炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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3 寒空に燃える冒険心

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 翌日の朝早く。深い雲に覆われた空では、わずかに明るくなったかと感じる程度。

 ブクブクに太った灰色の羽で丸まった鳩をサンアルトが大切に抱くと、足に固定された小さな筒の中に入った、丸められた手紙を広げた。

「うーん。」

 外の天気を確認してから考え込む。

 灰色の暗い空は、わずかに雪がパラパラと舞っている。

 そこへ、ディアルトが寝ぼけた顔で姿を現すと、険しい顔をしている父を見て少し緊張する。

「どうしたの?」

「北方のアイスレリアから火薬玉の注文だ。大至急届けて欲しいと。」

「アイスレリアって、山を越えた先のお城だよね?」

 ディアルトもチラッと外を見る。

「ここアルト村が雪ってことは、道中は大雪。道はすべて閉鎖される。難しいね。」

「そうだな。とても運ぶことはできない。だが、どうも、アイスレリアに侵攻をしている部隊があるようだ。おそらくイルエスタだと。」

「イルエスタ!また、奴らか!」

「なんとか届けてやりたいんだが。馬は無理、当然徒歩でもだめだ。山を迂回しても時間がかかるし、レンは低温が苦手で羽ばたけなくなってしまう。困った。」

 サンアルトが考え込む。そうしている間に、指示をされた火薬玉がたくさん入った箱が1つこの場所に運び込まれる。

 ディアルトが窓を開けて、指を折り曲げて口に挟み、息を大きく吹いて指笛を鳴らした。

 すると、バサバサと羽ばたきが聞こえて、スッとレンが滑空して姿を現す。

「おはよう。どうしたの?深刻な顔をして?」

「レンは雪の中は飛べる?北方まで。」

 床に置かれたディアルトが何とか背負えるぐらいの荷物をレンが見つけると、首を振った。

「寒いのは羽が凍るから難しいね。羽ばたくテンポが崩れるとまっすぐ飛べないんだ。最悪墜落する。そんな重い荷物なんて運んだらフラフラだよ。」

「だよね。」

 ディアルトがうなずいた。用意された背負いベルトを通して火薬玉の入った箱を背負うと、ヨタヨタと足元がおぼつかない。

「しかも結構重い。」

「ディアルトが背負えるなら、重さは全然問題なく飛んで運べると思うけど。寒さかな。暑いのは得意だけど、寒いの苦手なんだ。」

 そこに妹のチャルがシャキっとした顔で姿を現した。

「おはようございます。みんな早いね。」

 長い黒髪をしっかりと後ろで束ねて、母親と一緒に作った朝ごはんの準備を手際よくテキパキと進める。

「今日は寒いね。」

 チャルが火鉢に火箸で炭を整えてから火をつけると、とたんに部屋が暖かくなる。
 少しちからの入ったからだを、皆がホッと柔らかくして和んだ。

「あーあ、こんな火鉢を持っていけたら、快適に空を飛べるのにね。」

 ディアルトが両手を広げてパチパチする炭で温まると、慌ててサンアルトが火薬玉の入った箱を火鉢から離す。

「おいおい、引火したら、この家、研究室も吹き飛ぶからな。気を付けろよ。」

「はーい。」

 よくわからない顔でチャルがかわいい返事をする。

「・・・火鉢、温まりながら移動できればいいのか。あれからちょっと考えたものがあるんだ。」

 サンアルトがドタドタと走って部屋を出ると、セイシュ・イシュの歴史書の研究者ジジを連れて戻ってくる。

 ジジの手には不思議な布に包まれた何かが大切に運ばれる。

「はいはい、さっそく研究が役に立つ。嬉しいことよ。」

 ゆっくりと布を開いていくと、赤く輝く火の原石がおとなしく収まっていた。

 それにわざとらしくジジが手を近づけると、火の原石から炎が吹き放たれ、一瞬ボワっと周囲を明るくする。

「ふぇぇ」

 初めて見たチャルが嬉しそうに火の原石に手を伸ばすのを、慌ててディアルトが止める。

「でな、これをこうする。」

 後ろに立っていたサンアルトが持っていた土をコネて固めたようなものをスポッと火の原石にはめ込む。

「これは、鳥雀蜂の巣をくりぬいて作った保護具だ。鳥雀蜂は特殊な赤土を固めて巣を作る。それにちょうど火の原石をペコとはめ込むと。なんと不思議。」

 ジジがディアルトに渡すと、もわーっと温かった。というより、少し熱いぐらい。

 鳥雀蜂の巣は完全に乾燥してカピカピになっている。トントンと叩くと、カツカツと音がして、固かった。
 ヒビ一つ無いよくできた自然の作品。

「あったかいね。これ、すごーーーい。」

 チャルが両手で触れて笑う。

「もう少し小さい巣を使えばもっと熱くなる。本当にすごいのは、このエネルギー源は尽きるのかわからないぐらい無尽蔵に生まれるということじゃ。どうだ?これだったら雪でも飛べそうかな?」

 ジジが巣の上部に穴をあけると、もう一つ準備した少し小さめの鳥雀蜂の巣に器用にコツンと入れ替えて、その上部を水で濡らしてニュルニュルと均していくと、すぐに乾燥してカピカピになった巣をジャリジャリと木のヘラで削り整える。

「あ、本当だ、さっきより暖かい!!」

 それをレンの首の後ろあたりに紐できつく縛る。

「ちょっと熱すぎるかも。まあ、雪の中だったらちょうどいいかもね。」

 レンがからだを震わすと、すこしずり落ちてきたので、もう一度ディアルトがきつく縛る。

 そのままレンが3度跳ねると、翼を大きく広げる。そして1度大きく羽ばたくと部屋の中の火鉢から灰がぶわぁっと舞った。

 慌ててサンアルトが火薬玉の入った箱を抱えた。

「だから、これに引火したら爆発するって。気を付けろ!」

「ごめんなさい!」

「ごめんなさい!」

 ディアルトとレンが声を重ねて謝ると、それにつられてチャルも謝った。
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