炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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13 赤く染まる翼と少年の旅立ち

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 ゆっくりとディアルトが目を瞑ると火の原石を取り込んだ銃からうっすらと熱を感じる。
 銃から火の原石を取り出した。

 火の原石は、既にすっかりと暗くなったアルト村に燦燦と強い輝きと熱を与える。

「おい、それは、それがそうか!!」

 イルエスタ兵の目の色が変わる。

「火の原石を手に入れれば褒美は望むがままだ!一生遊んで暮らせるぞ!!」

 銃を激しく乱射させ、その原石を手に入れようと、我先にと一斉に駆け出す。

 ディアルトが火の原石を持っている右手から焦げ臭く、黒い煙が立ち昇る。

「火の原石よ!お前があれば皆が幸せになるんじゃなかったのか!」

 ディアルトの右手が燃え上がり、炎が巻き起こる。

「火の原石よ!お前があれば皆が喜ぶんじゃなかったのか!」

 ディアルトの全身が燃え上がり、周囲に炎が巻き起こる。

 イルエスタ兵はその炎の中に浮かぶ黒い影に足を止めると、その恐ろしさに逃げ出した。
 激しい炎の中からディアルトの声だけがこだまする。

「火の原石よ!お前のちからが欲しい。母さんを殺し、父さんを奪ったこの者達に死を!」

 激しい炎が立ち上る。

 ディアルトのからだは焦げ、そのからだは形をすでに保っておらず、灰になっていった。
 巻き起こる火柱が重なり合い、さらに激しい炎を周囲にまき散らす。


『火の原石は私のからだの一部。それをお前に与えるのであれば、私の下僕として一生尽くしてもらおう。それでも良いのか?』

「この者達を殺せるのであれば!」

『おまえの一生を私に捧げると誓うのだな?』

「誓う!」

『であれば契約しよう。これからお前は私の体の一部だ。』

 ディアルトの灰になったからだが宙を舞い、一箇所に集まると、元と同じ形を作り出した。

 それを見たイルエスタ兵は亡霊を見たかのように恐れ一目散に逃げ出したが、ディアルトはそれを追い払うように、両手を兵士のほうに向け、力を込めた。

『消えろ!』

 すると、両手からどす黒い、高温の炎が噴出し、兵士を一瞬のうちに蒸発させる。

 その高温の炎はそこから上空へと渦を巻いて舞い上がり、それがいくつかに分離して地上へと再び加速して落下する。

 落下した炎はその周囲を黒く変色させて生物を消滅させていく。

 ディアルトが急にからだを停止させると、その場に倒れこんだ。
 足元には、血で真っ赤に染まったレンも倒れている。


『約束は守ってもらう。今のお前では力不足だ。その竜とともに火の使い方を学べ。そして立派に成長したあかつきには火の守護者マルスを継いでもらう。おまえはこれを必要な時に思い出す。』

 頭の中で不思議な声が聞こえた。

 だが、身体はもう動かなかった。

 何も考えずに目を瞑った。

 怒り、後悔、疑問、悲しみ、驚き、そして満足。

 色々な感情が同時に現れる。

 無感情のまま、目を瞑った。

 もう、起きないかもしれない、そんな予感もあった。
 でも、それもいいかと思った。


 どれくらい経過しただろうか。

 周囲を見回すと、アルト村の人たちも、何事も無かったように目を覚ました。
 ディアルトの母も、起き上がり、周囲を見回している。

 だが、いくら探しても、サンアルトや研究員たちは見つからなかった。

『アルト村の者はすべて死んだ。火の原石のちからで蘇った。もし、私のちからが弱まれば、この村の者達は再び死ぬ。それだけでも、お前は私を守る必要がある。』

 ディアルトの頭の中に響いた声、いや、レンにも聞こえているようだ。

 村の人には聞こえていない。

 ディアルトは自分の胸に手を当てた。心臓の鼓動をドクドクと感じた。
 温かい。
 
 生きている。
 
 直感として、消滅した火の原石は、自分と融合したということを理解していた。
 それを理解した時に、すべては現実だったと悟った。

 
 泣いた。

「じゃあ、父さんたちを助けてくるよ」
 
 戸惑うことなく、すぐに旅立つこと決めた。
 
 周りでは誰も何が起きたのか理解できない顔をしている。
 
 母やその村の人たちの無事を確認できた。
 
 妹のチャルは見当たらない。どこかに隠れているのだろうか。

 
 すべてが夢の中、感情無く受け入れることができていた。
 
 そういうものだと自分に言い聞かせる。
 
 そうなのだという決定事項をそのまま受け入れる。
 
 もう、どこかすべてが過去として、一度終わったのだろう。
 
 その考えが一番しっくりくる。
 
 ディアルトは小さく息を吐いた。
 
 それを自分の両手で受け止める。
 
 一瞬だったが、その両手が感じた温かい感触がまだ生きている証拠だった。

 
 ジジがディアルトにゆっくりと近づく。

 「何が起きたのかは覚えているか?理解できているか?」
 
 ディアルトが首を振る。

 「だろうな。とりあえず今は忘れていい。必要な時に思い出すだろう。」

  ディアルトがうなずく。

  周りを見回すと、すべてが焼け焦げ、破壊されていた。
 
 ゆっくりとレンがディアルトに歩いて近づくと、足元にぐるっと丸まってからだを休ませた。

 「すぐにイルエスタの追撃があるだろう。我らはここの地下に身を隠す。ワシとサンアルトしか知らん地下道だ。そしてそれが去ったらイルエスタから離れた土地で隠れて暮らす。これくらいの人数であれば受け入れてくれる村があるだろう。お前はサンアルトを頼む。」

 そして、地図と一通の手紙も渡す。

「村の者には私から説明する。ともかく、すぐにまた包囲されるだろう。ディアルトも、ここから移動するにはできるだけ早い方がいい。」

 ディアルトがうなずく。

 レンがゆっくりと起き上がると、ディアルトの横にぴったりとくっついた。

「お前は、お前にしかできないことがある。」

 ジジが食料や旅に必要なものが入ったかばんをディアルトに差し出す。

 うなずくディアルト。

 そこにディアルトの母親ニルム=シンが近寄る。

 色々怪我をしているのだろうか。それとも他の要因だろうか。動きがぎこちない。

「ディアルト・・・」

「母さん・・・無事で。父さんを助けたらまた、一緒に暮らそう!」

「気を付けて。また、絶対みんなで暮らしましょう。」

「当然!すぐに戻ってくるよ。」

 言うと、両手を挙げて駆け出した。白色だった身体が赤に染まり、一回り大きくなったレンが上空に舞うと、同時にその足にディアルトが握り、上空へと舞った。一度大きく旋回して暮らした村を旋回し、目に焼き付ける。

 今まで何度も何度も上空から見たアルト村とは全く異なっていた。

 もう、悲しくはなかった。

 ここから、すべてが始まる。そんな予感がした。

「レン、行こう!」

「よし!」

 なぜか身体が一回り大きくなって、赤色に染まったレンが羽ばたくと、今まで以上に力強い推進力で風を切って飛び出した。

 捕まった父や研究員を助けるため、イルエスタ王国に向かって道を確認しながら飛んでいく。

 一度後ろを振り向いた。

 母が大きく手を振っていた。

 一度小さく笑う。

 多分見えないだろう。

 でも、それを感じてくれるだろう。

 それだけでよかった。


 その後、ジジはアルト村で確認できた全員をすぐに地下道へと導くと、固く外との繋がりを封じた。

 ジジは足を撃たれ、動けずに身を隠しながらも、事の一部始終を見ていたという。ディアルトに起きたことも。

 その隣にはディアルトの母。サンアルトと研究員4名が連れて行かれ、ディアルトが火の原石と融合し、村人たちがなぜか生き返ったこともすべて伝えた。

「ディアルト無事で・・・」

 涙ぐむ母をそっと励ますジジと村人。

 様子を探らせた若い衆の偵察では、まだ次の追撃は来ていないようだ。

 少し悩んだが、このまま闇に紛れるように密かにジジの友人がいる村へと移動を開始した。

 仮に原石の発掘が始まったら逃げられないかもしれない。

 名残惜しそうに振り返る村人を急かすように移動する。

 ジジが空を見つめる。


「サンアルトたちアイラの民に神がちからを貸したのか、それともセイシュの民、ちからを失った火の民である私への神の・・・?いずれにしても神の干渉、時が動くのか?」

 夜の暗闇は今までとは全く違う黒。

 その闇は心まで闇で覆ってしまう。

 だが、その闇は空の星や月を輝かせた。


 星が流れた。それは地平線へと消えていく。

 この暗さだから見える物がある。


 それは希望と思えた。

 絶対希望だ。

 カリクティスの子孫であるシフィルが生まれ、セイシュの民が外の世界を知る同じ時代、それは決して偶然ではなかった。



 物語は動き出す。


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