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11 月影に潜む者たち
しおりを挟む皆が寝静まった頃、こっそりとディアルトは家を抜け、あらかじめ約束していた村の外れまで移動するとレンを呼んだ。
そして周囲を気にしながら静かに歩き村を離れると、山影に隠れてから一気に空に舞い上がり山の麓へと向かった。
いつもよりも高度を高く保ち、闇に紛れながら地上から視認されないように飛行していく。
月の光が眩しい。こんな日に限って雲が無く地上がよく見えてしまう。
逆に地上からも、こちらが見えやすいだろうか。それとも鳥に見えるだろうか。
「さあ、もうすぐ到着するよ。月が明るいし、風も無いから快適だね。」
レンがスピードを落とすと、地上を覗き込む。
「そうだね。こんなことのためじゃなければ、楽しかったのにね。」
山の麓へ到着すると、高度をまだ高い位置に保ったまま、上空を旋回して眺めた。
所々陰になる部分があって、その影が風で揺れる度にディアルト達はビクっとしてしまう。
気を集中し、わずかな動きも見逃さないようにじっと周囲を監視した。
「あれだ!」
ディアルトが指差すと、レンもそれに気づき、少し距離を取るように少し離れた。
「本当に誰かいた。一人かな?」
「そうだね。どうしよう。誰かわからないかな?」
「危ないことはできないよ。」
「でもさ、ここまで来たんだから、誰か知りたくない?」
「そうだけど。」
「レンだったら、いざとなれば、空飛んで逃げられるよね。どうにかなると思うけど。」
「まあ、確かに逃げるだけだったら。じゃあ、何かあったらすぐに逃げるから、それだけは忘れないで。」
ディアルトが大きくうなずいた。
「よし!行こう!」
ディアルトの合図でレンが一直線に降下を始めた。
なるべく、音を立てないように、その怪しい影とは少し離れた位置に着地し、岩陰に隠れた。
そして、ゆっくりと時間をかけて、徐々に徐々に近づいていく。
影は2つ。
本当に月明かりが綺麗だった。
その光はその影を覗き込むのに十分だった。
「なんで・・・?」
無意識にディアルトが隠れるのをやめて一歩前に踏み出す。
どこかで見た姿。
それは残念ながら見慣れた姿。
いきなり現れたディアルトに驚いた二人は、何を思ったのか、持っていたツルハシでディアルトに襲い掛かる。
驚くほど冷静にレンが羽ばたくのを待つとその足につかまり、即座に上空に移動すると、地上で焦るその姿をじっと見つめる。不思議と焦りや憎しみは無い。
地上から、赤い炎が複数撃ち放たれると、レンは強く羽ばたいて高度を上げ見失わないようにターゲットを定めながらも素早く回避行動をとる。
小さい頃から狩が好きだったディアルトは、いきなり襲い掛かってくる獣とも幾度ともなく対峙していた。
その獣に襲われる感覚と全く同じだった。
言葉が通じないだろうか。
意志が通じないだろうか。
地上ではどこかへ急ぎ駆け出す2つの人影が見える。
「追いかけよう!どうしてこんなことをしたのか、聞かなくちゃ。」
「駄目だ。これ以上は本当に危なくなるかも。ディアルトのお父さんとお母さんに怒られる。」
「でも!!」
「とにかく、村のみんなに知らせよう!」
「そうか。そうだね。ごめん。帰ろう。急いで。」
「わかった。あの二人より先に村に戻ろう!」
そして、大急ぎで村に戻ると、ぐっすりと眠っているサンアルトを叩き起こして、今見てきたことをガーっと一気に説明した。
なんか急に徐々に興奮し出したディアルトに対し、サンアルトは冷静にじっと聞いていた。
「そうか。」
小さくつぶやくと、ため息をついて、下を向き考え込んだ。
その日、サンアルトとディアルトは寝ずに、村で待ったが、二人が戻ってくることは無かった。
翌日になっても、翌々日になっても、戻ってこなかった。
ディアルトはレンと一緒に村の周囲を上空から探した。
木々が少なく、岩が多い土地である村周辺では、近くに潜伏していれば容易に見つけられそうであったが、どうしても見つけることはできなかった。もう、遠くへ行ってしまったのだろうか。
正直、会いたくない気持ちと、会って理由を聞きたい気持ちが半分半分。
他の研究員たちは動揺を隠せない。ずっと一緒に研究してきた6人の仲間である。
いきなりその中の2人が姿を消した。多分原石を勝手に探しに行って、今頃それをどうにかしているのだろう。
「今日はここで終わろう。明日は休みにする。少し気持ちを入れ替えよう。明日は研究のことは忘れてゆっくりしてくれ。」
サンアルトが周りを気遣い少し早く研究を切り上げた。
「いや、できます。時間が惜しい。」
一人の研究委が気合を込める。
「だめだ。そんなうわの空で研究して怪我をされても困る。」
サンアルトは強制的に今日の作業を終わらせると、さっさと自分の部屋へと戻って行った。
当然、研究員を束ねる立場であるサンアルトも動揺をしていた。
興味本位や研究の対象として原石を探しに行ったのであれば、それは理解ができた。
「・・・」
だが、もっと別の考えがあるとしたら、それは村の危機だった。
村を捨て逃げる準備もひそかに進めた。
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