傲慢溺愛王子様は僕を孕ませたいらしい

鳥羽ミワ

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27 パーティー結成

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 数日後に発生すると予想される大規模ダンジョン発生に向けて、緊急で攻略パーティーが結成された。

 勇者に任命されたグノシスが指名したのは、ボスと予想される火竜を説得できる可能性のあるフラエ。それから、ディール。この三名を中心として部隊を編成し、ダンジョン攻略を行うらしい。

 王宮からの招聘に応じて顔合わせにやって来たフラエは、ディールの顔を見て固まった。自分が考えうる限り最悪の面子だった。なんとか挨拶するが、どこか上の空である。これではいけない。

 部屋にはグノシス、ディールと、最近フラエと痴情が縺れに縺れている相手しかいない。ここまで来ると純粋に驚いてしまった。
 どうして……という視線を指名者であるグノシスへ向けると、彼は綺麗に、フラエのもの言いたげな視線を無視して二人へ微笑んだ。

「今回の作戦成功は、貴殿らの活躍にかかっている。期待しているぞ」

 ディールはにっこりと微笑み、「光栄でございます」と礼をとる。フラエも一応隣に倣って礼をとるが、なんだか嫌な汗で服の下が蒸れていた。ディールは顔を上げ、「殿下とリンカー殿と同じ作戦に参加でき、光栄です」と晴れやかな顔で言う。別に僕の名前を挙げる必要はないだろうが、とフラエは思った。フラエがディールに激怒したのは、つい一昨日のことである。仮にも王族の手前であるため黙っているが、気まずい。グノシスはノーブルな笑みを浮かべ、「私のために、励みたまえ」と彼の肩を叩く。

「ええ。あなた方のために」

 ディールは変わらず、爽やかな顔で笑っている。グノシスは、フラエの方を見て「リンカー殿も、頼むぞ」と朗らかに言った。さすがのフラエもそれには背筋を正し、頷く。

「はい」

 彼は少し焦がれるような目をしたが、すぐに「それでは、詳細な説明に移るのだが」と話を切り替える。机の上に地図を広げ、一点を指さす。

「王都西南部、キウラ地区内の山中において、火属性の魔力溜まりが観測された。現在中等度の変異が起こっているが、これは三日後までには重等度に、その後日を置かずダンジョン化するという見込みだ」

 フラエは地図を覗き込み、地理を確認した。西南部には山があり、王都ならびに王宮周辺は扇状地となっている。グノシスは山の中腹のあたりに、ぴたりと指先を合わせた。

「ここではよく山火事が発生しており、元々火属性の魔力が溜まりやすいらしい」

 さらにディールも地図を覗き込み、地形に目を走らせた。

「台地状になっている部分ですね。木もなく、切り開かれているのですか」
「山火事の出火元になりやすいため、可燃物は極力取り除かれるように管理されている。近くには水場も設けられている」

 グノシスはさらに、一点を指の腹で叩く。そこには洞窟があることを示す印がついていた。フラエが覗き込めば、山火事の出火元は洞窟周辺に集中している。

「洞窟の中に、火属性魔力が溜まっているのですか?」

 そうだ、とグノシスは頷く。彼はさらに、もう一枚の紙を広げる。そこには洞窟のものと思われる模式図が描かれていた。彼は入り口の部分を指で叩き、奥の空洞へ指を滑らせる。

「ダンジョンへ入るには台地に存在する入り口から、山の内部にある空洞へ下っていく形になる。最深部には恐らく、ダンジョンのボスがいることになるだろう。内部はかなり高温になると考えられる」
「ボスは火竜ですか?」

 ディールが尋ねると、グノシスは「その可能性は高い、とのことだ」と答える。フラエは、ダンジョンのボスが火竜だった場合の説得役だ。そもそも火竜がいるのかは不確かであり、さらに火竜がいたとしても、フラエの説得が通じる相手なのかすら分からない。
 それでも、彼は役割を降りようとは思わなかった。与えられた役目があるならば、それを全うしたい。

「恐縮ですが、私の魔力量は騎士として考えると大変少ないのです。火属性魔力の操作を行っての気温管理を長時間保つのは、お恥ずかしながら、自力では難しいかと」

 グノシスはそれを知った上でフラエを指名したはずだ。その彼は堂々たる仕草でディールを示し、言う。

「それを解決するのが、ヘイリー殿だ」

 そう言う彼の輝かしい顔に、フラエは少し慄いてしまった。確かにフラエは魔力量の都合上、体温調整は他の人間に任せるべき分野ではある。しかし、あまりにも人選とタイミングが、悪い。

「もしかして、僕の周囲の温度管理を、ヘイリー殿に……?」

 ディールを見る。彼は花のほころぶような笑みを浮かべ、フラエの手を取った。やんわりと包み込まれ、火属性特有の高い体温が湿っぽい。

「あれから、僕もいろいろ考えたんだ。どうか君の傍で、一緒に戦わせてほしい。許してもらえるかな?」

 フラエの視界の端で、グノシスが首を傾げた。フラエも首を傾げつつ、ひとまず「ありがとう……?」と礼を言うことにする。
 グノシスはそれとなくディールの手をフラエから離し、「頼むぞ」と彼の手をそっと握った。ディールはその手を強く握り返し、「ええ」と強く言い切る。
 フラエは、自分ばかりがひやひやしているのが馬鹿らしくなってきた。これまでの流れを無視して挙手すると、二人がこちらを見る。

「グノシス殿下、少々質問が」

 彼は鷹揚に頷く。質問を拒否されなかったので、フラエは無遠慮に口を開いた。

「そもそもなんで僕たち三人なんですか? なんでここにディール=ヘイリー殿がいるんですか?」

 ずっと疑問に思っていたことを尋ねると、グノシスは横柄に頷いた。

「説明してやろう」

 そして、事の経緯を滔々と説明し始めた。
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