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33 ラン城会議
しおりを挟む北西にカラン、北東にコラン、南西にキラン、南東にケランがほぼ等分割されているラン大陸のちょうど中央部分、4か国の国境が接している土地には、大きな城が建設されており、それはどの国にも属さない。
それはラン城と呼ばれ、共有の財産となっている。
4か国の会合に使う城であり、このラン大陸で最も警備が堅固であり、各国の兵士が自国の兵力を誇るように、最新の兵器が備えられている。
それが互いをけん制する形になっており、騒乱を防ぐ役割にもなっている。
今日はそのラン城に各国の王が緊急に集まることになっていた。
「さて、カランとコランの王はまだか?」
ラン城の最上階、王の間と呼ばれる各国の王しか入ることのできない厳粛な部屋でキラン王とケラン王が円卓を囲って座っていた。
キラン王が南西に、ケラン王が南東に並ぶように座っている。国の位置と一致する場所に座るのが習わしになっている。
「コラン王は病だそうだ。」
ゆっくりとカラン王がその場に現れると、すーっと北西の位置に座った。
「そうか。病弱な奴が国を継いだらしいな。」
「時間も無いことだし、さっそく始めようか。」
北東の位置の椅子が空きのまま、さっそく、ケラン王が話を進める。
「カランの王よ、イルエスタがこのラン大陸に攻め込むというのは事実か?そのあたりの情報を教えてくれ。」
「既にイルエスタの一部隊がこちらへと向かっている。まずは様子見といったところか。おそらく100人程度の少人数だ。」
「なに、もう向かっているのか?予想よりも早すぎる。迎え撃つか、そのまま向かい入れるか。」
「迎え撃つ選択肢はない。イルエスタに降り、彼らの武器や軍隊をこの目で見たらわかるはずだ。悔しいが足元にも及ばない。」
「ラン大陸は天然の要塞だ。カランの港さえ守り切れれば、この大陸を守ることができる。」
カラン王が小さく笑うと、首を振る。
「キランの王も、ケランの王も、イルエスタを実際に見てくるがいい。そんなレベルではない。武器一つとっても、軍隊の動きを見ても、我らは大きく遅れている。争っても無駄に傷つくだけだ。」
「カラン王よ、そなたは、敵の情報を探り、対策を立てるために国をイルエスタに売り渡し、偽りの降伏をしたのであろう。その言い方では、本当の降伏をしたようにも思える。」
「このラン大陸全体の民のことを考えるのであれば、降伏も十分選択肢になり得る。だが・・・」
「だが、そうだな。」
ケラン王が目を瞑り、黙り込む。
その横で、キラン王も、同じように何かを考えこむ様に静かに目を閉じた。
「そうだ。原石が発掘されたケランの民を他の三国に移住させ、ケランの地をイルエスタに明け渡す。その目論見が崩れた。カランからも原石が発掘されたからだ。おそらく、イルエスタはこのラン大陸全体を掘り起こすだろう。」
「この地の民を救うにはどうしたらよいか。」
「そもそも全員を救うことが可能なのか。」
「救える命を救うのが現実的なのか。」
「まずは生きることを優先すべきなのか。」
「この地を明け渡すということも。」
また、しばらく全員が黙り込む。
「申し訳ありません。遅れました。ゴホッ・・」
扉がゆっくりと開くと、若くして王位を継承したコラン王がその場で深く頭を下げた。
そして、小さくゼイゼイと息を吐くと、少し急ぎ足で空いた北東の椅子へと急いで座る。
「さて、コラン王はイルエスタに対し、どのように対応すべきと思うか?」
カラン王が小さく頭を下げると、腕を組んだ。
「はい、私は思い切って、イルエスタの発掘の手伝いをするのもありかと思います。彼らの指示通りに動く労働力を提供する、その代わり、我らを独立国として維持する。そんな交渉ができればよいのですが。」
「ふむ、労働力の提供か。悪くはない提案だ。実は、我らもそれを考えていた。」
ケラン王がうなずく。
「できれば、その労働力に賃金をいただけると、もっといいのですが。カランの王。そんな交渉はいかがでしょうか?コホッ・・・」
「確かに、イルエスタの発掘を商売に結びつけるか。それであれば、ラン大陸からの移住も、争いも回避できるか。なかなかの名案ではないか。」
コラン王が無邪気な笑顔で笑うと、直ぐにゴホゴホと咳を繰り返す。
「そうなると、誰がそれを交渉するかだ。これはラン大陸の命運を握る交渉になる。我ら全員でイルエスタに渡り、直接交渉するのがよいと思うがどうか。」
カラン王が立ち上がって円卓に両手をつき、他の3人の王を順番に見つめる。
「そうだな。妥当な判断だ。」
ケラン王がうなずく。
「この役目、他には任せられない。」
キラン王もそれに同意する。
「ゴホッ、でも、この状況で各国の王がこの地を離れるのは、危険ではないでしょうか?」
コラン王が少し引いた姿勢で疑問を投げかける。
カラン王とキラン王とケラン王が同時にお互いの視線を合わせた。
「コラン王よ、これは誰が欠けてもダメなのだ。察してくれ、我らが直接イルエスタに向かう意味を。」
「??」
「なんなら、重臣や家族も一緒に連れて行くがよい。」
「逃げる気ですか?ゴホゴホッ・・」
「それは違う。我らは多くの民を救うためにイルエスタに交渉に行くのだ。戦力でも勝てない、民も逃がすことができない、最後に残された手段は交渉だ。これは命がけだ。」
「・・・」
「だが、我ら王族の血を絶やすことはできない。それも真実だ。」
「・・・そっちが本音ですか?ゴホっ・・」
「民を守る。我ら自身も守る。どちらかをとることはできない。」
「確かにその通りですね。理解します。」
コラン王がコクンと二度頷いた。
それからしばらく、具体的な交渉の手段や日程、人員や費用負担について、内容の調整を進めた。
さらに、場所を変えて各国の事務担当者やイルエスタへの案内者を交えて、具体的な対応を定めていく。
それは二晩続いた。
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