38 / 62
37 私の設計は完璧
しおりを挟む「よし、じゃあ場所を移動しようか。地下で組み立てるわけにもいかないからな。部品をカランの港まで移動させて、そこで組み立てる。」
一旦離れていたミクシアが戻ると、地下室から仮組した部品を運ぶように指示を出す。
表には立派な騎馬が複数準備されており、大急ぎで部品を運搬する手はずを整えていた。
運搬の効率化のために途中交換させる馬も準備して、一気にカランの港まで運ぶらしい。
既に作業を始めてから、一日が経過しようとしていた。
全員本当の不眠不休。
さすがに言葉少なく、イライラする様子も見受けられる。
このタイミングで少し手を休められるのは、誰もが心の底からの解放感を感じることができた。
「あーーー明るい。やっぱ昼か。」
工作所の誰かが叫んだ。地下室から地上に上がると、大きく伸びをして太陽の方向にからだを向けてその熱と光をいっぱい受ける。
自然の風と新鮮な空気に、大いに満足する。
「ちょっと休憩してくれ。コランの特産物を使った料理を準備させた。装置の移動はこっちで責任をもって進めるから、運搬指示だけはくれ。」
ジーンが料理を運び込むと、ミクシアが地下に戻り、コランの運搬役に丁寧に運ぶ方法や注意点を伝える。
他の者はキーンの家の庭に準備された料理をパクパクモグモグバクバクと食べ、その太陽の日の下で仮眠をとった。
工作所の者達は、コランが準備した馬車での移動となり、その移動中はドタドタと振動で揺れはしても、そんなことは気にせずに、眠れることに喜びを感じながら、からだを休めた。
「はい、ここが角度的にも、距離的にも、視覚的にもベストだと思います。ちょっと風の影響を受けますが。」
カランの港を眼下に見下ろす山の中腹で、チャクミ工作場の数学が得意なマスモが、周囲を細かく調査した結果から導き出された設置位置の計算を終了させた。
そこからは、海が遠くまで見通せる。風がビュービューと音を立てて強く吹いていた。
「予想していたより風が強いな。」
ミクシアが空を見上げると、この山の中腹よりも高い位置の木々が強く揺れている。
それに小さく首を傾げて少し考え込むと、一度うなずいた。
「まあ、ここにしよう。」
ミクシアの指示で外から見えないように白い布で四方を目隠しした空間が準備され、その周りを護衛の兵士が囲った。
それと同時に、金属製の重厚な筒や、土台となる部位を大人数で運び込み、さらにそれらの組み立てを補助するコランの技師も10数人手伝いに加わった。
「ふぇ・・・こんな短時間で設計して組み立てまでできるのかね?すごい技術だ。」
組み立て補助の一人が、まだバラバラな部品の羅列ではあるが、その完成形が予測できる状況に大いに感心した。
それはロケット型の爆撃砲。固定砲台で航海中の原石を積んだ船を精度よく狙い撃つには最適の性能を有しているものだった。
ただ発射して飛行させるだけだったら簡単な造りで問題ないが、今回は動く船をピンポイントで、高精度で撃ち抜く必要がある。
しかも、試射はできない。警戒されたら、イルエスタ船の回避を予想した複雑な戦略が必要になる。
逃げられて原石の存在場所がわからないと、もう、どうにもならなくなってしまう。原石を積んだ船の航路と時間がある程度予想できているこの機会を逃すわけにはいかなかった。
もう、コランの都合の良い条件が重なることを祈るしかなかった。
「私の設計は完璧。」
ララの寝言。どんなに起こしても、起きない。
「もう設計の仕事は終わりだろう。そのまま寝かしておけ。」
ミクシアがよだれを垂らして大股開いて寝るララに、持っていた白い布を放り投げて姿を隠した。
結局それを3台組み立てるのにさらに1日を費やした。
指定した山の中腹に、距離を等間隔に少し離して3台の設置を完了させる。
「なんとか間に合ったか。」
キーンが疲れて倒れて眠り込むチャクミの工作場の人々を眺めながら、その3台の爆撃砲の可動域や火薬の状況をチェックする。
「そうだな、やればできるってことだ。」
ミクシアも地面に座り込んで、眠たそうにウトウトしている。
夜明け。
今日がイルエスタが原石をこの大陸に運び込み、爆破実行する予定の4日目。
何とか間に合ったという達成感と、いつ運び込まれるかという緊張感。
とりあえずこの場の見張りはコラン国とカラン国の兵士に任せて、からだを休めた。
「ディアルトとレンはまだか?」
ミクシアが空を見上げた。
27
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる