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31 仲間と共に進む空
しおりを挟むドシンという振動と共に鐘が鳴り響いた。そして到着の鐘が続けて鳴り響く。
寝ていたディアルトには、ほぼ一瞬に思えた。
「ふぇ。」
リヴィエラの隣で、同じく寝ぼけ眼のララも目を覚ます。
「おはようです。」
「あ、おはようございます。」
リヴィエラとララがお互いに頭を下げると、すでに下船を始めている人たちの姿が見えた。
「おい、行くぞ。」
「あ、アンラお兄ちゃん。ありがとう。」
ララの荷物を担ぎ上げたのは、長身で筋肉質の男だった。右肩には重い工具がぎっしり入った革袋、左肩には丸められた設計図が複数枚。
「アンラ、その二人の御守りを頼むぞ。年寄りにはちょっと疲れた。」
「ああ、慣れている。」
キーンが手を挙げて、逃げるように先に下船していく。
まだ物珍しさに甲板を探索しているディアルトと、もう一度椅子に座って眠り出したララの手をそれぞれ引き、アンラも下船した。
「お兄ちゃん、まだ眠い。」
「はいはい、朝ごはんはあっちだよ。」
「はーい。」
あらかじめ決めていた、レンとミクシアとの合流地点へと急ぐ。
「いろいろな装置を発明してきたが、空を飛んだのは初めてだ。こいつを参考にして、空飛ぶ装置を開発したくてウズウズする。」
ミクシアはレンの両足に縄を繋ぎ、そこにブランコのように座ると、空中で羽を観察しながら記録を取っていった。
骨と筋肉の形状、羽の造り、羽ばたきの動き方、からだと羽の比率……細かく観察しては紙に書き込み、設計図を作成していく。
ジロジロ見られて、あれこれ触られて、レンはくすぐったそうにしながらも、言われた通りのテンポで羽を動かした。
激しく羽ばたき、あるいは固定して滑空し、ミクシアの要求に丁寧に応えていく。
「なんか照れるね。」
「ああ、こんな素晴らしい見本はない。誇ってくれ。」
ミクシアが笑った。
昼過ぎ。キーンが指定した場所で、ディアルトとレンは無事に合流した。
人気のない深い森の中。そこにはディアルトとレン、ミクシア、そしてキーンをはじめ工作場の20人が集まっていた。他には誰もいない。
「船で知り合いの船員に聞いたのだが、このカランはすでにイルエスタの支配下にあるとのことだ。つまり独立国のカランではなく、イルエスタ王国カラン地方になっているらしい。事態は思ったより進んでいるかもしれない。」
キーンが地図を指差しながらミクシアに説明する。
「俺らの目的地、コランは?」
「表向きは無抵抗でイルエスタ王国への従属を受け入れる考えらしい。だが、本心ではそうではなさそうだ。」
「そうか。複雑そうだな。警戒しながら、とりあえずコランへ急ごう。」
その時、背後からズズッと何かが動く音がした。
ミクシアとキーンが瞬時にその方向へ身構える。
物陰から男の子の声。
「パパ。」
消え入りそうな声。
緊張があたりを包む。ディアルトも腰の剣に手をかけて身構えた。
「その声は……コーンか?」
キーンが声をかけると、幼い男の子が姿を現した。
「パパ、おかえりなさい。」
男の子はキーンに駆け寄ると、抱きついた。
その横に、ミクシア達と同じぐらいの年齢の青年が現れる。
「父さん、おかえり。コラン国王の側近ジーン様の命令で迎えに来ました。コーンがどうしても行くって聞かなくて。」
「おう。クーンが一緒か。お役目ご苦労。」
無邪気にキーンに抱き着くコーンの後ろから、兄クーンも一礼する。
親子はそっと手を握り合った。
「急いで。ここは戦場になるかもしれない。早くコラン国に入って。」
「どうした?なにかあったのか?」
「移動しながら事情は話します。本当にやばいかもしれないから。」
「お、おう。わかった。」
兄クーンが先導し、暗い森の中を隠れるように静かに歩くと、さらに複数人が待機していた。
そこには十数頭の騎馬が用意されており、ミクシア達はそこから一気にコラン国へと急いだ。
「レン、俺たちも急ごう。」
「おう。」
上空では、深紅竜レンの足に掴まったディアルトが、先頭を駆ける兄クーンを追いかけていた。
思ったより速度が出ない。
レンの足には、さっきよりもさらに重い荷物が縛り付けられていた。
「あの、大丈夫?」
「大丈夫。私、軽いから。」
「え、いや、落ちないでね。」
「筋肉の動きと羽の動きが……ほう、からだの動きが羽ばたきとリンクするのか。羽が細かく微細運動して、風の抵抗を。あ、羽に細かいギザギザがあるのか。」
レンの足に縛った縄で、ブランコのようにディアルトと一緒にララも飛行していた。
「ぎゃぁ」
ララがレンの足の筋肉をギュッと押すと、くすぐったさにレンがバランスを崩す。
「ちょっと、くすぐったいと落ちちゃうから、やめてよ。」
「ほう、くすぐったいのか。それは興味深い。」
「本当にやめてよ!」
それからララがペタペタ触れるのを我慢しながら、レンは飛行を続けた。
地上では、ミクシア達が全速力で一直線にカランを抜け、コランへと進んでいった。
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