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37 照準の先に
しおりを挟む「さて、とりあえず爆撃砲の砲撃手は角度の設定や弾込めの最終チェック、それ以外は今のうちに腹ごしらえだ。」
ミクシアのもとには、途切れることなく兵士が状況の報告のために往来する。
「おう、そこで待機だ。このまま身を隠しておいてくれ。何かあったら静かに伝えてくれ。」
疲れた顔でミクシアが空を見上げる。
曇り空。
どんよりと雨の降りそうな厚い雲が全体を覆っている。おそらく今夜は星も見えないだろう。
それから少し経つと、完全に真っ暗になった。
身を隠すために、明かりも足元にわずかな蝋燭の薄光だけ。
眼下のカランの港の明かりだけが頼り。それも最終便を受け入れてもうすぐ消えるだろう。
「暗闇だと、イルエスタの船が乗り入れられても見つけられないのではないか。とても砲撃なんて照準があわせられない。」
「今頃気付いたか。」
ジーンがミクシアの真正面から心配そうな顔をする。
「と、いうことは解決策もあるのだな。」
「おう、祈っててくれ。」
「祈る?おい・・・どういうことだ?」
「俺も祈るだけだ。悪い、そこどいてくれ。忙しい。」
「お、おい。何か手伝えることはないか?」
「コラン王は?」
「カランの城に残っている。病気の状態が悪いのもあるが、俺らと運命を共にすることを決めたようだ。」
「迷惑だ。いざという時にそこまで守る余裕がない。退避させてくれ。悪いが本当に邪魔だ。」
明らかに疲れた表情で粗野な言葉のミクシア。
その間にも定期報告の兵士やチャクミの作業場の仲間が列を作ってミクシアへの報告や問いかけを続ける。
ミクシアはそれらすべてを適切に対処してみせた。
赤い光。
僅かに空をすーっとなぞると、迷う円を描く。
「ララ!合図だ!」
ミクシアが静かに叫ぶ。
「へ?うい!」
ララが地面に設置された筒の中に玉を入れると、そこに火を投げ入れる。
音無く上空に打ち上げられると、僅かな光と小さな煙がそこに一直線を描いた。
赤い光が舞い上がるように上空で円を描くと、螺旋状にミクシアの元に降りてくる。
先にディアルトが地面に飛び降りると、一度羽ばたいてからレンが着地した。
「遅かったな。どうだった?」
不満顔のディアルト。
「遅かったって、あの広い海の中から小さな船を探すって、すっごい大変だったんだ。」
「それはご苦労だった。で、どうだった?」
「駄目だった・・・。あの液体、船にかからないで海に流れてった。ごめん。」
悲しそうな顔をするディアルト。
「そうか。そうか。そうだったか。駄目だったか。わかった。ご苦労。」
ミクシアが両目を瞑ってうなだれた。
「ディアルト、あまり冗談を言える状況じゃないと思うよ?」
ディアルトの横でレンが大きな深紅のからだを震わす。
「・・・あ?」
「ちゃんとかけてきたよ。言われた通り。」
ディアルトがそっぽを向いて嫌々告げる。
「お前なあ!!こっちがどんだけ切羽詰まっていると思っているんだ!!」
「そっちこそ、遅かったっていったじゃんか!大変だったこっちの気も知らないで!!」
「それは悪かったな、よくやってくれた。失敗していたら、すべてが詰んでいた。」
ミクシアがディアルトの肩に触れ、レンの背中を撫でた。
「本当によくやってくれた。」
ようやく、ディアルトが笑顔になった。
「よし!すべてがそろったぞ!チャクミの工作場員は全員配置に着け!コランの兵士はあらかじめ指示をした場所で警備を進めてくれ。」
ミクシアが両手を広げると、周囲が一斉に動き出す。
「キーンとジーンは俺の近くで待機をしておいてくれ、動いてもらう。あと砲撃手の3人をここに。」
ミクシアの前にチャクミ工作場からの3人の青年が姿を現す。
「これから巨大な爆弾を積んだ船を撃退する。船にはヒカリゴケがかけられているから夜はよく光るはずだ。そして船が通過した跡には光が流れている。俺が合図をしたら船の進む先に一斉に砲撃をしてくれ。装弾はコラン兵士に協力をしてもらう。お前たちは照準をつけてただ砲撃を続ければいい。」
「はい!」
3人が同時にうなずくと、砲台に戻って行った。
「さて、後は待つだけだ。レン、ディアルト、悪いがもう一度空からイルエスタの船を偵察してきてくれ。何かおかしいことがあったらすぐに伝えてくれ。」
「わかった。」
レンが羽ばたいて少しからだを浮かすと、ディアルトが足に掴まり、そのまま港の海の方向へと飛び立っていった。
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