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10 焦燥
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いつもより早く、夜が明けたすぐに、レンと一緒に山の麓へと急ぐ。
そして上空で旋回した。
晴れた強い日差しは、まだ早い低い位置からでも、その眼下に広がる大地をくっきりと浮かび上がらせる。
「明らかに穴が増えてる。だれかが掘ってるんだ。」
レンが上空で旋回して怪しいところはないか、誰かいないかを確認してから、ゆっくりと着地した。
「どう?誰か居た?」
興奮したような、怒ったような表情でレンに問いかけるディアルト。
首をふるレン。
「誰だろ・・・悔しいな・・・父さんたちがあれだけ我慢してるのに・・・。この穴を掘ったやつが何か発見してたら嫌だな・・・」
目に涙を浮かべながら掘るディアルト。
頭がもやもやして集中できず、周囲ばかりが気になる。
それから無言のままずっと発掘を進めた。
いつの間にか周囲が暗くなる。結局今日も何も見つからなかった。
自分が見つからなかったのに、誰かが大発見していたらと思うと気が気でない。
「あーーーーーーーーーーー!!!!イライラする!!!!」
その場でディアルトが大声で叫んだ。
「何なんだよ!誰なんだよ!」
「ディアルト、落ち着こう。」
「落ち着いてられるか。誰かに先を越されたらどうするんだ。」
「うちらがこれだけ探しても見つからないんだ。そう簡単には見つからないよ。」
「・・・そうだったらいいけど。誰かが掘り起こしたからうちらが見つからないんだったらどうする?」
「そりゃ、確かにね。」
「なんか、もやもやが止まらないんだよ。」
「・・・それは一緒だけど。」
そのまま、無言のまま地面を雑に掘っていく。
結局何も見つからずに、それにまたイライラが増してからだを震わせると、仕方なく、ゆっくり飛行して、とぼとぼと村へ帰る。
何も発掘できないまま、数日が過ぎた頃、村では待望の試作品一号が完成していた。
それは、火の原石をエネルギー源とした村を暖める巨大な加熱装置であった。
北方のアイスレリア程ではないが雪の多いアルト村を、火の原石のちからを増幅させた発熱機が複数の配線で5台繋がれて赤々と過熱し、断続的に広範囲を暖めている。
その熱で物を焼いておいしく食べるコーナーを作ったり、雪解け水を流し込んで蒸発させてその蒸気でタービンを回す簡単な蒸気機関を作成し、それをプロペラにつないで風を発生させて発熱機で発生させた熱を広範囲に流し込んだ。
それを一目見ようと、村のみんなが集まっていた。
「これはすごいね。」
レンが熱風に対して羽で風を返すと、もわっとした熱気に顔を震わせる。
ディアルトも雪の冷たさを感じる場所から、ぐーっと熱風まで走るとその暖冷差に両手を広げて笑った。
「うわぁ。すげー。こんなことできるんだ。」
レンとディアルトが顔を見合わせて笑うと、周りを見回した。
誰もが同じように興奮している。
とくに研究員たちは自分たちの発明品を説明したくてたまらない模様で、近づく人たちに身振り手振りで話しかけている。
ディアルトはじっと人々を眺めていた。
嬉しいと同時に誇らしかった。
試作品二号機は、火の原石のエネルギーを放出する銃で、弾数を気にすることなく、発射できる優れものだった。
火の原石のエネルギーを濃縮させて高効率で蓄積する装置を発明しただけでなく、小型化したことが、携帯できる武器へと発展させた。
火の原石による無限のエネルギー利用が可能となるのではと、喜びが溢れていた。
「みんなが幸せになってる!」
「そりゃそうじゃ。原石は人を幸せにする。ワシの研究通りだ。」
ジジが腕を組んで笑った。
ディアルトは嬉しかった。本当に嬉しかった。
それと同時に、もし山の麓にまだ他の原石が埋まっていたら、ほかの人に横取りをされて、独り占めされたらどうしよう。
そう思うと、妙な焦りがディアルトを蝕んでいた。
誰かが自分たちの山の麓に入りこんでいるとわかってから、ずっとそのことが頭を離れずに、モヤモヤした感情が心を覆っていた。夜眠っていても夢に出て目が覚めてしまう。もう精神的に限界が近かった。
ふらふらっと村の外れまでレンと歩く。
「レン、夜にこっそりと見回り行ってみない?」
「それはだめだよ。ディアルトのお父さんとお母さんに怒られちゃう。」
「ちょっとだけ。すぐに戻ってくるから。」
「・・・でも、なにかあったら困るし。夜は怖いよ。」
「お願い。空から見るだけでいいから。」
「夜は方向が少しわからなくなるかもしれないし。」
「レンは気にならないの?誰か大勢で来ているかもよ?」
「そりゃ、気にはなるさ。」
「じゃあ、行こう。」
「・・・」
「お願い。」
「じゃあ、空から見るだけだよ。危険なことはディアルトのお父さんとお母さんに怒られるからね。」
「わかった。約束。今日の夜、表でこっそり抜け出すから。」
「はあ・・・確かに気になっていたから。危険なことは無しだよ!」
「約束だ。」
リヴィエラがぎゅっと緊張する心を昂らせると、使命感のような、悪いことをするような、何とも言えない感情を目を瞑って抑えた。
その感情の中でも、色々な意味での怖さが最も強かった。
「どうしよう。知っている人が犯人だったら。どうしよう。」
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