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36 地下室の設計者
しおりを挟む「キーン!帰ってきてるんだろう?」
キーンの嫁に案内されて、一人の正装をした男がドタドタと部屋に入ってくる。
「ジーンか。久しいな。元気だったか。」
ジーンはキーンの友人で、コラン国王の側近でもある人物。
ミクシアが深く頭を下げて挨拶をすると、それにジーンも同じように応えた。
「お、こちらは?」
「チャクミの王子ミクシア、俺の主人だ。」
「俺は、主人になったつもりは今まで一度もないが。」
困惑した表情でミクシアが笑う。
「チャクミの王子であるエクシア様のことは聞きました。お気の毒でした。」
「はぁ、もう情報が広まっていますか。」
「情報の収集が私の仕事ですので。」
頭を下げるジーンに、ミクシアは少し悲しい顔をした。
「重要な情報がある。ちょっと相談に乗ってくれないか・・・二人で話したい。」
ジーンがキーンに目配せをすると、離れようとするミクシアとディアルトをジーンが止める。
「この二人は信用できる。この場で話してくれないか。」
「ちょっと大切な、危機的な話なんだ。二人で。」
ミクシアがディアルトを連れて離れようとすると、それをジーンが再び止める。
それを見て、ジーンがうなずくと、手招きをしてミクシアとディアルトも近くへ呼び寄せた。
「驚くな。実はイルエスタが攻めてくるとの情報があってな、国防の意見を聞きたい。」
ミクシアが二度うなずくと、ちらっとキーンに視線を移してから、アクシアからの手紙を手渡した。
「これは?本当ですか?本当に原石を組み合わせた兵器なんてこの世の中にあるのですか?」
信じられない表情でジーンがミクシアとキーンをじっと見つめると、二人が同時に真剣にうなずいたことで、現実であることを理解する。
「まさか・・・4日後・・・しかし・・・どうすれば・・・対策は・・・。」
「・・・」
震えるジーンの背中を支えたキーンは、視線を外し、ただ目を瞑り下を向くだけだった。
「破壊するなら海上だな。」
ミクシアがつぶやく。
「・・・」
「ただ、やられるのを待っているわけにもいかないだろ。」
キーンが首をゆっくりと振る。
「ミクシア達はこの大陸の端の方へ避難をしてくれ。中央での爆発であれば、大陸の端までは被害は無いはずだ。」
「コランのことは我らが対応します。他の方々を巻き込みたくありません。」
キーンの真剣な顔にジーンが同意した。
「私の友のキーンの故郷が吹き飛ぼうとしているのだ、逃げるわけもいかないだろう。どうも私はキーンの主人らしいからな!」
ミクシアは大きな声で笑った。なぜか、つられてディアルトも笑った。
「でも・・」
キーンが戸惑う。でもミクシアはそのまま笑っていた。
「ラン大陸へ渡るには必ず船での移動が必要になる。その船を沈没させれば、原石ごと海の底だ。他は考えつかない。」
腕を組んだミクシアが大きく頼もしく見えた。
「そうだそれがいい!」
ディアルトもまねをして腕を組み、笑った。
「それには、あいつらの手を借りる必要はあるがな。」
ミクシアがジーンやキーンに手招きをして、地下室へと一緒に進んでいった。
チャクミから持ってきた、いろいろな工具をキーンの家の地下室で広げて工作機器のメンテナンスを始める。
「んで、射程は?角度は?具体的な地図があると助かるんだけど。地形の高低図も欲しい。」
どこからか持ってきた机の上に大きな白い紙を広げると、チャクミから一緒に来たララが、ミクシアのイメージする装置の設計図をスラスラと描いていく。
「火薬はこれくらいでいいか!」
「羽はこのタイプで」
「それじゃ飛行距離が足りねー」
「そいつはこっちだ」
「早いとこ準備しねーと」
「この設計こうしないか?」
『バシ!!』
「私の設計に文句言うと叩くよ?」
「叩いてから言うなって!」
一斉に笑う。
ミクシアを中心に工作場の面々が水を得た魚のように動き始めた。
工作場がチャクミから変わっても、今まで通り、誰が何を言うでもなく、それぞれの役目をこなしていく。
足りない道具はジーンがどこからか急いで運んでくる。
キーンの家の周りは、コランからの材料運搬の列が続いた。
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