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21 選べない二つの思い
しおりを挟む「レン!」
思わず抱きつくディアルト。
暗闇の森の中、近くに明かりはなにも無い。少しホッとする。
「この赤竜は?」
エクシアは少し怖がりながら、尋ねた。
「少し前まで白かったんだけど、アルト村の出来事で赤くなったレン。友達だ。」
レンはエクシアを見ると頭を下げた。
「よろしく。」
それを見て、さらにエクシアは驚く。
「え?しゃべれるのか?!あ、こちらこそよろしく。」
レンとディアルトは笑った。
「でも、なんかよくわからないけど。どうなったんだろう?」
ディアルトの問いかけにエクシアは気を取り直すと、強く息をのんだ。
「・・・昨日のディアルトと僕の会話が誰かに聞かれていたんだ。それで、君を捕まえにきたんだよ。火の原石を取り出すためにね。」
ディアルトは納得できない顔をする。
「でも、僕は火の原石なんて持っていないよ?」
「火の原石と融合したんだろ?だとしたら、からだを切り刻んで火の原石をとりだそうと考えているのだろう。イルエスタは原石については異常に執着するから。」
淡々と真顔で語るエクシアに、ディアルトがブルブルっとからだを震わせる。
「君はこれ以上シュランにいるのは危ない。シュラン知識部門長のエクシア様に顔を見られただろう。全力で君を追いかけるぞ。」
エクシアは前方から両手でディアルトの肩を叩き、強く顔を覗き込んだ。
「といっても、行くところないし。お父さんも助けなきゃいけないんだ。」
困ったように見つめるディアルト。
「招待状を書くからチャクミに行くといい。当分の間、そこで隠れて暮らすんだ。シュランとイルエスタとその関連地域にも入らないように。本当にディアルトの命が危ない。」
「でもそれじゃ、父さんを助けられないよ!」
「自分の命を大事にしろ!いずれチャンスは来る!」
「でも今助けたいんだよ!」
「冷静に考えろ。君が今動くことによって事態はよくなるのか?原石の研究者であれば、簡単には殺されない。それは確実だ!」
「でも!でも!」
「少しは大人になれ!!!」
思いっきりディアルトの頭を叩くエクシア。吹き飛ばされたディアルトを上手に受け止めたレン。
エクシアは持っていた地図に何かを書くとそれをディアルトに渡した。
あて先はミクシアとなっている。
「それをチャクミのミクシアに渡すんだ。そうすれば保護してもらえる。」
「・・・・」
素直に受け取ったディアルトは、その地図をぐっと強く眺める。今まで行ったことのない遠い土地。
「エクシアはどうするの?一緒に行かないの?」
レンに寄りかかって脱力しているディアルトが問いかけた。
「僕はシュランに戻る。」
「そんな、殺されちゃうよ!」
「さっきも言ったけど僕はチャクミの第三王子だ。ここで僕がいなくなったら、イルエスタとチャクミで戦争が起こりかねない。そうなったらすぐにチャクミは滅ぼされるだろう。だから、僕は戻らなくちゃいけないんだ。」
ディアルトには、何を言って良いのかわからなかった。何も言葉が出ない。
「王子が民を困らすことは死んでもやっちゃいけないことなんだ。まあ、王子って言ってもすごく小さな村のだけどね。」
エクシアの強い瞳に目をそらすディアルト。言葉がでない。
「レン、チャクミの場所はディアルトが持っている地図に載っている。しっかり連れて行ってくれ。」
エクシアがディアルトの頭をなでた。
「叩いてごめん。君にも守りたいものがあるんだろ、守るためにはちからが必要なんだ。だから、よく、いろいろ考えてから動かないといけないよ。」
なぜか、ディアルトは涙が出てきた。
「ちからも、武力だけじゃない。知識、運や人とのつながり、これらすべてちからなんだ。だからいろいろ考えて最善の方法を選ばなくちゃいけない。君にはまだ難しいかな?」
「わからない、知らないことが多すぎて。」
「君は、知らないということを知った。それだけで喜ばしいことではないかね?って、僕の師匠がよく言っていた。」
ディアルトは素直にうなずいた。そして頭の中でディアルトの言葉を何度も繰り返した。
「そうだ、最後に一つ教えてくれ。」
エクシアが小さく笑う。
「もし君だったら、敵に味方になれと言われたらどうする?味方にならなければ殺される。味方になれば殺されないが、自分の思いが死ぬ・・・かもしれない。」
「死にたくないし、自分の思いも大切だと思う。」
「どちらか一つをとるとしたら?」
「両方とる。」
「両方とるというのが絶対無理だとしたら?」
「父さんが言ってた。絶対ってことは絶対に無いって。」
「・・・絶対ってことは絶対無いか。両方とるか。そうか。そうだな。ありがとう。君のお父さんにも会ってみたかった。僕は戻る。ディアルトとレンも気をつけて。」
エクシアは笑って軽く手を振ると、そのまま胸を張ってシュランの方向に歩き出した。
ディアルトはそれを黙ってみていた。何も声をかけられないまま、そのまま見ていた。
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