【R18】狂存トライアングル

皐月うしこ

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第一章 異世界のような現実

第八話 彼女としての自覚

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出勤がギリギリになったのは仕方がない。
おかげで、髪をまとめるゴムを忘れた。それに疲労感が半端ない。コピー機の前にいるとうっかり眠ってしまいそうなほど眠いうえに、高いところにある資料をとろうとすると身体の節々が痛む。


「……この年で筋肉痛とか…っ…勘弁して」


あと少し。一番上の棚にあるファイルが取れれば問題ない。


「これでいいか?」

「あっ、ありがとうございます」


そうして振り返って顔が引きつる。


「よお、朝以来だな」

「ランディさ…っ…ん」

「髪、どうした?」

「いや…これは、その…急いでたら忘れたという、か」

「じゃあ、これでくくっとけ」

「え?」

「他の奴にあまり可愛いところを見せるな」


ファイルを受け取るついでに耳で囁かれた声に痺れる。もしかしなくても、ランディが持っていたゴムはロイの家に忘れたものに違いない。
いちいち過剰反応したくはないのに、その声が子宮らへんを疼かせてくる。


「そういう顔も禁止な」


パコっと軽い音がしてランディが去っていく。
叩かれた頭をさする顔はきっと真っ赤だろう。それを誤魔化すように髪をまとめて、いつのまにか手首に通されていたゴムを引っ張る。ふわっと、ランディの香水の匂いがして、また下半身が変な反応をみせた。


「さ、仕事仕事」


髪を結んだだけなのに、不思議とやる気が戻ってくる。
仕事モードとでもいうのか。やはり、これが一番いい。肩らへんの高さでまとめて縛るだけのローテール。そうしてファイルを抱えて、出来上がったコピーを手にしてデスクに戻ると、そこに人だかりがあって戸惑った。


「何事ですか?」

「ああ、キングの出勤姿を見るために集まったハイエナの群れだよ」

「もうそんな時間ですか……」

「それよりも、アヤ。髪くくったんだね。おろしている姿もキュートだったのに」

「ありがとうございます」


前のデスクに座るデイビットは四六時中、話しかけてくる。
情報収集にはいいかもしれないが、仕事以外の会話はあまりしたくはない。距離を妙に近くに感じるところが苦手だ。それでも英語がそこまで上手に喋れなかった入社当時から気にせず話しかけてくれたおかげで、今の会話力が身に付いたのだとすれば、ありがたい話ではあるから無下にも出来ない。


「ねえ、アヤ。今日こそは俺とも食事にいかない?」

「え?」

「システム部のセイラだけが友達じゃ、何かと不便だろう?」

「別に……」


不便は感じていないと口にしようとしたところで、ロイが入ってきたらしい。女性社員の歓声が沸き起こって室内が騒然となる。


「たった一日いなかったくらいで大げさな」


これはデイビットの愚痴。
いや、他の男性社員も同じように呆れた視線を彼女たちに向けている。不思議なことは、誰一人としてロイを悪く言わないこと。それだけ能力があるのだろう。
騒ごうと何をしようと、仕事が成り立つのであればそれでいい。


「……私も仕事しよう」


これは決して嫉妬なんかじゃないと思いたい。
たったの二回、セックスしただけの関係。お試しで恋人ということになっているが、女子の群れに割って入って「私の彼氏なんで触らないでください」なんて恥ずかしい真似は出来ない。
第一、彼氏が一人じゃないというところが頭を悩ませる。ロイだけでも熱烈な信者に路上で刺されるかもしれない恐怖が付きまとうのに、昨日のセイラの話を思い返せば、三人ともそれなりの人気があるらしいから正気じゃない。


「うわー」


これもデイビットの声。呆れたように息を吐いている先に顔を戻してみると、先ほどより人口密度が増したその輪の中心に、まさかの三人がいる。


「……ッ…」


やっぱりはた目から見ても、世界が違う。とてもじゃないけど、「あの人たちが私の彼氏です」なんて胸を張って言えない。


「次期社長と執行役と開発責任者がそろうとさすがに圧巻だな」

「……え?」

「いや、だからあの三人」

「ロ……ハートンさんは営業部の方では?」

「今は本人の申し出もあってそういう立ち位置だけど、将来的にはあの人が社長になるって噂は結構の確率で濃厚。営業成績も常にトップだし、仕事っぷりは他の役員も認めているらしいから、もう時間の問題じゃないかな」

「……おぅ」

「そんなに驚くことでもないだろ。キングって愛称で呼ばれてるし、あの女たちも社長夫人の座を狙うハンターだし、割と有名な話だ」


さすが情報通のデイビット。今までまともに会話することを裂けていたが、思わないところで情報の収穫があるものだと、アヤはその顔を見つめる。


「おーい、アヤ?」


ひらひらと手のひらを動かしているが、このチャラくてパーソナルスペースが極端に近い男に苦手意識だけを向けるのは、やはり得策ではないかもしれない。


「聞いてる?」


前言撤回。
無遠慮にアゴを持ち上げてくるような同僚はいらない。ぞわぞわと嫌悪が背筋を這い上がって、思わずその手を払いのけていた。


「デイビット、いちいち触らないで」

「はは、ごめんごめん」


悪びれないところがデイビットらしいが、ボディタッチの頻度は最近あがっているような気がしないでもない。どこまでがこっちの国での許容範囲として受け取るべきか悩みどころだが、来米当初よりも随分「ノー」を口に出来るようになったとは思う。


「ッ!?」


一瞬、殺気を感じて振り返ってみる。そこにはまだ人垣ができていたが、例の三人はこちらには目もくれずに絵画のごとく書類を見て何かを囁き合っているのだから勘違いかもしれない。


「……ん?」


既視感と違和感。
払いのけたばかりの手をじっと見つめてみる。


「そういえば、あのとき」


会議室で三人に触れられたときのことが頭によぎる。
突然触れられても全然イヤな気持ちがしなかった。デイビットにしたように反射的に払いのけることもなく、怒ることもなかった。
自分の感情に戸惑いながらも、アヤは気のせいだと思うことにして持ってきたばかりの書類整理にとりかかる。


「そろそろどこか行けよな。気が散る」


デイビットの不満そうな呟きを聞きながら、アヤも自分の仕事へと戻った。


「…ッぁ…ヤッ…ぁ」


それがなぜ、こんなことになっているか。説明しても状況が理解できない。


「悪い子にはお仕置だと昔から相場が決まっているだろう?」

「そうそう、可愛い猫ちゃんはボクたちをまだ理解できてないみたいだしね」

「アヤ、妬かせた罪は重いな」


全裸に剥かれ、スヲンのネクタイで手首を縛られ、ロイのネクタイで目隠しをされ、ランディに後ろから羽交い絞めにされた身体は、彼らの前で無様に蜜を溢れさせている。


「…ぁ…そこ、ヤッだ…ァ…ん…」


足はランディの足によって閉じることが出来ない。腰から回りこんで割れ目をまさぐるその右手は、先ほどから時間をかけてアヤの性欲を掘り起こしていた。
なぜ、こんな事態になっているのか。
今日も普段通り定時に仕事を終え、帰宅した。そう、帰宅した。
会社が用意してくれた女性専用マンションはセキュリティもばっちり。初めての海外生活を恐れずにはじめられた砦といってもいいそのマンションの入口で、彼らに拉致同然に攫われたのはつい先ほどのこと。


「……そ、ァッ…~~~っ、ぁ…」


割れ目を人差し指と薬指で広げ、赤く腫れた陰核を中指にかりかりと引っ掻かれる。時々、膣へと中指が侵入して潤滑油を掻き出すが、溢れた蜜はまた陰核へと塗りたくられての繰り返し。もどかしいどころの騒ぎではない。


「ンッ…ぁ」


下肢を凌辱する右手とは逆の左手が胸を揉んでくる。指の間で挟まれた乳首も固く尖っているが、こんな風に一方的に愛撫されても応えようがない。


「アヤ、凄く濡れてるよ。気持ちいいの?」


ロイの声が右耳から聞こえてくる。
そのまま右胸の乳首を舐められる気配がして、アヤはビクリと身体を震わせた。


「デイビットだっけ、あいつ。ボクたちのアヤに何気軽に触れてるの」

「いつもあんなことされてるのか?」

「ッ…ぁ…ふぅ」

「アヤ、答えないとこのまま乳首噛み切っちゃうよ?」


左耳から聞こえるランディの問いを右胸から見上げるロイの言葉で促される。


「な…ッ…何のこ、と…あァッ」


ランディの指がクリトリスを摘まんで、ロイの歯が乳首を噛んだせいでアヤの言葉はのけぞるだけで続かない。
いやいやと首を横に振って身体を逃がそうと奮闘するが、体格差があるランディの腕からは逃げられない。そこからしばらくきつめの愛撫をされて、アヤは唇を噛み締めてそれに耐える。
はぁはぁと肩で息を吐き出すが、彼らはまだ満足しないらしい。


「アヤはもう少し自覚を持った方がいい」


スヲンにまでそう言われて泣きたくなる。
自分がいったい何をしたというのか。わからないからこそ、アヤは前方から侵入してきたスヲンの指に戸惑いをにじませた。


「アヤ、この体は誰の?」

「……ッ、ァッ……」

「俺たち以外に見せることはもちろん、触らせるなんてもっての他だ」

「そん…ッ…な」


不可抗力だと言いたい。デイビッドの過剰な接触は今に始まったことではないのに、自分から誘ったことなんて、もっとないのに。


「…ッ…自分たちだって、私以外の女の人にベタベタ触られてたくせに」


口にしてからしまったと思う。
目隠しをされた状態で彼らの表情を知ることは出来ないが、明らかにしんとした空気はよくない。


「そういうこと言うんだ」


見えなくてもわかる。
ロイの声が獲物を捕えた嬉しさを宿していることくらい。ランディの大きな手のひらがはい上ってきて顔を掴んで後方からキスをしてくる。代わりにロイが両胸を好きなようにいじり始めて、スヲンの指が本数を増した。


「ゃだ…ァッ…ぁ…そこっそれダ、めっ」


逃げようにも腰が振れるだけ。
そのまま追うように続けられる凌辱に、アヤは呆気なく果てた。


「…ぅ…っ…」


ランディに目隠しだけ外される。うっすらと開けた視界が少しボヤけている。


「……ッア」


いったばかりの身体が再びスヲンの指を咥え込んで、その輸送に喜びの声をあげていく。ピチャピチャと可愛い音から一変、とめどなく吹き出した透明の液体がスヲンの腕を濡らしていた。


「すっごくヒクヒクして美味しそう。アヤ、舐めていい?」


言いながら割れ目を覗き込んでいたロイの瞳がこちらを向く。
ここは、今朝みたロイの家の寝室だろう。例の巨大ベッドの上。手首だけ縛られて全裸で羽交い締められるアヤを除けば、快適な安眠を提供してくれるに違いない。


「ここ」

「……ッひ、ぁ」

「舐めていい?」


どうして今さら聞いてくるのかわからないが、その瞳に映る自分の顔が敗北したように首をたてに振ったのがアヤの目にも映っていた。


「………んっ」


濡れた服を脱ぎ始めたスヲンを押し退けて、ロイの顔が下腹部に埋まっていく。てっきりすぐに舐められるのかと思っていたら、おへそから徐々にキスをして下がっていくロイは、太ももの付け根に一際長いキスを落とした。


「いくたびに一個ずつつけてみる?」

「…っ…な…に?」

「んー。アヤが誰のものか自覚するための印」

「印って…ァッ…ふぁあッ」

「さすがにココは付かないか。もっと強く吸ったらつくかな?」

「や……あァッ」


クリトリスの包皮をめくって、形のいい唇で吸い上げてくるロイの強さに身悶える。時折舌で弾かれ、音をたてて蜜を飲まれるが、ランディの足とロイの手で開かれた足は閉じることなくその愛撫を受け入れるしかなかった。


「…イクッぁ…ろぃ…ァッ…ぁ…」


ピタリと止まって顔を上げたロイの目とぶつかる。


「なん……っで」

「さっきは、ほら。嫉妬してくれた御褒美だったけど、まだボクたちのお仕置きは終わってないから」

「なに…ッ…どういう」

「アヤはね、わかってないんだよ。ボクたちがどれほどアヤのことを思っているか」

「……は、ぅッ」


すねた子どもみたいな口ぶりで、でも大人の男の人の指が膣内に差し込まれる。一番長い中指でぐにぐにと内壁の感触を楽しんでいるが、寸止めでお預けをくらっている身体はそれさえも嬉しそうに咥えていく。


「こんなにエロい身体して、ボクたち以外に襲われたらどうするの」


完全な言いがかりだ。そんな心配そうな顔をしなくても、誰かに狙われる可能性も、襲われる予定もない。地味で目立たないように生きている一般人に興味を示すもの好きなんて、目の前の彼ら以外にはいないと断言できるというのに。


「ボクたちの恋人っていう自覚ある?」


心底呆れたような息を吐き出すロイは元より、同意を示すスヲンとランディもアヤを見つめる。けれど「まるで、わかりません」といったアヤの表情に、今度は三人同時に同じ息を吐き出した。


「ないよね」


にこっと音が出るほど爽やかな笑顔でロイがいう。


「だから自覚するまで、あれ。つけてよっか」

「……ッ」


あれ。と言われて指さされたモノは、スヲンの手の中にある。
ランディの腕の中に収まったままのアヤは、視線だけでそれを見つけて、瞬間息を呑んでロイの指を締め付けた。


「これみてこんな風に涎垂らしちゃうのアヤくらいだよ?」


実際、蜜が溢れた事実は隠しようがない。
ロイが証拠を見せつけるように中指を往復させて、増量した愛液をかき混ぜている。


「…ッぁ…んっ…」


反応してしまうのは彼らの空気に飲まれるから。本能で体が逃げてしまっても、心から反抗するつもりはない。なんなら「もっと」と口走った過去があるくらい。自分のなかで彼らから与えられる行為を喜んでいる部分があることは認めている。
たった二回。身体を重ねただけで、欲しくなる感覚に歯止めが利かない。
それでも、どうしても受け入れられない一線はある。


「さっさと受け入れちゃえばいいのに」


小さく呟いたロイの声がよく聞こえない。代わりに真後ろのランディの声が、濡れたアヤの秘部を覗き込むように低音を発した。


「よかったな。アヤ」

「よっ、よくない 」

「安心していい。アヤのサイズに合わせてある」

「スヲン、やだ……やめ、て」


抵抗は無意味。学習済みの身体は、縛られた手首を胸の前で祈りのポーズに変えるだけ。震える唇に握りしめた自分の指を押し付けて、アヤはロイと身体を並べて近付いてきたスヲンの行動を見つめている。
穴があくほど見つめた先で、俗にいう貞操帯は音を立ててアヤを拘束した。


「アヤがね、ちゃんと自覚してくれたら外してあげる」

「でもだからって、そんな」

「それまでは、このまま」


ロイが語尾にハートをつけてくるが、まったく可愛くない。
有無を言わさない笑顔が、満足そうに器具の上からアヤの恥丘を撫でつける。


「はっ…はずれ、な…ぃ」


ランディが用事は済んだと言わんばかりにアヤの手首を縛り付けていたネクタイをはずし、よしよしと頭を撫でて額にキスをくれる。その隙に両手で力いっぱい貞操帯を引っ張ってみたが、うんとも寸ともいわないそれに、絶望的な気分が込み上げてきた。


「風呂もトイレも心配しなくていい。そのまま入れるし、用も足せる」


スヲンが取扱説明書を読むような雰囲気で、下腹部を覆う物体の説明をしてくれる。が、冗談じゃない。外してもらうには、恋人としての自覚を持たなくてはならない。
それも三人の。


「アヤ、今日も泊っていくでしょ?」


呆然と事実と対面していたアヤは、その日も流れるように三人の腕の中で眠っていた。
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