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32 大陸を揺るがす陰謀
しおりを挟む風を切って全速力で草原を駆けていく。
「戦場になる?ここカランはすでにイルエスタ王国の従国になったのだろ?誰がどうして?」
ミクシアがトップスピードで目を細める。
「カランからも出てきたからだよ。」
「まさか!」
「そう、あの不思議な石、原石が発掘されたんだって。」
後方で聞いていたキーンが騎馬のスピードをさらに速め、ミクシアの横に並ぶ。さらにその横に、カランで待機していた男も並走する。
「こいつは、俺と同じくコラン出身で、昔からの友で信頼できる男だ。クロタク。知っていることを教えてくれ。」
クロタクと呼ばれた、キーンと同じぐらいの年齢の高齢の男が、一度小さくミクシアに頭を下げる。
それに対し、ミクシアはさらに深く礼をした。
「カランがイルエスタ王国に吸収されたのは、ケランの原石発掘にカランが協力すれば、現在のカラン国の体制を維持したままイルエスタの多大な支援を受けられるという裏取引があったからだそうだ。この大陸は潮の流れと岩場が多いため、外部からはカランの港以外から入ることができない。だから、その利便性を考慮してカラン国を支配したのだろう。」
「それが何故カランから原石が?」
「ケランの研究者がひそかに他国でも発掘を進めていたそうだ。そして運が悪いことに、原石のかけらが見つかってしまった。ケラン国だけが破壊されるのに納得がいかなかったのだろう。」
「心情的にはわからなくもないが、傷口を広げただけだ。」
ミクシアが首を振る。
しばらく騎馬は駆け続けた。
さすがに体を震わせ、ゼイゼイと深い息をして疲れを訴える。
近くの水場にキーンが誘導すると、そこでいったん休憩をとった。夕方、もう日が暮れかけている。
ミクシア達は自分たちの持ってきた水で喉を潤すと、騎馬たちにはその細い川の水を与えた。
「さっきの続きだが、これは最新の情報だ。カランとケランを一緒に発掘するという方針がイルエスタ王国で採択されたそうだ。」
「発掘って、穴を掘るの?シャベルで?」
クロタクの横でディアルトが真剣な顔で問いかける。
「あのな。おそらく、大きな爆薬でドーンじゃないか。」
ミクシアが両手を広げてその状況を表現する。それからすぐに真顔に戻る。
「いや、イルエスタは原石の研究結果を試そうとしているのかもしれない。」
「なんの?」
「セイシュ–イシュ歴史書、知ってるだろ?」
「うん、エクシアの家で読んだ。」
二人の会話を他の者たちは固唾を飲んで耳を傾ける。
「原石同士をぶつけると激しい爆発を起こすって、あれだよ。」
「えっ、さっきの話だとカランとケランって離れてるよね。北西と南東だっけ。」
「だから想像したくないが、この大陸そのものを吹っ飛ばすんだよ。」
「危ないじゃん!」
「だから想像したくないって言っているだろ。」
「歴史書だと山を軽く吹き飛ばしたらしいからな。イルエスタではその威力を最大限に高めた爆発技術はすでに完成しているが、肝心の破壊力を試す実験ができていないという噂がある。さすがに人がたくさんいるところでは使えないからな。でも、試したくてうずうずしている研究家やお偉いさんがたくさんイルエスタにはいるらしい。ここはイルエスタ王国とは別の大陸だし、影響も少ないだろうな。」
「・・・」
言葉を失った。しかし実感は湧かなかった。
イルエスタを知る者達は、それは十分にあり得ることだと感じた。
イルエスタの原石に対する執念は、ほとんど怨念に近いともいわれている。
「暗くなってきたし、今日はここで休むか。火は起こすなよ。誰が見張ってるかわからない。静かに食事をして寝よう。そして夜が明ける前に出発する。体を休めてくれ。」
ミクシアが騎馬に飼い葉を与えるように指示する。
草陰に隠れるように、全員がひっそりと体を休めた。
だが、ほとんどの者は眠ることができず、朝が来るまでなんとなく横になって体を休めた。
疲れたまま朝を迎えると、キーンとクロタクの案内でコランへと向かった。
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