炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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28 兄の名にかけて

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 ミクシアの意思を理解したもの、特に工作所の仲間が怒りに震えて大きな声で叫び暴れた。
 それを周囲がどうにか取り押さえようとするが、暴動はさらに増大していく。
 
 全体的に判断すると、ミクシアを人質に出すことに賛成の人が多かったのだが。

「提案する。」
 
 奥から静かなバブの声が聞こえた。
 静かだが、神聖な響きを持つその声に反応し、周囲はシーンと静まる。

「決議を守らない者は国外追放とし、王族であれば身分剥奪、永久にこの地を踏ませないこととする。」

 静まった傍聴者やルビト、スパル、ミクシアもその提案に驚き、再び言葉を失う。
 だが、すぐにミクシアは小さく笑う。

「それは厳しいかと。」

 ルビトが言葉を探す。
 今まで決議で反対されることはほぼなかったため、守らなかった場合の罰則はなく、形式的になっていた。
 ここまで厳しい内容の決議は初めてだった。

 以前、エクシアをイルエスタに送ったときも決議はあったが、それも形式的であり、実際はすでに決定していた内容であった。
 エクシアも納得のうえだった。

「賛成だ。」

 戸惑う周囲をよそに、真っ先に手を挙げたのがミクシアだった。
 バブの提案であったことから、つられてルビトとスパル、傍聴者も手を挙げた。

「決議の結果をまとめよ。」

 再びバブの静かな声が響いた。

 それを聞き、ミクシアが発言する。

「イルエスタへのエクシアの代わりの人質はミクシアとし、それを受け入れない場合、俺は身分剥奪、永久にこの地を踏まないことを約束する。」

 周囲から、戸惑いながらも賛成の拍手が起こった。
 ルビトもスパルも納得していないのは明らかだった。

 そして、解散が宣言され、バブと代表3人とディアルトがその場に残った。

「お疲れ。」

 表情一つ変えず、見下すようにルビトとスパルに告げるミクシア。

「初めからこの地を去るつもりだったのね?」

 ルビトが何かを悟ったようにささやいた。

「残された者はどうなるか考えたことがあるか?」

 スパルも疲れたようにつぶやく。

 しばらく沈黙の時間が過ぎる。

 正直なところミクシアも、チャクミの民のことを思うと、どうしていいか分からなかった。
 ルビトとスパル、二人が正しいのだろうと本心から思った。

 自分も立場が違えばチャクミを守るだろう。自分一人の意志で500人を危険にさらしている自覚はあった。

 沈黙は一人の男によって破られる。

 ミクシアの父は大きな袋を抱え、ドスンとミクシアの前に置くと笑った。
 そしてその袋を開けて、中の宝石や高級そうな指輪などを見せる。

「これをイルエスタの使者に渡せば、人質の件について説得できるだろう。」

 袋を逆さにして、中身をすべて出すミクシア。

「イルエスタの知識部門長のエクシアがチャクミからの人質を要求しているのであれば、あいつなら買収できる。どこの国でもやっていることだ。ましてやこんな辺境の地、そんな真剣に考えもしないだろう。」

 ミクシアの父が少し名残惜しそうにちらっとその宝石を見る。

「ミクシア、お前の覚悟を受け止めた。俺も父としてできることは援護する。」

 ミクシアは緊張が緩んだのか、肩の力を抜き、机に手を突いた。

「決めた。」

 バブ、ルビト、スパルを順に見回し、拳を握り締める。

「俺はイルエスタを倒し、エクシアの敵を討つ。父も賛成してくれたことだ。」

 ディアルトもその真似をして、拳を握り締める。

 深く息を吐くと、小さく笑った。

「やっぱり、国のためって考えても駄目だった。俺はエクシアの兄貴なんだ。だから俺が敵を討ってやらないと。あいつは俺のかわいい弟だからな。」

 それを聞いてディアルトが大きな笑みを浮かべる。

「エクシアのためにイルエスタを討つ!そして父さんを助ける!」

 ディアルトが満足の笑顔でミクシアに近づく。

 ミクシアの父も拳を突き出し、ミクシアと拳をぶつける。
 それを見ていたルビト、スパルも輪に入り、拳をぶつけた。
 それをバブは黙って見ている。

 あらかじめ、ミクシアの父はバブだけに、息子ミクシアの考えがイルエスタ討伐にあると告げていた。
 そしてこの村を離れるだろうことも。

 その後押しをしたバブの提案は、ミクシアの覚悟を確固たるものとした。

「それは死ぬよりも大変なことだぞ。一人が巨大な国を討つ、その覚悟はあるのだな。」
 バブの声が響く。

 それにミクシアがうなずく。なんかわからないが、つられてディアルトもうなずく。

「分かっているのです。頭では。チャクミを守ることの大切さ。エクシアの思いも。
 でも、俺は俺の大切なものを守りたい。どうしても、心が、心が痛い。なにかが沸き上がる、それが止められないのです。すみません。」

「それは使命感だ。若さゆえの。」
 バブも笑う。

「そんな感じです。すみません。」
 ミクシアはディアルトの頭をくしゃくしゃとなでると、バブに向かい深く頭を下げた。

 父とともにこの場を去っていった。
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