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9 フラエの内情
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雪の月も終わりに差し掛かり、だんだん春が近づいてきた。フラエは休日恒例のダンジョン攻略から帰宅し、荷解きをして戦利品を棚にしまう。
あとは夕食を食べて読書でもするか、とのんびりしていると、自室の扉をノックする音がした。扉を開ければ、事務員が大きな鞄を持って立っていた。
「手紙が届いてますよ」
差し出された上品なアイボリーの便箋に、フラエは目を向ける。差出人はいつも手紙をくれる従姉妹で、フラエの目が輝いた。ありがとうございます、と礼をするより早く、「これもありました」と事務員がもう一通の封筒を取り出す。白い封筒。フラエはその四本の枝の紋様が捺された封蝋を見て、盛大に顔を顰めた。四本の枝はそれぞれ四大元素を示しており、差出人が王家の者であることを示していた。そしてフラエは、王族に一人知人がいた。
事務員は封筒を渡すとさっさと隣の部屋をノックしており、フラエは白い封筒を突き返すことを諦めた。扉を閉めて部屋に戻り、机の上のペーパーナイフを取る。
「あのクソ野郎」
良家の子息(勘当されてはいるのだが)らしからぬ言葉を使いながら、恐らくグノシスからであろう手紙は一旦無視した。アイボリーの封筒の封を切り、便箋を取り出す。差出人はグレース伯爵夫人。グレース伯爵家へ嫁いだ母方の従姉妹の、ルルだ。
フラエが実姉より慕う五つ年上の彼女は、筆まめな人だった。手紙ではいつも、嫁ぎ先の悲喜こもごもを鮮やかな文体で描いてくれる。
研究者の道に進みたいと告白したとき、ルルは無理だとも応援するとも言わず、強く抱きしめてくれた。だからフラエは、彼女を深く敬愛している。今の研究課題も、彼女の役に立ちたくて、数多くの興味の対象から選んだのだ。
「返事、書こう」
自前のシンプルな便箋を取り出す。伝えたいことはたくさんあるのに、どう書き出せばいいのか分からない。悩むフラエの視界の隅に、白い封筒が映り込んだ。一度目に入るともうダメで、呪いのようにそちらが気になる。
観念して封を切り、中身を取り出した。差出人はグノシス。中には四つ折りにされた紙が、一枚だけ入っていた。
文面は非常にシンプルだ。先日の研究発表会や、五年前の出来事における彼の落ち度について、端的な謝罪の文が書かれていた。手紙は「愛している」という言葉で締められている。整った綺麗な文字を親指でなぞった。どうしようもなく心がざわめいて、ため息をついた。
返事を送ろうとは、思えなかった。一度彼から出た言葉は、彼が五年前にフラエをふしだらと罵ったことも、研究発表会でいきなり「子どもを作ろう」と迫ってきたことも、謝られたってなかったことにはならない。
死んでくれ。グノシスに惚れていた自分も死ね。
不敬罪どころではないことを考えながら、フラエはベッドに飛び込んだ。さらさらの素肌と服の合間に寂しさが忍び込んで、ふるりと背筋が震える。
物心ついたときから、フラエはずっと、どこか寂しかった。母親は幼い頃に亡くなった。彼女が自分をかわいがっていてくれた記憶がぼんやりとあって、それが余計に悲しさと寂しさを強くした。
年の離れた姉はフラエを猫かわいがりして、気味が悪かった。年の近い兄は、姉にかわいがられる自分を軟弱者だと馬鹿にした。実際フラエはリンカー家の親戚の中で、最も魔力量が少ない。全属性の魔力が使えるという希少な特性も、武人としては役立たないため評価されなかった。
父親は、フラエの魔力量が少ないと分かるや否や、家から放り出して中等学校へ入学させた。その上で呼び戻し、リンカー家が抱える騎士団へ入団させた。
全部、馬鹿馬鹿しかった。しきたりにばかりこだわる父親、庇護欲を丸出しにする過保護な姉、嘲笑する兄。何もかもが気に入らなくて、壊したくて、噛みついた。
そんな頃にグノシスと出会えて、フラエはたしかに救われたのだ。
フラエが彼を鬱陶しがって突き放してしまっても、絶対側にいてくれた。迷惑だ、離れてほしいと、口や態度で示していたけど。それがグノシスには一切通じなくて、本当は嬉しかった。彼の隣にいる時だけは、寂しくなかった。
「……ん」
すん、と鼻を啜る。ますます寂しくなってきた。胸の中が切なくなって、胎児のように身体を丸めて小さくなる。
こういう時は、自慰行為で紛らわせるのが一番だ。性的な快感が幸福感とよく似ていることに気づいて以来、フラエは自慰が好きだった。
枕を抱きしめながら胸元をはだけさせ、胸の尖りに指を伸ばす。目を瞑って意識を集中させれば、そこから生まれる気持ちよさに吐息が漏れた。きゅう、と摘んで、つねって、爪で優しく引っかいて。指の腹で擦ると、それだけで腰が揺れた。口寂しくなって右手の指を唇で挟み、舌でねぶりながら胸を愛撫する。
興奮でつんと立った尖りを指で乱暴にはじき、追い討ちをかけるように押しつぶす。すっかり一人遊びで敏感になった彼のそこはぷっくりと膨らんで、少し濃いあかいろをしていた。指をしゃぶりながら、弄っていないもう片方の胸に手を伸ばして乳輪をなぞる。敏感なところに触れるだけで、切ない声が漏れた。
男の象徴がわずかに兆し、きゅうと腹の中が切なくなる。フラエの膣はとろとろと蜜をこぼしはじめ、股の間にぬめる感触がした。下履きの中が熱く、じっとりと蒸れた。
しゃぶっていた手を服の下へ滑り込ませ、そっと下腹部を撫でる。男の象徴で人と交わることも、ここに誰かを迎えいれることも、きっと縁のないことだ。
一瞬きんいろの頭が浮かんで、腰がひくんと跳ねた。思考を紛らわせるように股についたものを手で包み、胸と一緒に愛撫する。手を筒のようにして何度か扱けば、自然と息があがってきた。しかし手の中へ突き上げるように腰を動かせば動かすほど、気持ちよさより腹の中の切なさが勝つ。
「あ、う、……」
恐る恐る、膣口に指を伸ばす。下履きにつくほど愛液があふれていて、物欲しげに入り口がフラエの指に吸い付いてきた。自分で自分の身体を拓くのは、どうしてか怖い。それでも好奇心が恐れに勝ち、指をゆっくり挿入してみる。濡れた内壁がフラエの細い中指にしゃぶりつき、くにくにと腹側を押し上げるように指を曲げれば、じんわりとした気持ちよさがあった。
「ん、……」
必死に快楽を追って、もっと深くへ指を伸ばす。胸をいじる手つきも乱暴になり、かりかりと爪で乳頭を引っかいたり、ぴんとはじいたり、押しつぶしたりしてもてあそぶ。は、は、と呼吸が荒くなり、きゅうとつま先が丸まった。
腹の中がどんどん切なくなって、泣きそうだ。ゆるんでぬかるんだ穴に人差し指も増やして、ばらばらに動かす。人に見せられないところから激しい水音が立ち、わずかな羞恥を覚えて、枕に顔を押し付けた。
「ふぁ、…あ……」
もっと奥に欲しい。フラエの小さな手では届かないもっと奥に、もっともっと太いものが欲しい。足りなくてもどかしくて、目の前の枕に噛みついた。くぐもった声を漏らしながら、ぐちゅぐちゅと恥ずかしい音を立ててそこをまさぐる。
フラエの小さな男の象徴は涙をこぼしながら震え、しかし彼はそこに触れず、胎内から得られる快楽へ夢中になっていた。奥に欲しくてたまらない。まるい輪郭の臀部をゆすりながら、一心に指を動かした。
もっとほしい、ナカにいれたい、誰かにはいってきてほしい。抱きしめてほしい。甘やかして。キスして。好きって言って。
普段心の奥底に押し込んでいる寂しさと悲しさと人恋しさが、絶頂に近づくにつれてあふれ出す。きゅう、と子犬のように鼻を鳴らして、フラエは蹲るように身体を丸めた。必死に誰かを求めるフラエの瞼の裏で、きんいろが光る。手書きの「愛している」という文字列が脳裏によぎった瞬間、ナカがきつく締まった。腰がクンと跳ねて、全身に甘い快楽が、まるで大波のように押し寄せる。
「ッ、ふう…あッ、ぅ……」
達したナカが指に吸い付いて、うねっているのを感じた。でも、自分のうつろを埋める質量が足りなくて、切ない。枕に口元を埋めて、声を抑えた。ひく、ひく、と腰が揺れ、下腹部にベトベトとした感触を覚えた。
そこを撫でれば、生暖かい白濁したものが肌を汚していていた。さいあくだ、と気持ちよさで霞む頭でぼんやり思う。
しばらく経って、乱れた呼吸を整えて起き上がる。少し潤んだ瞳から、一筋だけ涙がこぼれた。それを手で乱暴に拭きとり、ベッドから降りて立ち上がった。そしてもう一度湯浴みをして、ベッドにもぐりこんだ。目元を枕に押し付けても、嗚咽は止まらなかった。
あとは夕食を食べて読書でもするか、とのんびりしていると、自室の扉をノックする音がした。扉を開ければ、事務員が大きな鞄を持って立っていた。
「手紙が届いてますよ」
差し出された上品なアイボリーの便箋に、フラエは目を向ける。差出人はいつも手紙をくれる従姉妹で、フラエの目が輝いた。ありがとうございます、と礼をするより早く、「これもありました」と事務員がもう一通の封筒を取り出す。白い封筒。フラエはその四本の枝の紋様が捺された封蝋を見て、盛大に顔を顰めた。四本の枝はそれぞれ四大元素を示しており、差出人が王家の者であることを示していた。そしてフラエは、王族に一人知人がいた。
事務員は封筒を渡すとさっさと隣の部屋をノックしており、フラエは白い封筒を突き返すことを諦めた。扉を閉めて部屋に戻り、机の上のペーパーナイフを取る。
「あのクソ野郎」
良家の子息(勘当されてはいるのだが)らしからぬ言葉を使いながら、恐らくグノシスからであろう手紙は一旦無視した。アイボリーの封筒の封を切り、便箋を取り出す。差出人はグレース伯爵夫人。グレース伯爵家へ嫁いだ母方の従姉妹の、ルルだ。
フラエが実姉より慕う五つ年上の彼女は、筆まめな人だった。手紙ではいつも、嫁ぎ先の悲喜こもごもを鮮やかな文体で描いてくれる。
研究者の道に進みたいと告白したとき、ルルは無理だとも応援するとも言わず、強く抱きしめてくれた。だからフラエは、彼女を深く敬愛している。今の研究課題も、彼女の役に立ちたくて、数多くの興味の対象から選んだのだ。
「返事、書こう」
自前のシンプルな便箋を取り出す。伝えたいことはたくさんあるのに、どう書き出せばいいのか分からない。悩むフラエの視界の隅に、白い封筒が映り込んだ。一度目に入るともうダメで、呪いのようにそちらが気になる。
観念して封を切り、中身を取り出した。差出人はグノシス。中には四つ折りにされた紙が、一枚だけ入っていた。
文面は非常にシンプルだ。先日の研究発表会や、五年前の出来事における彼の落ち度について、端的な謝罪の文が書かれていた。手紙は「愛している」という言葉で締められている。整った綺麗な文字を親指でなぞった。どうしようもなく心がざわめいて、ため息をついた。
返事を送ろうとは、思えなかった。一度彼から出た言葉は、彼が五年前にフラエをふしだらと罵ったことも、研究発表会でいきなり「子どもを作ろう」と迫ってきたことも、謝られたってなかったことにはならない。
死んでくれ。グノシスに惚れていた自分も死ね。
不敬罪どころではないことを考えながら、フラエはベッドに飛び込んだ。さらさらの素肌と服の合間に寂しさが忍び込んで、ふるりと背筋が震える。
物心ついたときから、フラエはずっと、どこか寂しかった。母親は幼い頃に亡くなった。彼女が自分をかわいがっていてくれた記憶がぼんやりとあって、それが余計に悲しさと寂しさを強くした。
年の離れた姉はフラエを猫かわいがりして、気味が悪かった。年の近い兄は、姉にかわいがられる自分を軟弱者だと馬鹿にした。実際フラエはリンカー家の親戚の中で、最も魔力量が少ない。全属性の魔力が使えるという希少な特性も、武人としては役立たないため評価されなかった。
父親は、フラエの魔力量が少ないと分かるや否や、家から放り出して中等学校へ入学させた。その上で呼び戻し、リンカー家が抱える騎士団へ入団させた。
全部、馬鹿馬鹿しかった。しきたりにばかりこだわる父親、庇護欲を丸出しにする過保護な姉、嘲笑する兄。何もかもが気に入らなくて、壊したくて、噛みついた。
そんな頃にグノシスと出会えて、フラエはたしかに救われたのだ。
フラエが彼を鬱陶しがって突き放してしまっても、絶対側にいてくれた。迷惑だ、離れてほしいと、口や態度で示していたけど。それがグノシスには一切通じなくて、本当は嬉しかった。彼の隣にいる時だけは、寂しくなかった。
「……ん」
すん、と鼻を啜る。ますます寂しくなってきた。胸の中が切なくなって、胎児のように身体を丸めて小さくなる。
こういう時は、自慰行為で紛らわせるのが一番だ。性的な快感が幸福感とよく似ていることに気づいて以来、フラエは自慰が好きだった。
枕を抱きしめながら胸元をはだけさせ、胸の尖りに指を伸ばす。目を瞑って意識を集中させれば、そこから生まれる気持ちよさに吐息が漏れた。きゅう、と摘んで、つねって、爪で優しく引っかいて。指の腹で擦ると、それだけで腰が揺れた。口寂しくなって右手の指を唇で挟み、舌でねぶりながら胸を愛撫する。
興奮でつんと立った尖りを指で乱暴にはじき、追い討ちをかけるように押しつぶす。すっかり一人遊びで敏感になった彼のそこはぷっくりと膨らんで、少し濃いあかいろをしていた。指をしゃぶりながら、弄っていないもう片方の胸に手を伸ばして乳輪をなぞる。敏感なところに触れるだけで、切ない声が漏れた。
男の象徴がわずかに兆し、きゅうと腹の中が切なくなる。フラエの膣はとろとろと蜜をこぼしはじめ、股の間にぬめる感触がした。下履きの中が熱く、じっとりと蒸れた。
しゃぶっていた手を服の下へ滑り込ませ、そっと下腹部を撫でる。男の象徴で人と交わることも、ここに誰かを迎えいれることも、きっと縁のないことだ。
一瞬きんいろの頭が浮かんで、腰がひくんと跳ねた。思考を紛らわせるように股についたものを手で包み、胸と一緒に愛撫する。手を筒のようにして何度か扱けば、自然と息があがってきた。しかし手の中へ突き上げるように腰を動かせば動かすほど、気持ちよさより腹の中の切なさが勝つ。
「あ、う、……」
恐る恐る、膣口に指を伸ばす。下履きにつくほど愛液があふれていて、物欲しげに入り口がフラエの指に吸い付いてきた。自分で自分の身体を拓くのは、どうしてか怖い。それでも好奇心が恐れに勝ち、指をゆっくり挿入してみる。濡れた内壁がフラエの細い中指にしゃぶりつき、くにくにと腹側を押し上げるように指を曲げれば、じんわりとした気持ちよさがあった。
「ん、……」
必死に快楽を追って、もっと深くへ指を伸ばす。胸をいじる手つきも乱暴になり、かりかりと爪で乳頭を引っかいたり、ぴんとはじいたり、押しつぶしたりしてもてあそぶ。は、は、と呼吸が荒くなり、きゅうとつま先が丸まった。
腹の中がどんどん切なくなって、泣きそうだ。ゆるんでぬかるんだ穴に人差し指も増やして、ばらばらに動かす。人に見せられないところから激しい水音が立ち、わずかな羞恥を覚えて、枕に顔を押し付けた。
「ふぁ、…あ……」
もっと奥に欲しい。フラエの小さな手では届かないもっと奥に、もっともっと太いものが欲しい。足りなくてもどかしくて、目の前の枕に噛みついた。くぐもった声を漏らしながら、ぐちゅぐちゅと恥ずかしい音を立ててそこをまさぐる。
フラエの小さな男の象徴は涙をこぼしながら震え、しかし彼はそこに触れず、胎内から得られる快楽へ夢中になっていた。奥に欲しくてたまらない。まるい輪郭の臀部をゆすりながら、一心に指を動かした。
もっとほしい、ナカにいれたい、誰かにはいってきてほしい。抱きしめてほしい。甘やかして。キスして。好きって言って。
普段心の奥底に押し込んでいる寂しさと悲しさと人恋しさが、絶頂に近づくにつれてあふれ出す。きゅう、と子犬のように鼻を鳴らして、フラエは蹲るように身体を丸めた。必死に誰かを求めるフラエの瞼の裏で、きんいろが光る。手書きの「愛している」という文字列が脳裏によぎった瞬間、ナカがきつく締まった。腰がクンと跳ねて、全身に甘い快楽が、まるで大波のように押し寄せる。
「ッ、ふう…あッ、ぅ……」
達したナカが指に吸い付いて、うねっているのを感じた。でも、自分のうつろを埋める質量が足りなくて、切ない。枕に口元を埋めて、声を抑えた。ひく、ひく、と腰が揺れ、下腹部にベトベトとした感触を覚えた。
そこを撫でれば、生暖かい白濁したものが肌を汚していていた。さいあくだ、と気持ちよさで霞む頭でぼんやり思う。
しばらく経って、乱れた呼吸を整えて起き上がる。少し潤んだ瞳から、一筋だけ涙がこぼれた。それを手で乱暴に拭きとり、ベッドから降りて立ち上がった。そしてもう一度湯浴みをして、ベッドにもぐりこんだ。目元を枕に押し付けても、嗚咽は止まらなかった。
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