炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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7 雪原の幕舎

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「あの、お待たせしました。うおぁ・・・」

 強い吹雪が周囲を覆っている。わずかな距離しかないはずの目の前の兵士も視認できない。

 ディアルトが足を深い雪に捕られて転びそうになり、箱をドスンと落とすと、それを慌ててフルエンサが周辺の兵士に抱えるように指示をする。そしてさっそく幕舎に運び込み開封させると、急ぎ分担して前線へと運ばせる。

「すみません・・・」

 慌てるディアルト。

「火薬玉だから濡れたら使えなくってしまう。まあ、サンアルトであれば水濡れ対策を心配する必要も無いだろうが。どんなことでも注意に注意を払うことは戦場では特に重要なこと。よく届けてくれた。」

 フルエンサがニコっと笑うと、ディアルトとレンに頭を下げた。

「サンアルトから君たちのことは聞いているよ。私は総隊長のフルエンサだ。火薬玉を依頼させてもらった。」
 ディアルトとレン、両方に順番に視線を合わせて笑う。

「はい、あ、あの、ありがとうございます。届けましたので、ここに名前を書いてください。」
 フルエンサが差し出された紙に丁寧に受領した旨を記載すると、すぐに戻ろうとするディアルト達を止める。

「これからもっと吹雪が強くなる。少しここで休んでいきなさい。」
 たしかに先程よりもっともっと風が強くなっている。雪も大きく濃くなっている。

「どうしようかな、でも簡単に止みそうも無いから、戻ろうかな。」

「うん、まあ、飛べない風ではないかな。重い荷物も無くなったし。」

 ディアルトとレンが顔を見合わす

「これからもっと吹雪が強くなる。それからすぐに雪はかなり弱くなる。それから帰ってもいいだろう。」

「え?天気がわかるの??」

「それでは、その話をしようか。こちらへおいで。」

 フルエンサが周囲の兵士達にあれこれ指示を飛ばしながら、手招きをして幕舎へと誘うと、素直にそれに従った。

「あの、その動物もこの中に?」

 幕舎を護衛する兵士がレンを見て驚く。

「そうだ。この少年の友達だ。」

「・・・へぇ。」

 珍しいものをじっとみる表情で兵士がレンに顔を近づけると、レンが大きく口を開けて甲高い雄叫びを上げた。

「僕は見世物じゃないよ。」

 雄叫びに驚いた兵士は、動物が言葉を話したことにもう一度驚くと、そのまま後ろにひっくり返った。


 幕舎は簡単な木製の太い柱と細く長い木、雪で作られており、とても暖かかった。
 幕舎の奥にフルエンサが腰を下ろすと、ディアルトに甘く温かいミルクを差し出した。

「君はなにを飲むのかね?」

 フルエンサが、ディアルトの隣でキョロキョロして落ち着かないレンをじっと見つめる。

「えっと、ディアルトと同じものが。」

「そうか。どうした?」

 同じ甘く温かいミルクを少し幅の広い容器に注いでレンの前に差し出す。

「なんか、こんなディアルトと同じようにしてもらうことって無くて。いつも表で待ってろって言われたり、鎖につながれたり。追い払われたこともあったから。アルト村の人達以外だと初めてかも。」

 フルエンサが笑う。

「姿というのはそこまで重要なのであろうか。人である、竜である、そんなことで区別をする必要が私には感じられない。現にこうして人と人は争っているわけだからな。」

「は、はあ。」

 ディアルトが誤魔化すように笑うと、ミルクをチョビチョビと口に含んだ。

「人も、竜も心が通じていれば、姿は関係ないと。まあ、頭で考えてわからなければ、これからお互いに実感していけばよいのではないかな。」

「はい、あの、ありがとうございます。」

 なんか良い言葉を聞いたと考え込んだすぐ後に、勉強みたいで面倒と感じたディアルトが頭を下げる。
 その隣で、レンが息をのんでじっと考え込んでいる。
 その若い反応をフルエンサが楽しむ。

「そうそう、天気だったね。」

 フルエンサが合図をすると、フルエンサと同年齢ぐらいの老女が色々な記号の書かれたカレンダーのようなものを持ってきてそれを広げた。

「簡単に言うと天気を予想するには、色々なものを観察するのだ。空・雲・風、鳥や動物の動き、温度の上昇降下、あとはこれだ。」

 それは、ガラスでできた4つの足のある球形の容器の中に着色された水が半分程度入れられ、その容器の下方からその水が往来できる細長い管が上方に伸びている、なんとも不思議な形状のものだった。

「これが水気圧計、この細い管の部分の水の位置で気圧というのがわかる。それも重要な情報の一つだ。」

「綺麗なガラスの製品だね。すべて均等の厚さで歪みがない。接合部も水の往来を一切邪魔しないように丁寧に作られている。これを製造した人は達人だね。アルト村でもガラス細工は作るけどこんな精密なのは作れない。」
 ディアルトが水気圧計をじっとながめると、明るい幕舎の入り口側に向けて透かしてじっと眺めた。

「ほう、君はこの水気圧計をガラス細工として見るか。実に興味深い。」

「あ、で、これで何がわかるの?」

 横からレンがディアルトの持つ水気圧計を覗き込んだ。

 そこに、先程の老女が持っていた記録紙を床に広げた。

「はいはい、このオババが教えましょう。細長い管の水面が下がったときは、晴れることが多い。上がるとその逆です。それだけでなく、空や雲、風の強さや湿った感触など、色々な条件を毎年毎年複数の場所で記録して、過去の天気と付け合わせて予報します。」

 ディアルトからみたら、その記録紙に記されたマークは子供の落書きにしか見えないが、日付を見ると毎日毎日繰り返し丁寧に記載されている。

「彼女はもう70年は記録を続けていて、高確率で天気の細かなところまで予想することができる。我らの戦略はこの天気図を元に立てることも少なくない。貴重な情報だ。しかもその先代から、ずっとその記録紙は受け継がれている。まあ、このオババこそが天気を予報する最も重要な情報だな。」

 フルエンサが誇らしげに笑うと、老女が照れた表情をして胸を張る。

 その間にも、入れ替わり兵士が戦況を伝えに幕舎に入ると、その都度、細かい指示を出す。

 こうして話している間にも、徐々に外の雪が弱まっていく。
 外の様子を眺めるために幕舎を出た。

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