俺様王子は女嫌い?!本当は一途すぎて幼馴染のキミしか見てない

naomikoryo

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第21話「恋も疾走、体育祭の足音」

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九月も終わりに差しかかる頃。
夏の残り香を引きずったような陽射しと、運動場を照らす青空。
そんな季節の風物詩
――体育祭の季節が、やってきた。

 
「やば……今年の体育祭、絶対凛音くん出ずっぱりじゃね?」

「てかもう、うちのクラスの戦力、凛音くん頼みだよね」

「去年は応援団だけで済ませたんだっけ?」

「そうそう、しかも団旗振ってるだけでファンクラブできたやつ」

「マジで歩くだけでモテるの反則すぎん?」
 

ホームルーム後の教室には、そんな話題が飛び交っていた。

中心にいるのは、もちろん
――桐嶋凛音。

本人はというと、椅子に腰掛けながら腕を組み、露骨に面倒くさそうな顔をしていた。

 
「……俺、去年“応援団”だけで済ませたのに、
 なんで今年は走らされんの」

 
「いやいやいや、むしろあんたの身体能力、なんで去年まで隠してたのってレベルだから」

「先週の球技大会で無双してたのお忘れ?」
 

教室前方のホワイトボードには、すでに体育祭の種目一覧が書かれていた。
中でも、クラス対抗リレーの出場者は特に注目されている。
 

「ということで、リレーの走順決めました!」

と、元気いっぱいに前に立っていたのは
――もちろん、夏菜。

女子バレー部部長、そしてこのクラスの体育祭実行委員。
 

「最初は、陸上部の百瀬ね!」

「おっけー!」
 

「次が悠真!」

「うい」

 
「その次が私で――最後、アンカーが……」

 
全員の視線が一斉に、凛音へと向いた。

「……桐嶋凛音!」
 

「なんでだよ」
 

「最終走者って、“背中で魅せる”ポジじゃん?」

「脚速い。スタイルいい。走る姿美しすぎる。
 モテる。なんなら絵になる」

「今のとこお前に断る権利ないよ」

 
「この人権侵害感よ……」

 
それでも、凛音は最後には小さくため息を吐いて、頭をかいた。

「……やればいいんだろ。走るくらい」
 

「きゃあああ! 凛音くんカッコイイ~~~~~!!」

 
自然発生的に起こる黄色い歓声に、悠真が横で苦笑した。

「モテすぎも、疲れるな。お前」

「俺だって好きでモテてねーよ」

 
そして――
その会話の先、教室の窓際で立ち尽くしていたのは、白石天音だった。

 
頬を紅潮させながら、そわそわと手元のプリントを見つめていた。

「うぅ……種目選べない……全部、苦手……」

運動神経ゼロに等しい彼女は、体育祭の種目選びで難航していた。

そんな天音のもとへ、元気いっぱいの女子が駆け寄る。

「天音ちゃん~! 二人三脚どう!?」

「え……わ、私?」

「そ! 可愛い子同士でやったら、絶対注目されるよ~!」

 
しかし――

天音は小さく、けれどはっきりと首を振った。

 
「ご、ごめんなさい。
 私、ペアにしたい人……もう、決まってるから」

 
その言葉に、女子たちは「おおぉ~」と声を上げた。

男子たちがこぞって立候補していたのを聞いていたからだ。

「てことは……」

 
「凛音くん……だよね?」
 

天音は顔を真っ赤にしながら、こくんと頷いた。

「う、うん。……凛音と、やりたい」
 

その可愛さ、あまりにもストレートすぎる愛情表現に――

もはや教室中が天音の虜だった。
 

「はぁ……無理。可愛い。天使」
「やばい。これで断る男子いたら、逆に幻滅する」

「凛音くん、お願いだから受け入れてあげて。今すぐ」
 

そして教室の隅で悠真がぽつりと漏らす。

「……勝てねぇ」

「うん、あの無垢な感じは無敵だね」と、隣の夏菜が笑った。

ふたりのあいだに流れる空気も、最近は少しだけ柔らかい。

  


 
翌日から、体育祭練習が始まった。

校庭では、各クラスが練習に勤しみ、熱気と砂埃が舞い上がっていた。

中でも注目を集めていたのは――

リレー組と、二人三脚組(凛音&天音)。
 

リレーのバトン練習では、陸上部の百瀬がスタートダッシュで大きくリードを取る。

悠真はそのバトンを受け取ると、力強く走り出す。
フォームが綺麗で、無駄がない。
部活で鍛えた体のバランスが、まさに“走るための体”だった。

夏菜は、その後を勢いよく追い抜き、スパイクの音がグラウンドに響く。

そして
――最後に受け取るのは、凛音。

バトンを握った瞬間、
無駄のないフォームで一気に加速するその姿に、思わず見惚れる声が上がった。

 
「はっや……」

「何あの脚長い彫刻……」

「てか走る姿まで絵になるってなに……」

 
凛音はその視線に少し辟易としつつも、手を抜かない。

走ることに意味を見出すわけじゃないけど、
“チームで勝つ”という目標には、ちゃんと乗る男だった。

 
一方、二人三脚ゾーン。

――こちらは、もはや別ジャンルの世界だった。

 
「よし、天音。今度は“いちに、いちに”って声出して合わせるぞ」

「うんっ!」

 
「せーのっ――いちに! いちにっ!」

「……きゃっ! ご、ごめんなさ――」

 
ドスンッ。

 
派手に転んだふたりに、
周囲から「だ、大丈夫かー!?」「かわいい!!」という両極端な声が飛んでくる。

凛音は顔をしかめながら、天音の手を取って起こす。

「ったく、お前、ホントに運動ダメだな」

 
「ご、ごめん……でも、楽しい……」

 
その笑顔を見て、
凛音の表情が少しだけ柔らかくなる。
 

「――ったく、もう。
 次、俺の合図だけで動け。声出さなくていい」

「えっ、えぇ……!?」

 
「お前は俺だけ見とけ。
 それで動けば、全部うまくいく」
 

その言い方はどこまでも俺様だった。
でも、
なぜか天音にはそれが一番の安心だった。

 
「う、うん! わかったっ!」

 
もう一度。
今度は――成功。

一歩、また一歩。

凛音の動きに、天音がぴったりと合わせて走る。
周囲の声は聞こえない。
ただ、彼の背中を見て、
ただ、彼のリズムに身体を預けて。
 

まるで、
世界で一番短い距離で、心が並走するような瞬間だった。

 

 

放課後、体育倉庫の前で。

 
「なあ、天音」

 
「なに?」

 
「本番も、俺の横、ちゃんと走れよ」

 
「うん。
 倒れても、引きずってってくれていいから」
 

「お前、そこまで信頼すんな」

 
「だって、凛音だから」
 

少しの沈黙のあと。
 

「……あんま、期待すんな。
 緊張すんだろ」

 
「ふふ。
 じゃあ、凛音も私に、期待して」

 
そう言って、
天音はそっと凛音の手を握った。

指先が少し汗ばんでいたけれど、
それすら“好き”だと思えてしまうのが、いまの彼女の気持ちだった。

 
【つづく】
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