのか?
「いつから笑っていない?いつから泣いていない?」
どうしたいうのだろうか?
こんなことを言う人ではなかった気がする。私がいない間に何かあったのだろうか?
「おまえの不幸を願ってたわけじゃないんだ。いや、違う。リコには幸せになってほしかった。アルドのことだって、ダージア家のことも。確かに打算はあったが、それでも幸せを願っていたんだ。惨めな思いをさせたくなくなかったんだ。お前を疫病神と呼ばせるためじゃなかった・・・」
今更そんなことを言われてもどうしようもない。
どう言われても何も思わない。
「お兄様・・・。大丈夫です。私は今まで生きてきてすべてが不幸だとは思ってはいません。幸せな時間もありました。ただ・・・悲しい思い出があるだけです。でも、大丈夫。私はちゃんと生きますから」
ちゃんと笑えているだろうか?
本当に私は大丈夫。
私はこの2年で考えていた。
ダージア家の貿易を見ていて思い描く。
海を渡ってきた美しい品物を目にして私は少しだけ変わっていくのがわかった。
アルドとの最後の夜に語ったことをしに行きたいと。
今は1人ぼっちになってしまったけど、たくさんのことを見てみたいと。誰も私のことを知らない場所でなら、自由にも生きていけるかもしれない。
新しい発見があるかもしれない。
そして、帰ってきたらアルドに報告しよう。
私は幸せに生きたよって。
そう言える人生を送りたい。
今までが今までなのだかりこれ以上の不幸にはならないよね、幸せになっていいよね?
私は笑った。頬が冷たかった。
お兄様は私を抱きしめてくれる。
その胸の中は暖かかくて驚いてしまったー。
パドリック様の息子であるセジャント様が言ってきた。
葬式もまだだというのに何であろうか?
彼は私より少し上だ。
威厳のある姿をみてアルドもいつかこんな感じになったのではないかと不意に思ってしまった。
今はこんなことを考えてはいけない。気持ちを切り替えて、彼を見た。
彼は眉を寄せ、苦々しい表情をしている。
「勿論、金はきちんと用意する」
「・・・何か、私にしてほしいことがありますの?」
彼はますます顔を顰め苦々しい声を出した。
「父が死んだ理由を知っているだろう!」
私は頷く。
真実を聞いて呆れてしまった。どれほど色ボケしていたのかと。
彼はあえて口にした。
「こともあろうにまだ14歳の少女に手を出しやがった。色ボケが!醜聞でしかない!!」
ダンっと拳を机に振り下ろす。
確かにこんなことが巷に広まれば商売どころでなくなるだろう。
「つまり、疫病神のせいで侯爵様が亡くなったということにしたいのですね?」
「・・・ものわかりが早くて助かる。今後の暮らしを保証でくるくらいは金をだす。あなたは、一応正式な妻ではいるからな」
正式な妻・・・。
二度も夫に先立たれるとは思わなかった。
それも数年で・・・。
「それで、構いませんわ。ですが一つだけお願いしたいことがあります」
「なんだ?」
「名前・・・ダージアの名前はこのままでも構いませんか?」
「なぜ?」
「その噂が回れば私はますます疫病神として知られるでしょう。私は静かに暮らしたいのです。海向こうにでも行こうと思っています」
「そうか・・・。わかった。それくらいならゆるそう。だが、関係は断つ。それだけは絶対だ」
「はい、構いません」
本来なら家名なんてどうでも良かった。
でも、もうこの国にいたくなかった。私の知らない国へ行き1人で生きていきたかった。
女1人が異国に行くには障害がある。ならばこのダージアという家名があれば、生きやすいかもしれない。
ダージア侯爵家は貿易商なのだから。
パドリック様の葬儀は身内だけで済ました。私は疫病神だから参列することはしない。喪服姿で窓辺にたち、私なりに見送ることしかしなかった。
1週間後、私は内々に屋敷をでる。
この頃には疫病神のせいでパドリック様は死んだという噂が流れていた。呪われたのだと信じる人もいるようだった。
だが、疫病神を追い出したことで、これからは繁栄するだろう。
私は大きな屋敷を1軒は買えるほどのお金を手にした私は実家に帰る。
父も兄も嫌な顔はしなかった。
きっと、疫病神が身代わりになることでの取引がここでも行われたのだろう。
「いつまでいる?」
私の部屋にノックもなく入ってきた兄は素っ気なく言った。
「向こうに行く手筈が整いましたら、すぐにでも出発します」
「そうか・・・・・・。すまなかった」
最後の言葉は小さかった。
「何がですか?」
私は兄を見た。今まで見たこともない後悔の念を浮かべた表情。
「いや・・・。大丈夫か?」
「大丈夫ですけど?」
何が言いたいのか私にはわからなかった。
「いつから、そんな顔をしているんだ?」
「?」
何の話なのか?
「いつから笑っていない?いつから泣いていない?」
どうしたいうのだろうか?
こんなことを言う人ではなかった気がする。私がいない間に何かあったのだろうか?
「おまえの不幸を願ってたわけじゃないんだ。いや、違う。リコには幸せになってほしかった。アルドのことだって、ダージア家のことも。確かに打算はあったが、それでも幸せを願っていたんだ。惨めな思いをさせたくなくなかったんだ。お前を疫病神と呼ばせるためじゃなかった・・・」
今更そんなことを言われてもどうしようもない。
どう言われても何も思わない。
「お兄様・・・。大丈夫です。私は今まで生きてきてすべてが不幸だとは思ってはいません。幸せな時間もありました。ただ・・・悲しい思い出があるだけです。でも、大丈夫。私はちゃんと生きますから」
ちゃんと笑えているだろうか?
本当に私は大丈夫。
私はこの2年で考えていた。
ダージア家の貿易を見ていて思い描く。
海を渡ってきた美しい品物を目にして私は少しだけ変わっていくのがわかった。
アルドとの最後の夜に語ったことをしに行きたいと。
今は1人ぼっちになってしまったけど、たくさんのことを見てみたいと。誰も私のことを知らない場所でなら、自由にも生きていけるかもしれない。
新しい発見があるかもしれない。
そして、帰ってきたらアルドに報告しよう。
私は幸せに生きたよって。
そう言える人生を送りたい。
今までが今までなのだかりこれ以上の不幸にはならないよね、幸せになっていいよね?
私は笑った。頬が冷たかった。
お兄様は私を抱きしめてくれる。
その胸の中は暖かかくて驚いてしまったー。
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