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18:【ご先祖サブスク】
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◆◆◆(まくら)
えー、今の世の中、「買う」より「借りる」ってのが主流になってきたようで。
音楽、映画、本、服、車……なかには“お墓サブスク”なんてぇのもあるらしくてね。
「月3000円で合祀(ごうし)」「スポット参拝可」って、あたしゃ仏様が気の毒になりますよ。
じゃあ逆に、“仏様”からサービスされたらどうなるか――?
今日はそんな、まさかの**“ご先祖通信”サブスク**のお噺をひとつ。
◆◆◆(本編・序)
とある日の夕方。
長屋の与太郎が縁側で昼寝していると、どこからか“パサッ”と紙が落ちてくる。
「んぁ? なにこれ……お経の一部か?」
見ると、立派な金の縁取りに、こんな文字が。
【ご先祖さまと定期連絡しませんか?】
月銀一朱で、あなたの血筋とつながれます。
通話内容は墓守にも共有されます。
初回は7日間無料!
「……ご先祖と喋れるのかぁ? へへっ、面白ぇじゃねぇか」
なんとなく巻物に名前を書いて、枕元に置いて寝ると――
深夜、夢の中で鐘が鳴る。
「ご加入ありがとうございます。第一祖先と接続中……」
◆◆◆(本編・破)
最初に現れたのは、でっぷりと太った男。
「我は与太衛門信吉。戦国の砦にて討死したる者なり!」
「へぇ~、すげぇ、武将か! オラ、あんたの子孫だよ!」
「して、お主は今、何を成しておる?」
「え? 米屋で米数えて、たまにサボって昼寝して……あと草履飛ばして……」
「なにぃ!? 我が血が、草履を飛ばすとは何事か!」
「……ま、楽しいけどなぁ?」
「楽しい……? 貴様、それでも武家の末裔かァァァ!!」
そこへ次の声が割り込む。
「やめなさいよ、そんな怒鳴らなくたって。うちの子に向かって」
現れたのは町娘風の若い女。
「私は、与太さんの曽々祖母、かの“おはる”。本所七不思議の一件で有名だったのよ」
「おぉ~、伝説のひとぉ?」
「でも、あなた最近仏壇に花も供えてないわね?」
「……いや、ほら、ドクダミ咲いててさ……」
次に現れたのは、なんと僧侶。
「我は与太家の裏血筋。僧・幻泉(げんせん)」
「うわっ、坊主まで!?」
「貴様の“ふざけ坊主いじり”、あれ、拙僧に刺さっておるぞ」
与太郎、寝ながら四方から責められる。
「こりゃ……サービスっていうより、地獄じゃねぇか……!」
◆◆◆(本編・急)
そして数日後。
与太郎の部屋に、サブスクの“お知らせ”が届く。
【ご先祖さまよりフィードバック】
・墓石、左に4度傾きあり
・線香の香りが古い
・名前の漢字を間違えられている
・盆の団子が“手抜き気味”との苦情多数
「うるせぇなぁ!!」
挙げ句の果てには、
「お前の寝言がうるさい」と“幽霊側から”クレームが届く。
そして、さらなる問題が発生。
「我が家系の本流はワシじゃ!!」
「ちょっと待った、それは私よ!」
「いやいや、戦国武士の方が格が上だ!」
「南無阿弥陀仏、争いはやめなされ!」
ご先祖同士が家系内マウントを取り合い始めた。
「与太郎! 誰が一番の先祖か決めろ!!」
「やだよそんなのぉぉぉぉぉぉ!!」
◆◆◆(オチ)
その夜、与太郎は巻物を燃やしながら叫んだ。
「オラ、もう親戚付き合いはこりごりだぁ!!」
風に舞う灰がひとつ、くるりと回って、どこかから声が聞こえる。
「……でも、ちょっと嬉しかったよ」
与太郎、ふと手を合わせる。
「……オレも、話せて良かったよ。次は……盆に、またな」
以来、与太郎は、仏壇にだけは毎朝花を供えるようになった。
そして口ぐせは――
「サブスクよりも、直で挨拶が一番だ!」
――お後がよろしいようで!
えー、今の世の中、「買う」より「借りる」ってのが主流になってきたようで。
音楽、映画、本、服、車……なかには“お墓サブスク”なんてぇのもあるらしくてね。
「月3000円で合祀(ごうし)」「スポット参拝可」って、あたしゃ仏様が気の毒になりますよ。
じゃあ逆に、“仏様”からサービスされたらどうなるか――?
今日はそんな、まさかの**“ご先祖通信”サブスク**のお噺をひとつ。
◆◆◆(本編・序)
とある日の夕方。
長屋の与太郎が縁側で昼寝していると、どこからか“パサッ”と紙が落ちてくる。
「んぁ? なにこれ……お経の一部か?」
見ると、立派な金の縁取りに、こんな文字が。
【ご先祖さまと定期連絡しませんか?】
月銀一朱で、あなたの血筋とつながれます。
通話内容は墓守にも共有されます。
初回は7日間無料!
「……ご先祖と喋れるのかぁ? へへっ、面白ぇじゃねぇか」
なんとなく巻物に名前を書いて、枕元に置いて寝ると――
深夜、夢の中で鐘が鳴る。
「ご加入ありがとうございます。第一祖先と接続中……」
◆◆◆(本編・破)
最初に現れたのは、でっぷりと太った男。
「我は与太衛門信吉。戦国の砦にて討死したる者なり!」
「へぇ~、すげぇ、武将か! オラ、あんたの子孫だよ!」
「して、お主は今、何を成しておる?」
「え? 米屋で米数えて、たまにサボって昼寝して……あと草履飛ばして……」
「なにぃ!? 我が血が、草履を飛ばすとは何事か!」
「……ま、楽しいけどなぁ?」
「楽しい……? 貴様、それでも武家の末裔かァァァ!!」
そこへ次の声が割り込む。
「やめなさいよ、そんな怒鳴らなくたって。うちの子に向かって」
現れたのは町娘風の若い女。
「私は、与太さんの曽々祖母、かの“おはる”。本所七不思議の一件で有名だったのよ」
「おぉ~、伝説のひとぉ?」
「でも、あなた最近仏壇に花も供えてないわね?」
「……いや、ほら、ドクダミ咲いててさ……」
次に現れたのは、なんと僧侶。
「我は与太家の裏血筋。僧・幻泉(げんせん)」
「うわっ、坊主まで!?」
「貴様の“ふざけ坊主いじり”、あれ、拙僧に刺さっておるぞ」
与太郎、寝ながら四方から責められる。
「こりゃ……サービスっていうより、地獄じゃねぇか……!」
◆◆◆(本編・急)
そして数日後。
与太郎の部屋に、サブスクの“お知らせ”が届く。
【ご先祖さまよりフィードバック】
・墓石、左に4度傾きあり
・線香の香りが古い
・名前の漢字を間違えられている
・盆の団子が“手抜き気味”との苦情多数
「うるせぇなぁ!!」
挙げ句の果てには、
「お前の寝言がうるさい」と“幽霊側から”クレームが届く。
そして、さらなる問題が発生。
「我が家系の本流はワシじゃ!!」
「ちょっと待った、それは私よ!」
「いやいや、戦国武士の方が格が上だ!」
「南無阿弥陀仏、争いはやめなされ!」
ご先祖同士が家系内マウントを取り合い始めた。
「与太郎! 誰が一番の先祖か決めろ!!」
「やだよそんなのぉぉぉぉぉぉ!!」
◆◆◆(オチ)
その夜、与太郎は巻物を燃やしながら叫んだ。
「オラ、もう親戚付き合いはこりごりだぁ!!」
風に舞う灰がひとつ、くるりと回って、どこかから声が聞こえる。
「……でも、ちょっと嬉しかったよ」
与太郎、ふと手を合わせる。
「……オレも、話せて良かったよ。次は……盆に、またな」
以来、与太郎は、仏壇にだけは毎朝花を供えるようになった。
そして口ぐせは――
「サブスクよりも、直で挨拶が一番だ!」
――お後がよろしいようで!
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