炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

文字の大きさ
15 / 62

14 崖上の影

しおりを挟む
 低い崖から見下ろすように、高い位置から10人程度が細い脇道をトボトボと歩くのを見つける二人の女性。

「あれ?あれって二番目の部隊か。ボロボロだ。どこ行っても負けてるんだな。フムフム。爽快だ。」

 隣の女性がジッと何かを見つめる。

「気になるか?」

「あなたは気にならないの?」

「別に。」

 一度視線を外す。

「でも、二番目に取られるのも嫌だな。邪魔してこようかな。」

「私は無理よ。この高さを飛び降りたら死んじゃうもの。」

「私も死んじゃうかも。ね?一緒に跳ぼう。」

 一人がもう片方の手を握る。

「早く行かないと見失うわよ。」

「はいはい、じゃあね。王女使いが荒いね。」

 羽織っていた厚手のフードをもう片方の女性に渡して身軽になると、腰の小刀に軽く触れる。

 高い位置から崖に触れないように遠い位置まで跳ぶと、そのまま自由落下していく。

 着地の瞬間、胸にしまっていた赤い石を取り出して地面に強く打ち付けて割ると、そこから巻き起こった炎の上昇気流で自らの地面への衝撃を和らげる。

 そして何事も無かったかのように、その場に両手を腰に当ててじっと立ち止まり直立する。

「なんだ!お前は?!」

 急に周囲を覆う炎、空から現れた女性にその兵士達が驚くと、一斉に剣を握り襲い掛かってくる。

「はい、脇役が脇道でご苦労。」

 素早い動きで持っていた小刀を振り回して二人を倒すと、他の兵士は慌てた身振りで逃げだす。

「いやー、背中を向けて一生懸命逃げる姿、いかにも二番目の兵士ですなぁー。」

 その女性が大きく笑うと、置いて行かれた一人の少女に視線を移す。

「あの、ありがとうございます。」

「私ね、あの兵士たちの仲間なの。礼をされる筋合いもないのよ。」

 驚く表情をする少女。

「この場でおまえを食べてしまおうか!!」

 その女性が両手を広げて近づくと、怯える少女はペタリとしゃがみこんで、唇を噛み、目元に涙をためて、必死に泣くのを我慢する。

「まあ、今日のところは、これくらいにしといてあげるわ。立ち去りなさい。」

「帰り方がわからないの。」

 そこに遠回りをして崖を降りてきた女性が合流する。

「どこから来たの?」

「アルト村。」

 女性二人が目を見合わす。

「うん。困ったね。」

 両手を広げておどけた表情をする女性。

「他に行くところないのかしら?」

「アルト村に帰りたい。」

「ちょっと、ここからは帰れないの。他のところだったら送っていくから。」

「アルト村に帰りたい。アルト村に帰りたい。」

 ついに泣き出すその少女。

「そんなこと言ったって、もう無いところに帰れないぞ。」

 慌ててもう片方の女性が口を塞ぐ。

「じゃあ、連れて帰るか。」

「・・・仕方ないわね。でも、誰かわからないし、見つかると厄介かもよ?」

「そうか、じゃあ、こうしよう。」

 その少女の束ねた長い黒髪を左手で持つと、持っていた小刀で肩よりも高い位置でスパッと切り落とした。

「なにやってんの!?」

「変装。」

「あのね。」

「どうせ男たちなんて髪の色と長さでしか女を覚えてないんだ。これで十分な変装になる。このまま行くぞ。」

「偏見ね。」

 握った髪をそのまま空に投げ捨てると、パラパラと遠くへ飛んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...