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15 機械の匂う町シュラン
しおりを挟むディアルトが長年暮らしていたアルト村から目的地イルエスタまでの距離は、ジジから受け取った地図を見る限り、果てしなく遠い。
地図には、細かな地形まで記載されているため、この地図が正しいことを前提に迷わずにイルエスタに進むことはできる。
ただし、サンアルトや研究員達が、この長距離をそのまま休み無しでイルエスタまで連れていかれるとは考えられない。
かなりの速度でイルエスタの方向に向かって飛行したため、間違いなく追い越したという確信があった。
ディアルトが器用に空中でレンの足を片手で掴んでぶら下がり、もう片方の手で地図を広げる。
「どこかでたぶん休憩するはずだ。待伏せしよう。」
「だったら、ここかな?」
地図に記載されている比較的大きな町であるシュランで待ち伏せすることにした。
ここは流通の要となる地点であることから、サンアルト達を捕らえた兵士達も休むため寄るだろうと予想できて、また、ディアルトも以前訪れたこともあった馴染みのある町で知り合いもいるためである。
今回のアルト村の襲撃について噂が流れているかもしれないし、他の村でも同様なことがあったかもしれない。もしかしてディアルトへの追っ手が既に放たれているかもしれない。
その情報を収集するためにも知り合いを頼りたかった。
レンが大きく旋回してシュランへと急行すると、都市からはずれた付近の森に着陸してレンをここに残し、少し警戒しながらゆっくりとシュランに入っていった。
シュランには、父サンアルトに連れられて研究材料を購入するために何度か足を運んだことがあった。
特に親しくしている雑貨屋があり、その主人とは、毎回なにかしらの手土産を渡して色々話して、たまに宿泊したりと、とにかく仲が良かった。ディアルトが物心つく頃から知っている人物である。
今回もそこを頼ることにした。
シュランは人口2000人程度で、この周辺では最も大きな都市になる。
この周辺にはアルト村のように、人口が少ない村が乱立しており、そこから食料や生活用品、家具や農工具を購入しに来る者が広く集まる。
特徴的なのが配線やなんか難しい部品、頑丈そうな管、小さなよくわからないチップなど、機械部品について特化した店舗が集まるエリアがあり、それらの取り扱い量はおそらく地域No.1。遠くからも購入者が集うシュランの主要な産業であった。
新しい店が乱立し、さらによくわからない最新技術の何かが新しく販売されている。
どこか、金属のようなゴムのような独特な匂いが都市中に充満している。この機械部品等を目的に都市に訪れる商人は、どこか独特な人々が多い。
昼過ぎ。
ディアルトは混み合う道をゆっくりと、昔来た記憶を辿りながら歩いていく。
人が多い。どうしても自分を誰かが見張っているのではないかとビクビクしてしまう。
新しい店が多い。新しい道もできている。現在も建設中の区画も多い。とても広い。
まさに迷子の状況だが、昔の記憶と直感は頼りになる。
怪しまれないように、平静を装ってウロウロしていると、ようやく昔の記憶と一致する、比較的古めで金属などの配線やいろいろな部品が所狭しに並んでいる店に到着した。
店頭にはアルト村で製造した製品も多く販売されている。
「おじさん!」
店に入るなり、他に客がいないことを確認すると大きな声で叫んだ。
配線をニッパーで切断し、長さを調整していた店主が肩をびくっと振るわせて驚いた顔でディアルトの顔を覗き込んだ。
「おっ?サンアルトの息子か。大きくなったな。」
筋肉質な太い腕とそれよりも特徴的な大きな腹。ディアルトの父と同じくらいの年齢。
ディアルトが安堵の笑みを浮かべる。
「一人で来たのか?サンアルトはどうした?レンは?」
店主が問いかけるとディアルトは困ったような、悲しい顔をして黙り込む。
何が起きたのかはわからなかったが、良くないことなのだろうと察して、店に手作りの電飾ピカピカ『休憩中!』の看板を掲げると、ディアルトを店の中へと連れて行った。
「何かあったのか?」
店主が奥からオレンジジュースをコップに注いで持ってくると、ディアルトはそれを一気に飲み干した。
そこで、ディアルトはサンアルトがイルエスタに捕まったこと、そして今までのことを一気に吐き出すように告げた。
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