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9 研究所の賑わい
しおりを挟む翌日。
いつものように研究所では、助手とサンアルトがバタバタしながら、時には何か激しく議論しながら研究が進んでいた。
それにしても、直接触れることのできない火の石は厄介である。
厚い皮の手袋を用いれば、一瞬であれば触れることができるので、それでゆっくりと別の場所へ移動させていった。
鳥雀蜂の巣であっても、水分が飛んでしまうとボロボロと壊れてしまった。
それでも、火の石のちからを利用した研究ができるということだけで、そんな苦労は吹き飛んでしまう。
明かに今までとは違う活気が、研究所内を包んでいた。笑顔が膨らんでいる。
それを見て満足すると、ディアルトはまた、山の麓にレンと一緒に飛び立って行った。
「見たかいレン!僕の発見でみんながこんなに喜んでくれたんだ。」
上空でレンにぶら下がりながら、笑うディアルト。
上機嫌でからだを振って足をプラプラさせた。
「みんな幸せになるといいなって思うんだ。今日も原石を見つけよう!」
「おう!」
いつもの山の麓に到着すると、早速、ディアルトとレンは発掘を行った。
周囲を見回すと、何かいつもと違うことに気づく。
レンがトントントンと等間隔で飛び跳ねるように移動すると、そこら中を駆け回った。
「ディアルト!なんか、穴の数が増えてないか?」
レンが叫ぶ。
「・・・気のせいじゃないか?」
実はディアルトも同じことを感じていた。
でも、それは嫌なことだった。
発掘を進めたが、集中できず、効率が悪い。
すぐにディアルトが手を止める。
「誰か来たのかな?」
尾で発掘しているレンに囁くとバッと周囲を大きく素早く見回す。
誰も居ない。
「・・・今日は帰るときにこっそりと穴の数を数えて帰ろう。それと目印も作っておこう。」
静かな声で耳打ちするディアルト。うなずくレン。
今日は、暗くなる前に帰ることに決めた。
石をいくつか重ねて少しの振動で崩れるような仕掛けを数か所作る。今日は全く作業が手につかなかった。
レンにつかまって上空で羽ばたくと、全体の穴の形とだいたいの穴の数をすばやく数えた。そして、周りに誰かいないかを警戒して上空を10回旋回すると、村へと戻っていく。
どうしても、山の麓から視線が離れない。
一度戻って上空を旋回し、怪しい人がいないことを確認すると、ようやくアルト村へと戻って行った。
アルト村では、あわただしく研究は続いていた。
「戻ってきたらディアルトも手伝ってくれ!」
サンアルトの慌ただしい声が響く。
周囲で他の研究員もドタドタバタバタ走り回っている。
火の原石を使った研究が軌道に乗り、調子がいいみたいだ。忙しいながらも、研究員やその周りの人たちも笑顔で作業を進めている。
あらかじめセイシュ・イシュの歴史書の研究者であるジジの想定の元、火の原石を入手した場合の装置の活用方法を想定していたこともあり、迷うことなく開発が進んでいく。
ディアルトもコードの接続部をブラシでぴかぴかに磨くと、装置へと設置した。
「何を作っているの?」
ディアルトが研究員に問いかける。
「内緒だけど、村全体が冬でも暖かくなるものと、狩が楽になる道具さ。」
研究員がウキウキした表情で図面に色々と書き足して、修正して、また書き直して、ようやく性能を合格させると、装置に火の石をいれてエネルギーの転換を行った。
「みんなが幸せになれるものだね?」
ディアルトが笑って聞いた。
「そりゃそうさ。すっごいものだよ。」
研究員も笑顔で答える。それだけでもディアルトは満足だった。
小さい頃から手伝いをしているディアルトは、すべての研究員と仲良しだった。
それでも、いつもドンヨリした暗い表情で悔しそうな顔をして髪の毛をかきむしっていた研究員が、検討会という名の反省会で泣きそうになりそうな研究員たちが、こんなに輝いて作業しているのは、初めてかもしれない。
すごくうれしかった。ちょこちょこと動き回りながら、できる限りのことをしていると、自分まで嬉しくなってくる。
「今日は遅くなるから、先寝てろ!」
サンアルトの声が響く。
「まだ大丈夫だよ!」
「寝る子は育て!明日も原石の探索頼んだぞ!」
「あ、そうか。やっぱ寝る。」
ディアルトが大きなあくびをして、他の研究員に挨拶をして帰って休んだ。
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