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17 重々しい扉の先に
しおりを挟む店主が『本日終了』の質素な木の看板を掲げて外を片付けるのを待つと、どこか不安がすっと消えて、代わりに希望が心に灯ったのを感じた。
そっと自分の胸に手を置くと、強い鼓動を感じる。
それよりも、全身を緊張させてぎこちなく歩く店主は、なにかこれから良くないことをするのかのように、キョロキョロしたり落ち着きがない。それを怪しむ人もいる。
「じゃ、じゃあ、行くぞ。しっかりついて来いよ。」
店主が胸を張って、その身なりにふさわしく堂々と歩くが、とてもぎこちない。
連れられるまま広い道路を進んでいく。
「人が多いね。こんなにたくさんの人、僕、見たことないよ。」
「まあ、シュランでもこの辺りは特に人が多いところだからな。あまり近寄りたくないところだ。」
人の多さに改めて驚かされる。
店も立派な建物から、地面に布を一枚敷いただけのものまで、様々である。
たまに大安売りの掛け声に人だかりができ、どうしても目が奪われてしまう。
この周辺は、シュランのメインともいえる機器や実験材料など、技術に関わる店が建ち並ぶ技術エリアらしい。
このほかにも、情報や文学があつまる文化エリア、食料品や雑貨が集まる生活エリアもあるらしいが、今まで技術エリアしか踏み入れたことがなかった。
歩いていると、銃や剣などの武器や、鎧や盾などの防具の実演販売を威勢よくしていたり、歌を歌い、楽器を演奏する集団がいたり、なんか木を植えていたり、穴を掘ったりと興味を引く色々な活動で退屈しない。
それらを気にせず、店主はどんどんと都市の中心へと歩いていく。
「シュランはイルエスタ王国に属しているからな。これから行くシュランの中央の管理地区での出来事はそのままイルエスタに情報が伝わると思ってくれ。絶対に変なことを話すな。サンアルトの事とか、アルトの村の事とかだ。エクシア様に会うのが最優先だからな。」
声を押し殺した店主に周囲を気にして、少しうなずくディアルト。
しばらく歩くと、急に人通りが少なく、且つ銃や剣を構えた兵士が立ち並ぶエリアに入った。明らかに警備が厳しいエリア。
ここが中央管理エリアらしい。行政機関や役所が建ち並ぶ地区で、警備兵だろうか、装備を整えた集団が常にこちらを眺めているのが、息苦しい。
こっちを睨みつける兵士達の視線が怖い。
ディアルトがその警備兵と目が合うと、軽くお辞儀をして、通り過ぎた。
何度か警備兵に声をかけられて色々と聞かれて、持ち物検査をされて、からだに何か隠していないかを検査されて、ようやくたどり着いたのは、厚い鉄で作られた黒い大きな門の前であった。
周囲は高い岩壁で覆われており、中は全く確認できない。
シュランの中央に位置する重々しい区域。
たどり着くと同時に一人の兵士がこちらへ銃を向け、素早く駆け寄ってきた。
「ここはおまえ達の来る場所ではない。立ち去れ。」
何も確認せずに、兵士はディアルト達に帰るように促す。
イラっとした態度を示したディアルトを静かに諫めた店主は、こっそりとポケットから布袋を取り出し、兵士へと渡した。
中身を確認した兵士は銃を下ろす。
「何の用か。」
「これをエクシア様に献上したく、どうか、お目通りを。」
そして、店主は持っていた布袋を開くと中身を兵士に確認させた。
考え込む兵士。その態度を見た店主はさらにもう一つの布袋を兵士に渡し、頭を下げた。
「しばらくここで待つがよい。取り次いで良いか確認をしてくる。」
その布袋を懐へとしまった兵士は、鉄の大きな扉の横にある小さな出入り口を通過して、建物の奥へと進んでいった。
「何を渡したの?」
ディアルトが店主に聞いた。
「子供は知らなくてもいいものだ。大人を操れる不思議な紙だよ。」
店主が静かに答える。
それからしばらくして先ほどの兵士が戻ってくると、小さくうなずいた。
「特別にエクシア様がお会いになるとのことだ。」
喜ぶディアルトと顔が強ばる店主。
心の準備が無いまま、いきなり兵士に連れられるまま小さな扉を通ると、明らかに外とは造りが違う複数の立派で高い建物が出迎える。
気品のある建物群と高級品を扱う商店をちらりと見て、時々睨みつける警備兵から視線を逸らし、からだを小さくしてずっと進むと、最も大きい屋敷へとたどり着いた。
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