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2 掘り起こされた炎
しおりを挟む山の麓でディアルトは手で静かに土を掘り起こしていた。
ちからを使い果たした源の石は脆く、少しの力で粉々になってしまう。
非効率的ではあるが、静かに、ゆっくりと掘り起こすしか手段が無い。
レンも尻尾を使って静かに掘り起こした。
三年前からディアルトの毎日の日課がこの土木作業だった。従来は金や銀などの貴金属が取れれば良い方で手ぶらで帰る事も少なくない。そしてその傍らにはずっと友のレンがいた。そんなこんなで、やがて辺りが暗くなり、夜が訪れた。
「あちっ! ディアルト、ちょっと来てくれ」
尻尾で土を掘っていたレンが何かを掘り当てたらしく、ディアルトを呼んだ。
何事かと近づいていくと、それはこぶし大の、赤く輝く石であった。
ディアルトが触ると、石から炎があふれ出し、ディアルトを襲う。
とっさにディアルトは手を離し、レンの顔を覗き込む。
「なんだこれ?今までのとは大きさも熱さも違うな。」
レンがとがった爪でツンツンと突つくと、炎が再び襲いかかり、火傷させる。
ピクっとなって慌ててその石から離れる。
「なんか、すごいの掘り当てたんじゃないか?」
「だよな、なんがすごいよな!」
興奮するディアルトとレン。
「でも、どうやって持って帰ろうか?」
棒で突いたり、木の葉で包んだり、がんばって手で掴んだり、持っていた水筒の水をかけてみたり、いろいろと手を尽くしたが、どうにもならない。
ディアルトはニカっと笑って穴を掘り、ヌメヌメした土をかけた。そしてその土ごとその赤い石を持ち上げた。
「少し熱いけど、これならいける。」
ディアルトはレンに笑いかけた。
ディアルトは両手が使えないため、レンの背に乗ろうとしたが、羽が動かなくなってしまうため、レンが首を振った。
空を飛べば何の障害も無く到着するが、歩くととても長く、危険な道だろう。
正直、歩いて進む道を想像しただけで、それは無理だと判断できた。
「赤い石置いて帰ろうか?」
レンが考え込む。
「やだ!絶対これは父さんが喜ぶはずだ!」
意地になって歩き出すディアルト。必死に考えるレン。
「少し痛いの我慢できるか?」
「えっ?」
レンは少し羽ばたくと、両足でディアルトの肩にとまった。そして肩に爪をめり込ませる。
「よし、父さんのためだ、やってくれ!」
しっかりと土ごと赤い石を力いっぱい握り締めて腹に抱えたディアルトの肩をレンは爪で支え、飛び立った。
レンもできる限り力を弱め、且つ落ちないように、鳥が獲物を捕獲した態勢で固定して飛び上がった。
ディアルトは目をつぶり、両手に力を込めて筋肉でレンの爪を跳ね返すように、肩の痛みに耐えていた。
そしてしばらく我慢を続け、なんとかアルト村の研究所に戻ってきた。
村では、夜になっても戻らないアルトを心配し、父と母が研究所の前で待っている。
そこにレンは上手に降下し、サンアルトの元へディアルトを器用に減速してから渡すと、再び羽ばたいて上昇した。
レンはこの研究所の屋根に巣を作り一匹で住んでいる。
サンアルトの両手には、しっかりと土を握り締めて、両肩から血を流している息子がいた。
ディアルトはゆっくりと地面に立つと、持っていたものを地面に置いた。
「父さん、これ」
首をかしげる両親。
土で覆われているが、それでも夜の暗闇の中では、赤く輝いているのがわかる。不気味に。
ディアルトが誇らしげに笑いながら、そのカラカラになった土を剝がすと、中から赤く輝く石が現れた。
サンアルトが掴もうとすると、火がそれを拒み、手を痛めさせる。
「まさか、これが・・・」
ディアルトがしたように、土ごと持ってその赤い石を研究所内に持ち運ぶと、大急ぎでジジを呼び出した。
何事かと集まるジジと研究員たち。
「ジジ、これを見てくれ」
よくわからず、触ろうとするジジ。すると同じように石から火が巻き起こり、これを拒絶する。
「まさか、これは火の原石!火の原石はセイシュの民である火の一族しか扱えないため、ほかの種族が触ろうとすると拒絶するために火が巻き起こると文献にある。まさにその通りではないか!」
興奮するジジ。それを聞いて一緒に興奮するサンアルトと研究員達。当然、ディアルトはずっとからだが震えっぱなしである。
「ディアルトが発見した。いつもの山の麓だ。まだあるかもしれない。」
サンアルトもずっと興奮している。
「危険です。その山にも入るのはやめましょう。原石は村を滅ぼすかもしれません。」
急に横から口を出したのはディアルトの母ニルム=シンであった。
その横でディアルトの妹のチャル=シンがよくわからずにうなずく。
「他にもあるはずだ!村のみんなで探そう!」
「研究が進むぞ!」
研究員から歓喜の声が響く。
「そうだよ、もっと研究が進めば、みんなが幸せになれるんだよ!」
ディアルトも続く。
「・・・そうだな。火の他にも原石があれば、こんな嬉しい事は無い。」
サンアルトの顔が曇る。
「だが、ニルムが心配する通り、このことがイルエスタの連中に伝わると厄介だ。今まで通りひっそりとディアルト
だけに調査してもらうのがいいと思う。レンを使う以外に容易に行く方法がないからな。」
皆を説得するように話すサンアルト。しぶしぶ従う助手たち。
「そういっても、火の原石があれば、研究のしがいもあるよな!」
再び湧き上がる助手たちに、安心するサンアルトとニルム。
「さあ、今日はゆっくりと休み、明日から本物の火の原石を使って研究しよう。」
また、歓声が巻き起こる。
サンアルトは助手やジジが戻っていくのを見ながら、ディアルトの頭を強く撫でた。
「お前が毎日、がんばった結果だ。地道な繰り返しが良い結果を招く。これからもがんばれ。」
ディアルトが笑って大きくうなずく。そして父と母の手を握り、研究所内にある自宅へと帰っていった。
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