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19 心臓の鼓動と心の迷い
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家といっても部屋はひとつしかなく、かなり寂れた簡単な造りの古い小屋である。
先程のエクシアの屋敷の部屋一つ分にも満たない大きさ。
かぎの掛かっていない家に入ると、部屋には本がびっしりと並んでおり、丁寧に片付けられていた。
飲み物を用意した男の子が座るのを見て、店主とディアルトも一緒に座った。
「これは、ジジ様より渡されたものか?」
そして男の子はディアルトの持っていた、エクシアと書かれた布を取り出した。
唐突な核心を突いた質問にディアルトはつい、隠すことなく素直にうなずいた。
「どうして、君がこれを持っているか教えてくれ。」
アルト村での出来事を店主に口止めされていたディアルトは困った顔をした。
そして店主のほうを見る。その店主も困った顔をする。
男の子は笑う。
「自己紹介がまだだったね。僕の名はアセス=エクシア。多分君達が尋ねたエクシアは僕のことだと思う。」
ディアルトは目を丸くして驚いた。店主も驚いたが、まだどこか疑っていた。
その店主の様子を察したか、エクシアはさらに続けた。
「この布はジジ様がイルエスタで私に指導してくださったときに、何かジジ様に困ったことがあれば必ず恩を返すという誓いでジジ様に渡したものだ。これで納得してもらえたかな?エクシア、ミクシア、アクシア。そのエクシアは僕のことだ。」
半信半疑の店主に対し、ディアルトは大喜びであった。
そして、ディアルトは素直にアルト村で起こったこと、火の原石のこと、ジジに渡された手紙のことをエクシアに話した。
「・・・まさか火の原石などというのがこの世に存在するのか?」
今度はエクシアの方が疑った。
そしてしばらくディアルトの話に耳を傾け、ようやく納得するようになった。
「お父さんとアルト村の研究員を助けたいんだ。どうか力を貸して!」
熱く説得するディアルトに押されたエクシアは腕を組んで考え始めた。
「イルエスタの精鋭が直接アルト村に行ったのであればもう既にイルエスタ城に到着しているかもしれない。」
「何で!?空を飛べないのに!」
驚くディアルトに冷静にエクシアは続けた。
「イルエスタ本国へと続く地下道があらゆるところに掘り広められているんだ。一般の人は知らないけどね。たしか、アイスレリア付近にも出口があったはずだから、そこから地下に潜って、よくわからないけど特殊な移動手段を使えば、歩いたりするよりも数十倍の速さで城へ帰れるそうだ。」
言葉を失うディアルト。
「何か、サンアルト達を助ける方法はないのでしょうか?」
店主がディアルトを慰めながら、問いかけた。
腕を組み、静かに目をつぶるエクシア。それを見守るディアルトと店主。
「ジジ様の頼み。・・・セイシュ・イシュの歴史研究はイルエスタ本国でも限られた者しか知らないから、どこに連れていかれた予想もできない。・・・少し考えさせてください。」
困った顔をして腕を組み、深く考える様子にディアルトはただうなずいた。
「ディアルト、俺にできるのはこれが限界だ。後は頼む。」
店主は少し悲しい顔をして、ディアルトの両肩を叩いた。
ディアルトは、このままエクシアの家に泊まり、店主は自分の店へとこっそりエクシアから教わった抜け道を使って戻っていった。
エクシアが腕を組んで考える。
ディアルトは慌ただしい一日に激しく疲れ、いつしか眠ってしまっていた。
朝、目覚めたときには既にエクシアは居ず、置手紙があった。
『仕事に行く。部屋からは絶対出ないで。食べ物は適当に食べて。家にある本は好きに読んでいいから。』
設計図や機械に関する本はよく読んでいたディアルトだが、文学には全く興味がなかった。試しにぺらぺらっと本を取り出して読んでみたが、全くわからない。難しい文字は全くわからない。
床に寝そべり、天井を見上げた。白い天井は何の素材を使っているのだろうか。とても古く茶色くなっているが、丁寧に掃除されている。
それでも、ようやくからだを休めることができた。
「なんか、色々長かった。疲れたな。」
もう一度目を瞑ると、再び眠りについた。
夢の中だろうか。
わからない。
周囲を見回しても、ここがどこなのか。わからない。
何かわからないが、本がいろいろある。当然見覚えがない。
唯一知っているのは自分のことだけ。他の事は何もわからない。
ふと、ディアルトは気づいた。
・・・自分のことを知っている??
火の原石を取り込んだ今のからだ・・・?自分のからだ?
本当に生きている?生きているってなんだ?
ディアルトは自分の心臓に手をあてた。
どくん、どくん。
いつもどおりに動いている。
そして手を見た。
自分の思い通りに折り曲げることができる。
でも、一度灰になったからだが、なぜ、元通りになったのだろうか。
火の原石のちから?人を生き返らせることができる?
母も生き返って、アルト村の人たちも生き返った。
わからない。
わからない。
考えてわからなくても、それが現実であれば受け入れるしかない。
ふと、嫌なイメージが脳裏に浮かんだ。
自分が両手をイルエスタの兵士に向けると黒い炎が手から噴出し、兵士を蒸発させた。
『彼らは死んだ?僕が殺した?』
『でも、兵士もアルト村の人を殺した。僕だけが殺したわけじゃない。』
『殺したからって、僕も殺していいの?』
『でも、彼らを殺さなければ僕が殺されていた。』
『彼らは逃げようとしてたよ?それを僕は殺した。』
『何で殺したんだろう?』
『殺さなくても良かったんじゃない?』
頭の中のモヤモヤをかき消すように、急に立ち上がった。そして、からだを左右に振る。
わからないときはすべてを受け入れる。そしていつか答えが出るのを待つ。
そう、自分に納得させた。考えてもわからないものはわからない。
現実に戻る。
なんか疲れた。特に心が。
先程のエクシアの屋敷の部屋一つ分にも満たない大きさ。
かぎの掛かっていない家に入ると、部屋には本がびっしりと並んでおり、丁寧に片付けられていた。
飲み物を用意した男の子が座るのを見て、店主とディアルトも一緒に座った。
「これは、ジジ様より渡されたものか?」
そして男の子はディアルトの持っていた、エクシアと書かれた布を取り出した。
唐突な核心を突いた質問にディアルトはつい、隠すことなく素直にうなずいた。
「どうして、君がこれを持っているか教えてくれ。」
アルト村での出来事を店主に口止めされていたディアルトは困った顔をした。
そして店主のほうを見る。その店主も困った顔をする。
男の子は笑う。
「自己紹介がまだだったね。僕の名はアセス=エクシア。多分君達が尋ねたエクシアは僕のことだと思う。」
ディアルトは目を丸くして驚いた。店主も驚いたが、まだどこか疑っていた。
その店主の様子を察したか、エクシアはさらに続けた。
「この布はジジ様がイルエスタで私に指導してくださったときに、何かジジ様に困ったことがあれば必ず恩を返すという誓いでジジ様に渡したものだ。これで納得してもらえたかな?エクシア、ミクシア、アクシア。そのエクシアは僕のことだ。」
半信半疑の店主に対し、ディアルトは大喜びであった。
そして、ディアルトは素直にアルト村で起こったこと、火の原石のこと、ジジに渡された手紙のことをエクシアに話した。
「・・・まさか火の原石などというのがこの世に存在するのか?」
今度はエクシアの方が疑った。
そしてしばらくディアルトの話に耳を傾け、ようやく納得するようになった。
「お父さんとアルト村の研究員を助けたいんだ。どうか力を貸して!」
熱く説得するディアルトに押されたエクシアは腕を組んで考え始めた。
「イルエスタの精鋭が直接アルト村に行ったのであればもう既にイルエスタ城に到着しているかもしれない。」
「何で!?空を飛べないのに!」
驚くディアルトに冷静にエクシアは続けた。
「イルエスタ本国へと続く地下道があらゆるところに掘り広められているんだ。一般の人は知らないけどね。たしか、アイスレリア付近にも出口があったはずだから、そこから地下に潜って、よくわからないけど特殊な移動手段を使えば、歩いたりするよりも数十倍の速さで城へ帰れるそうだ。」
言葉を失うディアルト。
「何か、サンアルト達を助ける方法はないのでしょうか?」
店主がディアルトを慰めながら、問いかけた。
腕を組み、静かに目をつぶるエクシア。それを見守るディアルトと店主。
「ジジ様の頼み。・・・セイシュ・イシュの歴史研究はイルエスタ本国でも限られた者しか知らないから、どこに連れていかれた予想もできない。・・・少し考えさせてください。」
困った顔をして腕を組み、深く考える様子にディアルトはただうなずいた。
「ディアルト、俺にできるのはこれが限界だ。後は頼む。」
店主は少し悲しい顔をして、ディアルトの両肩を叩いた。
ディアルトは、このままエクシアの家に泊まり、店主は自分の店へとこっそりエクシアから教わった抜け道を使って戻っていった。
エクシアが腕を組んで考える。
ディアルトは慌ただしい一日に激しく疲れ、いつしか眠ってしまっていた。
朝、目覚めたときには既にエクシアは居ず、置手紙があった。
『仕事に行く。部屋からは絶対出ないで。食べ物は適当に食べて。家にある本は好きに読んでいいから。』
設計図や機械に関する本はよく読んでいたディアルトだが、文学には全く興味がなかった。試しにぺらぺらっと本を取り出して読んでみたが、全くわからない。難しい文字は全くわからない。
床に寝そべり、天井を見上げた。白い天井は何の素材を使っているのだろうか。とても古く茶色くなっているが、丁寧に掃除されている。
それでも、ようやくからだを休めることができた。
「なんか、色々長かった。疲れたな。」
もう一度目を瞑ると、再び眠りについた。
夢の中だろうか。
わからない。
周囲を見回しても、ここがどこなのか。わからない。
何かわからないが、本がいろいろある。当然見覚えがない。
唯一知っているのは自分のことだけ。他の事は何もわからない。
ふと、ディアルトは気づいた。
・・・自分のことを知っている??
火の原石を取り込んだ今のからだ・・・?自分のからだ?
本当に生きている?生きているってなんだ?
ディアルトは自分の心臓に手をあてた。
どくん、どくん。
いつもどおりに動いている。
そして手を見た。
自分の思い通りに折り曲げることができる。
でも、一度灰になったからだが、なぜ、元通りになったのだろうか。
火の原石のちから?人を生き返らせることができる?
母も生き返って、アルト村の人たちも生き返った。
わからない。
わからない。
考えてわからなくても、それが現実であれば受け入れるしかない。
ふと、嫌なイメージが脳裏に浮かんだ。
自分が両手をイルエスタの兵士に向けると黒い炎が手から噴出し、兵士を蒸発させた。
『彼らは死んだ?僕が殺した?』
『でも、兵士もアルト村の人を殺した。僕だけが殺したわけじゃない。』
『殺したからって、僕も殺していいの?』
『でも、彼らを殺さなければ僕が殺されていた。』
『彼らは逃げようとしてたよ?それを僕は殺した。』
『何で殺したんだろう?』
『殺さなくても良かったんじゃない?』
頭の中のモヤモヤをかき消すように、急に立ち上がった。そして、からだを左右に振る。
わからないときはすべてを受け入れる。そしていつか答えが出るのを待つ。
そう、自分に納得させた。考えてもわからないものはわからない。
現実に戻る。
なんか疲れた。特に心が。
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