炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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5 雪嵐を切り裂く翼

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「うわぁ。」

 山を通過した途端に強い風が吹き荒れている。

 それと同時に大きく固まった雪が、その風に流されるように真正面から衝突する。

 レンが押し戻されて、体勢を崩すと、ディアルトの全身が大きく揺れる。

 咄嗟にレンがスピードを落として高度を下げると、そこで動きを止める。

「ディアルト!大丈夫か?」

「手が滑る・・・ちょっと降りられるところがあったら降りてくれ。」

「わかった。」

 とはいっても、さらに雪と風は強くなり、吹雪の状態になっている。
 着地点の確認ができない。木々の上に雪がかぶっている状況。地面にかなりの雪が積もっているが、よくわからない。

「少し進むよ。我慢して。ここで降りると方向を見失いそうだ。」

「任せる。雪が目に入って目が開かない。」

「よし、急ぐよ。目はつぶっていいから、絶対手を離さないでね。」

「おう!」

 ディアルトがぎゅっとレンの足を握る手にちからを込める。

 それを少し足を振って確認したレンは、雪を払うために自分の羽を大きくバタバタバタと強く羽ばたかせると、できるだけ降下した状態で、吹雪の影響を受けないように、山肌や大きな木のそばを通りながら先を急ぐ。

 それでもさらに吹雪が強くなると、レンの視界も奪われていく。

「あ、あそこがいい。ちょっと休憩しよう。」

 レンが滑空して急降下すると、そのまま剥き出しに開いていた穴に入りこんだ。

「何かいるかもしれないから警戒して!」

 レンがその洞窟の入り口でディアルトを下ろすと、大きく羽を広げて外からの雪の侵入を阻んだ。


「はぁ、温かい。助かった。」

 ディアルトが自分のからだに積もる雪をパンパンと払うと、ドスンと背負っていた火薬玉の箱を地面に置いた。
 レンの背中の鳥雀蜂の巣はジワジワと暖かい空気を生み出している。

 それにディアルトが両手をかざして温まる。

 洞窟の外では、さらにさらに吹雪の勢いが増している。

「これは無理だ。ちょっと様子を見よう。」

「そうだね。」

 洞窟の奥は深く見えない。でも松明の様な明かりを持っておらず、探索することもできなかった。
 レンが外を見張るように入り口を羽で塞ぐと、背中で赤くボワァーっと鳥雀蜂の巣が光り、暖かな放射熱が発せられている。

 ディアルトがレンの背中に抱き着くように接すると、全身にその熱を感じて笑った。

「はあ、予想以上の大変さだね。」

「本当にね。ちょっと雪が収まるまで待とうか。」

 ディアルトがからだをピクっと動かすと、身構えた。

「今、洞窟の奥から何か音がしなかった?」

「確かになにか聞こえた。」

 レンがうなずく。

「冬眠中の熊とか。襲われたら困るよね?」

「そりゃあね。」

 静かに洞窟の入り口付近から、暗闇で見えない奥深くをじっと見つめる。

「あの、誰かいますか?!」

 ディアルトが細い声で、小さく洞窟の奥の方へと声を響かせる。

 ドキドキしてその答えを待つが、何も反応はない。

 少し安心すると、温かい洞窟の奥の方へ少しだけ移動する。

 入り口から離れた奥の方が断然温かい。吹雪がぴゅーと洞窟の中へ入り込むと、途端に凍えるが。

「雪止むかな。無理かな。」

 ディアルトが皮の手袋を外して指先に息を吹き替えると、指先がすごくジンジンする。

「少し弱まったところで飛ぼうか。翼はもう大丈夫。ここからアイスレリアは近いはずだから、一気に行こう。」

 レンが洞窟の中で翼をバタバタと羽ばたかせると、砂や埃が大きく舞った。小さな生き物がビクリとして洞窟の奥へと逃げていく。

 それから間もなく、僅かだが降雪が穏やかになる。

「よし、迷ってる暇はない、行こうレン!」

「一気に行くよ!」

 ディアルトが皮の手袋をぎゅっと強くはめ、火薬玉の箱を背負うと、洞窟の外へ飛び出して両手を空に向ける。

 乾いていない手袋は不快に手がジンジン痛くなる。

 洞窟内でレンが強く大地を蹴って軽く助走をつけて飛行すると、再び洞窟を出る間際で強く蹴り上げて、勢いよく空に舞った。

 ディアルトがタイミングよくレンの足を掴む。

 すぐに体に雪が積もる。

 瞬く間に上空に舞い上がると、直ぐに見えなくなった。



「話す竜か、初めて見た。」

  洞窟の中から女性の声が聞こえる。

「アイスレリアに向かうって言ってたから、反イルエスタね。北方の仲間みたいよ。どうするの?」
 
 別の女の声が静かに聞こえる。それに合わせてカリカリと何かを記す音。

「反イルエスタって、じゃあ、仲間じゃん。」

「あのね、イルエスタの王女がよく言うわね。」

「なに、うちらは偵察が目的だ。このままじっとしていよう。寒いし。疲れたし。白い竜を見れたからいいことがありそうだ。」

「いいことって。あのね。」

「いいこと、いいこと。二番目の王子がコテンパンにされないかな。」

「あのね。」

その二人は、しばらく洞窟内で待機を続けた。
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