炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

文字の大きさ
10 / 62

9 研究所の賑わい

しおりを挟む

 翌日。

 いつものように研究所では、助手とサンアルトがバタバタしながら、時には何か激しく議論しながら研究が進んでいた。

 それにしても、直接触れることのできない火の石は厄介である。

 厚い皮の手袋を用いれば、一瞬であれば触れることができるので、それでゆっくりと別の場所へ移動させていった。

 鳥雀蜂の巣であっても、水分が飛んでしまうとボロボロと壊れてしまった。

 それでも、火の石のちからを利用した研究ができるということだけで、そんな苦労は吹き飛んでしまう。
 明かに今までとは違う活気が、研究所内を包んでいた。笑顔が膨らんでいる。

 それを見て満足すると、ディアルトはまた、山の麓にレンと一緒に飛び立って行った。

「見たかいレン!僕の発見でみんながこんなに喜んでくれたんだ。」

 上空でレンにぶら下がりながら、笑うディアルト。
 上機嫌でからだを振って足をプラプラさせた。

「みんな幸せになるといいなって思うんだ。今日も原石を見つけよう!」

「おう!」

 いつもの山の麓に到着すると、早速、ディアルトとレンは発掘を行った。
 周囲を見回すと、何かいつもと違うことに気づく。

 レンがトントントンと等間隔で飛び跳ねるように移動すると、そこら中を駆け回った。

「ディアルト!なんか、穴の数が増えてないか?」

 レンが叫ぶ。

「・・・気のせいじゃないか?」

 実はディアルトも同じことを感じていた。

 でも、それは嫌なことだった。

 発掘を進めたが、集中できず、効率が悪い。

 すぐにディアルトが手を止める。

「誰か来たのかな?」

 尾で発掘しているレンに囁くとバッと周囲を大きく素早く見回す。
 誰も居ない。

「・・・今日は帰るときにこっそりと穴の数を数えて帰ろう。それと目印も作っておこう。」

 静かな声で耳打ちするディアルト。うなずくレン。

 今日は、暗くなる前に帰ることに決めた。

 石をいくつか重ねて少しの振動で崩れるような仕掛けを数か所作る。今日は全く作業が手につかなかった。

 レンにつかまって上空で羽ばたくと、全体の穴の形とだいたいの穴の数をすばやく数えた。そして、周りに誰かいないかを警戒して上空を10回旋回すると、村へと戻っていく。

 どうしても、山の麓から視線が離れない。

 一度戻って上空を旋回し、怪しい人がいないことを確認すると、ようやくアルト村へと戻って行った。

 アルト村では、あわただしく研究は続いていた。

「戻ってきたらディアルトも手伝ってくれ!」

 サンアルトの慌ただしい声が響く。
 周囲で他の研究員もドタドタバタバタ走り回っている。

 火の原石を使った研究が軌道に乗り、調子がいいみたいだ。忙しいながらも、研究員やその周りの人たちも笑顔で作業を進めている。

 あらかじめセイシュ・イシュの歴史書の研究者であるジジの想定の元、火の原石を入手した場合の装置の活用方法を想定していたこともあり、迷うことなく開発が進んでいく。

 ディアルトもコードの接続部をブラシでぴかぴかに磨くと、装置へと設置した。

「何を作っているの?」

 ディアルトが研究員に問いかける。

「内緒だけど、村全体が冬でも暖かくなるものと、狩が楽になる道具さ。」

 研究員がウキウキした表情で図面に色々と書き足して、修正して、また書き直して、ようやく性能を合格させると、装置に火の石をいれてエネルギーの転換を行った。

「みんなが幸せになれるものだね?」

 ディアルトが笑って聞いた。

「そりゃそうさ。すっごいものだよ。」

 研究員も笑顔で答える。それだけでもディアルトは満足だった。
 小さい頃から手伝いをしているディアルトは、すべての研究員と仲良しだった。

 それでも、いつもドンヨリした暗い表情で悔しそうな顔をして髪の毛をかきむしっていた研究員が、検討会という名の反省会で泣きそうになりそうな研究員たちが、こんなに輝いて作業しているのは、初めてかもしれない。

 すごくうれしかった。ちょこちょこと動き回りながら、できる限りのことをしていると、自分まで嬉しくなってくる。

「今日は遅くなるから、先寝てろ!」

 サンアルトの声が響く。

「まだ大丈夫だよ!」

「寝る子は育て!明日も原石の探索頼んだぞ!」

「あ、そうか。やっぱ寝る。」

 ディアルトが大きなあくびをして、他の研究員に挨拶をして帰って休んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

処理中です...