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30 コランへの航路
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「ほえー、こりゃあ楽ちんだ。」
チャクミ工作場の副所長であり、最高齢のキーンが、疲れた腰をトントンと叩きながら喜びの声をあげた。
「こんなの軽い軽い!」
レンが、キーンの担いでいた重い荷物を足に括り付け、歩く速度に合わせて低空飛行を続ける。
「すげぇ力だなぁ」
他の工作場の仲間からも歓声があがり、レンも少し得意げだ。
いつの間にか全身が深紅に染まったレンがバサバサと羽ばたくと、大きな翼が巻き起こす風で砂埃が舞う。
「赤竜って話すのですね。驚きました。」
「普通はしゃべらないだろ。知らんが。っていうか、赤竜がいることを当たり前みたいに言うな。」
ミクシアの隣で、工作場の唯一の女性であるララが空を見上げると、青い空に手を透かした。
晴天。雲一つない。風も吹いていない。
他の仲間達も遠足のように楽しそうに進んでいく。
行き先はコランに決めていた。
チャクミと大陸でつながるイルエスタから離れるため、またジジの手紙にあった「チャクミ→コラン」の意味を確かめるためでもある。
さらに、副所長キーンの故郷でもあるため、頼るあてもあった。
チャクミからコランへ移動するには、チャクミの東にある港から船で東へ進み、隣の大陸へ渡り、そこから陸路でカランという国を通過して進む必要がある。
コランのあるラン大陸は、大きく分けると北西にカラン、北東にコラン、南西にキラン、南東にケランがほぼ等分割されている。
もとは一国だったが、王位継承の内紛を平和裏に解決するため、四分割された。国名は王子たちの名前から取られている。
建国からすでに50年が経過し、かつて一国だったことは薄れつつあった。
ちなみに南西の国キランで原石が発見されたとのことで、イルエスタがその調査を行っているという情報が入っている。
調査といっても、所かまわず穴を掘り、破壊し、すべてを奪い去っていく。
他の国はそれを見て見ぬふりをしているが、いつ同じように襲われるか怯えながら過ごしている。
情勢は不安定であり、技術や商業などあらゆる分野でイルエスタに大きく劣っているため、反抗する意思はなく、すべてを受け入れるしかないのが現状だ。
それに対し、一部では反発も起きているが、圧倒的な国力で抑え込まれている。
すでに空が暗くなり、さらにしばらく時間が経過したころ、ディアルトたちはチャクミの東にある港に到着した。
港はイルエスタ王国の管轄だが、通常の交通機関と同じように、費用を払えば自由に往来が可能である。
とはいえ、港には犯罪者や属国の要人の往来を監視する見張りがおり、乗船者を一人一人チェックしているそうだ。
そのため、ミクシアを知っている者が監視にいるかもしれない。そこで、ミクシアはレンが飛行して運び、工作場の従業員20人とディアルトは船でラン大陸のカラン国に渡ることにした。
念のため、ディアルトも大きな帽子で顔を隠している。
その船はイルエスタ製で、全面が金属でできた頑丈で巨大な船だった。
対空砲や魚雷も装着された軍艦を輸送用に代用しており、ざっと見ただけでも5隻はある。立派な艦隊だ。
カランの港にはドックが併設されており、そこにも複数の船が隠れているようだ。
地域の防衛・攻略用として配置している船を商業用に活用しているのだろう。
船の中には銃が大量に格納されており(鍵がかかっていて関係者以外は使用できない)、戦場さながらの重々しさを漂わせていた。
乗り込むと、本日の最終便らしく、客は少なく、嫌でも目立ってしまう。
ついディアルトは、意味もなく隠れたくなってしまった。
ディアルトたちが急かされるまま足早に乗り込むと、すぐに大音量で鐘が鳴り、船がガガガガッとゆっくり動き出す。
「でっけー!すっげー!」
「おいおい、あまり暴れるな。」
走り回るディアルトをキーンが抑え込む。
ディアルトは、暗い海に吸い込まれるように進む大型の船に興奮を隠せない。
もっとも、他の客は甲板には誰もいないため、特に迷惑はかけていなかった。
「すっげー、でっけー。」
ララも無邪気に走り回る。
「いや、お前はもう、そんな年じゃないだろ。ミクシアと確か同じ年だったよな。」
「私、船初めてなの。」
キーンが呆れると、もう二人を放っておいて、あらかじめ準備していたジュースを飲み、体を休めた。
「はあ、酒が恋しい。」
ザッバーンと波を切る音が心地よい。
真っ暗。何も見えない。
椅子に座って目を閉じ、風を受けていると、いつのまにかディアルトは眠りについていた。
チャクミ工作場の副所長であり、最高齢のキーンが、疲れた腰をトントンと叩きながら喜びの声をあげた。
「こんなの軽い軽い!」
レンが、キーンの担いでいた重い荷物を足に括り付け、歩く速度に合わせて低空飛行を続ける。
「すげぇ力だなぁ」
他の工作場の仲間からも歓声があがり、レンも少し得意げだ。
いつの間にか全身が深紅に染まったレンがバサバサと羽ばたくと、大きな翼が巻き起こす風で砂埃が舞う。
「赤竜って話すのですね。驚きました。」
「普通はしゃべらないだろ。知らんが。っていうか、赤竜がいることを当たり前みたいに言うな。」
ミクシアの隣で、工作場の唯一の女性であるララが空を見上げると、青い空に手を透かした。
晴天。雲一つない。風も吹いていない。
他の仲間達も遠足のように楽しそうに進んでいく。
行き先はコランに決めていた。
チャクミと大陸でつながるイルエスタから離れるため、またジジの手紙にあった「チャクミ→コラン」の意味を確かめるためでもある。
さらに、副所長キーンの故郷でもあるため、頼るあてもあった。
チャクミからコランへ移動するには、チャクミの東にある港から船で東へ進み、隣の大陸へ渡り、そこから陸路でカランという国を通過して進む必要がある。
コランのあるラン大陸は、大きく分けると北西にカラン、北東にコラン、南西にキラン、南東にケランがほぼ等分割されている。
もとは一国だったが、王位継承の内紛を平和裏に解決するため、四分割された。国名は王子たちの名前から取られている。
建国からすでに50年が経過し、かつて一国だったことは薄れつつあった。
ちなみに南西の国キランで原石が発見されたとのことで、イルエスタがその調査を行っているという情報が入っている。
調査といっても、所かまわず穴を掘り、破壊し、すべてを奪い去っていく。
他の国はそれを見て見ぬふりをしているが、いつ同じように襲われるか怯えながら過ごしている。
情勢は不安定であり、技術や商業などあらゆる分野でイルエスタに大きく劣っているため、反抗する意思はなく、すべてを受け入れるしかないのが現状だ。
それに対し、一部では反発も起きているが、圧倒的な国力で抑え込まれている。
すでに空が暗くなり、さらにしばらく時間が経過したころ、ディアルトたちはチャクミの東にある港に到着した。
港はイルエスタ王国の管轄だが、通常の交通機関と同じように、費用を払えば自由に往来が可能である。
とはいえ、港には犯罪者や属国の要人の往来を監視する見張りがおり、乗船者を一人一人チェックしているそうだ。
そのため、ミクシアを知っている者が監視にいるかもしれない。そこで、ミクシアはレンが飛行して運び、工作場の従業員20人とディアルトは船でラン大陸のカラン国に渡ることにした。
念のため、ディアルトも大きな帽子で顔を隠している。
その船はイルエスタ製で、全面が金属でできた頑丈で巨大な船だった。
対空砲や魚雷も装着された軍艦を輸送用に代用しており、ざっと見ただけでも5隻はある。立派な艦隊だ。
カランの港にはドックが併設されており、そこにも複数の船が隠れているようだ。
地域の防衛・攻略用として配置している船を商業用に活用しているのだろう。
船の中には銃が大量に格納されており(鍵がかかっていて関係者以外は使用できない)、戦場さながらの重々しさを漂わせていた。
乗り込むと、本日の最終便らしく、客は少なく、嫌でも目立ってしまう。
ついディアルトは、意味もなく隠れたくなってしまった。
ディアルトたちが急かされるまま足早に乗り込むと、すぐに大音量で鐘が鳴り、船がガガガガッとゆっくり動き出す。
「でっけー!すっげー!」
「おいおい、あまり暴れるな。」
走り回るディアルトをキーンが抑え込む。
ディアルトは、暗い海に吸い込まれるように進む大型の船に興奮を隠せない。
もっとも、他の客は甲板には誰もいないため、特に迷惑はかけていなかった。
「すっげー、でっけー。」
ララも無邪気に走り回る。
「いや、お前はもう、そんな年じゃないだろ。ミクシアと確か同じ年だったよな。」
「私、船初めてなの。」
キーンが呆れると、もう二人を放っておいて、あらかじめ準備していたジュースを飲み、体を休めた。
「はあ、酒が恋しい。」
ザッバーンと波を切る音が心地よい。
真っ暗。何も見えない。
椅子に座って目を閉じ、風を受けていると、いつのまにかディアルトは眠りについていた。
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