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16 抗えぬ力と残された希望
しおりを挟む「なんと!アルト村が襲われたと。相手がイルエスタ王国か。・・・この世で最大の軍事大国だ。」
店主が腕を組んで首を傾げて考え込むと、ディアルトのように悲しい顔をする。
そして、目をつぶって、再び、じーっと考える。
「隙を見て助けるか。いや、どこにいるかわからないかと無理だもんな。うん・・・」
「強引に奪い返せないかな?」
「イルエスタの軍隊はこの大陸だけでなく世界で最強の強さだ。ここシュランの軍隊をかき集めても、イルエスタの一部隊を破れないだろうな。」
ディアルトが考え無しに口にした言葉に、少し怒った口調で店主が答えると、その一言で、自分がどれだけ大変なことをしようとしていたのかに気付く。
「でも、北方に行ったときは、アイスレリアはイルエスタの軍隊に勝ってたよ!?」
「あんな寒いところに行くのは主力じゃないはずだ。それだったら可能性はあるが。まあ、原石の発掘に行くのはおそらく主力だ。それも最新の武器を携えていると考えていい。」
その場でうなだれるディアルト。
店主も言葉無く、ただ、黙るだけであった。そしてしばらく時が過ぎる。
ふと、ジジにもらった手紙が目に付いた。なにげなくその手紙を読み始める。
『シュランのエクシア、チャクミのミクシア、イルエスタのアクシアを訪ねよ』
そして、その中には布包みが3つ、それぞれに、エクシア、ミクシア、アクシアと記載されていた。その手紙を店主に見せる。
「シュランのエクシアって知ってる?」
その手紙を受け取った店主は目をギュッとつむり、さらに困った顔をした。
「シュランの知識部門長のエクシア様のことだろうか。」
話が繋がり、喜ぶディアルトとそれと裏腹に暗い顔をする店主。
「今から、そのエクシア様に会えるかな?もしかして何か対策があるのかもしれない。」
エクシアと書いた小さな布包みを手に取ると、大切に握りしめた。
「無理だな。」
静かにつぶやく店主。それを驚きの顔で見るディアルト。
「このシュランで3番目に偉い方だ。一生俺なんかが会えないと思っているぐらいだからな。」
その言葉を聞いたディアルトは立ち上がった。そして店主の手を引く。
「やってみなくちゃわかんないよ。いる場所に連れてってよ!」
強引に連れて行こうとするディアルト。それを強引にはねのける店主。
「サンアルトの事だから、俺も力になりたいが、俺じゃなにも出来ない。会うことすら無理だ。俺には無理なんだ。」
強く言い放つと、ディアルトに背を向けた。ディアルトはただ、それを見ている。
「怖いとかじゃなくて、ここで商売をしていくためには逆らっちゃいけない人たちがいるんだ。養わなけりゃならない家族もいる。」
そこから言葉無く、静かな時間が流れた。困ったディアルトはただ、立ちつくしている。
静かに店主が深く息を吸ってから一気に吐き出すとディアルトの目をじっと見つめた。
「こんな子供が頑張ってるんだもんな。ここまで来るのも大変だったろう。アルト村が襲われて怖かっただろう。ごめん。俺が悪かった。会えるかどうかわからないが行くだけ行ってみよう。」
笑顔になるディアルトの頭を軽く撫でると、店主は着替えるために部屋を出て行った。
それを目で追うと、ディアルトは再び笑顔になり、エクシアと書いた布包みを握りしめた。
やがて、油の染みた作業服から着替えて、真っ白のシャツに蝶ネクタイをつけた黒いスーツ姿で現れると、あまりの変わりように、ディアルトが笑い、店主は照れたような曇った顔をした。
慌ててまじめな顔をするディアルト。
「サンアルトとはアルト村で子供のころ一緒に遊んで、一緒に研究所を立ち上げた仲間だからな。俺の片割れみたいな存在さ。やれるだけやってやる。」
ディアルトが両手を合わせて強くたたいて喜ぶ。父親の友人が心強く誇らしかった。
昔、父と一緒に研究していたことは初めて知ったが。
店主が小さな布包みを幾つかポケットに詰め込むと、鏡を覗き込んで髪の毛を綺麗に整え、再び顔を水で洗いに戻り、その顔を洗って付着した水を髪の毛に付けて、再び髪を整える。
「よし、行くか。ディアルトも身だしなみには気を付けろよ。それと、できるだけお上品にな。」
「わかった。頑張る。」
同じようにディアルトも顔を洗ってボサボサになった髪の毛を整えると、にこっと笑った。
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