5 / 62
4 空高く、雪を越えて
しおりを挟む慌てて外にレンが飛び出ると、そのまま空高く急上昇をして、一周大きく旋回してから、そのまま羽を畳んだり、伸ばしたりを繰り返してくるくる回り降下する。
「うん。飛行には特に問題なさそうだね。」
ディアルトが火薬玉の入った箱にひもを通して両肩で背負うと、軽く飛び跳ねて、ずれないように紐の長さを調整してぎゅっと強く絞る。
「こっちも準備できた。」
自分でも肩の紐をぐっと握り、その感触を調べた。
サンアルトが箱から火薬玉が落ちないように、箱を細い紐でグルグル巻きにする。
「ちょっと待って。一応これ持って行ってね」
ディアルトの母のニルムが飛び出すと、袋に詰めた食料と水をディアルトの腰にきつく結びつけた。
「アイスレリアの場所はわかるな?」
「うん。何度かお使いに行ったことがあるからね。」
サンアルトにレンがうなずく。
「でも、こんな雪の中は初めてだから、方向を見失うかも。その時はディアルトが方向を指示してくれ。」
「わかった。任せろ!」
レンにディアルトがうなずくと、ジジが持っていた地図を念のためじっと見つめて覚える。
「まあ、山を越えた先だし、大きな城だからね。もし吹雪いていたって、わかると思う。」
「頼むぞ。アイスレリアについたら、城門付近に案内をする兵士が立っているはずだ。その兵士が具体的にどこに届けたらいいかを教えてくれえる。それに従ってくれ。費用は別途支払いを受けるから、今回は渡すだけでいい。」
「わかった。城門付近だね。」
「イルエスタの侵攻を受けているらしいから、危なそうだったらすぐに戻るんだ。雪がひどかったり、迷子になったり、何かあっても迷うことなく戻るんだ。アイスレリア側の援助だからな。下手したらイルエスタの攻撃対象になる危険がある。」
「わかった。空飛べるから大丈夫だと思うけど、逃げるようにするよ。」
サンアルトがディアルトに近づくと、そのまま太い腕でぎゅっと抱きしめた。
ディアルトがそれをぎゅっと握る。
それから、レンにもぎゅっとサンアルトが抱き着く。
「ディアルトを頼むぞ。」
「任せて。」
そして、ディアルトとレンに対面するように、サンアルトとニルム、チャルとジジが姿勢を正して立つ。
「それでは、ディアルト=シン、行ってきます!」
「レンも行きます。」
一人と一匹が深く礼をした。
「アルト村の代表として、村長の息子として、役目を果たしてくれ。」
サンアルトが同じように礼をした。他の者も続いて礼をする。
「では、行ってきます。」
ディアルトが皮の手袋をしっかりと身に着けた両手を上げて手のひらを広げると、レンが地面を強く蹴って飛び上がり、一度上空まで急上昇して大きく旋回して少し距離を取り、そのまま振り子のように楕円の弧の一部のような角度で急降下する。
そのままディアルトの頭すれすれの位置を通過すると同時にディアルトがレンの足を掴んで上空へ舞い上がった。
重い荷物を背負っていたため、いつも以上に大きく揺れたが、上手にバランスを整えると、安定飛行の体勢を取った。
「危なくなったら逃げるのよ!」
ニルムが大声で叫んだ。
一度上空で円を描くように飛行すると、そのままの勢いで目的地へと向かった。
「まあ、方向的にイルエスタの侵攻と出会うことは無いだろうが。心配なのは雪か。」
「そうですね。」
「まあ、男はこんな感じで大きくなっていくもんだ。」
「そうですね。でも、まだ早くないですか?」
「レンと一緒だから大丈夫だろう。仲間ってそんなもんだ。」
「信じています。ディアルトもレンも。」
すっかり見えなくなった一人と一匹をしばらくニルムは見守っていた。
「あ、ゴーグル忘れた。」
焦るディアルト。
「どうする?取りに戻ろうか?」
レンがスピードを落とす。
「うーん、でも今戻ったら格好悪くない?」
「確かにね。」
「じゃあ、このまま頑張るよ。行こう、レン!」
「よし、飛ばすよ!!」
予想したよりも天気は悪くない。気温はかなり低いが、雪は降っていない。
それでも険しい山を少し余裕を持った上空を進むと、徐々に翼に氷の粒が付着していく。
一度大きくバタバタと羽ばたくと、その付着した氷を弾き飛ばす。
「大丈夫?」
ディアルトが心配そうにレンを見上げる。
「これくらいだったら、全然余裕。火の原石ってのも暖かくて、いい感じだよ。」
「そう?じゃあ、このまま進もう!」
それからしばらくすると、雪がパラパラと降り出すが、特に悪影響は無く、視界は良好。
それでも当初の予定通り、雪を避けるために山の中腹あたりを大きく迂回して飛行すると、何事も無く山を越えた。
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる