炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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42 沈黙の砲火

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 ララが大きな設計図を広げる。その紙は油で汚れ、無数の修正跡が重なっていた。

 筒を付け替えて一回り大きくて頑丈な黒く輝く砲台に改良し、土台の代わりに地面にボルトを打ち込んで固定し、精度向上のための部品を追加して、本来の爆撃砲をさらにパワーアップした姿を作り出す。
 
 レンとディアルトが空から風を切り、ひゅーっと戻ってくる。
 
 「耳が変になっちゃったよ!なんなのあれ!?」
 ミクシアは笑った。

「だから、おまじないみたいなものだ。特に意味はない。これから行う本番の照準合わせだと思ってくれ。」

「わかったけど。」

 ディアルトはまだ耳がキーンとなっているようで、片足でトントンと跳ねては、首を振った。

「それで、イルエスタの船は?」

「だいたいこの辺り。」

 ディアルトが地図を指差す。それは、まだここからは視認できない距離だが、爆撃砲の射程範囲。

「よし、大勝負だ。ディアルトとレンはこの灯りをもってイルエスタの船の先端部上空を飛んでくれ。できれば爆弾に直撃をさせないで船ごと海に沈めたい。起爆しないで永遠に沈んでくれるのを祈る。」

「わかった。大役だね。」

「船の上空で30数えるまで並走してから、その明かりを船に上空から落としてくれ。ちょうど先端に落ちる位置にだ。その速度と高度から位置を補正して発射する。」

 ディアルトとレンがうなずく。

「あのさ、風は吹いてる?」

 ララが地面になにか難しい数式を記載して手を止める。

「すごい吹いてる。」

「方向は?」

「海からこっちの方向だね。気を抜くとレンから振り落とされそうなぐらい。」

 ララが考え込む。

「難しいのか?」

 ミクシアが心配な顔でその数式を覗き込む。

「うーん。破壊力を考慮してこの弾丸の径は大きいんだよね。結構、風の抵抗を受けちゃう。小さい方を使えば抵抗は受けないけど至近距離じゃないと船を破壊できないし。ここからだと間違いなく大きい弾丸しか選択肢はないね。困った。」

「よし、大きい方でいこう。やるだけやって、駄目ならそこまでだ。あきらめもつく。」

 ミクシアが笑う。

「あのさ、私が計算を失敗すると思ってんの?風ぐらい補正できるって。」

 ララが笑う。
 周りにはチャクミの作業場の仲間も集まる。

「なるようになるさ。あくまで可能性の問題だ。」

 ミクシアが使用しない小さい弾丸を持つと、中を開いて色々手を加えながら笑った。

「それじゃあ、ディアルトとレン、頼むぞ。お前たちにかかっている。」

「緊張するからやめてよ。」

「まあ、大体の位置で大丈夫だ。後は俺らの腕の見せ所だからな。」

「それだったら大丈夫。じゃあ、行くよ!!」
 レンが大きく羽ばたくと、赤い光を持ったディアルトと一緒に上空に舞った。

「よし、照準を合わせるぞ、角度と距離の計算は頼んだ。」

「任せてください。」

 チャクミ工作場の数学が得意なマスモが、地図を広げてから、ララが地面に記載した数式にスラスラと書き足していく。

「後は、あの竜と少年との距離と速度、高度を代入できれば完成です。」

「よし。」

 全員が離れていくディアルトとレンの赤い光をじっと眺めた。
 暗い空に赤い光がゆっくりと移動する。

 たまにユラユラと揺れるのは、風の抵抗を受けているのだろう。
 どんどん赤い光が離れていく。

「ちょっと緊張するね。」

 ララが小さく震えて笑う。

「大丈夫だ。きっとうまくいく。俺らは頑張ったからな。絶対報われる。」

 ミクシアが視線を赤い光から離さないまま、小さい弾丸に配線を付けくわえて火薬をさらに追加する。

「止まった。あそこだ!」
 ミクシアが目を細める。

「距離は、大体わかりました!あとは速度だけ。」

 ゆっくりと動く赤い光。
 しばらく一定速度で動くと、上空から赤い光が揺れて落下した。

「思ったよりゆっくりですね。距離と速度はだいたいわかりました。後は風の補正で、あの光の揺れだと、こんなもんかな。」

 マスモが地面に書かれた数式に距離と速度を代入し、それに風の補正係数を加算する。

「どうでしょう?」

「もうちょい風の補正が大きい方がよくない?」

「これくらい?」

「ちょっと大きすぎかな。」
 ララが手を加える。
 その数値でマスモが砲台の角度と着弾までの距離を即座に計算する。

「こんな感じです。」
 マスモが計算を終えると、ミクシアがそれを見ずにうなずく。即座に撃ち手に設定値を伝える。

「はい、承知しました!」
 丁寧に、慎重に砲台の角度を設定すると、もう一人が数値に間違いがないか、ダブルチェックを行う。

「あとは、船が指定位置を通過するのを待つだけです。残り30」
 マスモが手を挙げてミクシアに合図をする。

「よし、砲撃手以外はここから退避してくれ。できるだけ遠くに離れて丈夫な建物に隠れてくれ。津波が来るぞ。」
「残り25」

「早く、少しでも離れるんだ。ここからは俺がカウントする。残り20。マスモ、お前も避難しろ。」

「あのさ、ここが特等席でしょ。なんで逃げるのさ。残り15」
 ララがミクシアの肩をポンと叩く。

「まあ、そうだな。独り占めはずるいぞ。残り10」
 キーンがミクシアの横で同じように肩をポンと叩く。

 誰も逃げる者はいない。ミクシアの周りに集まる。
「お前ら。よし、全員で行くぞ!残り5!」

「4!」

「3!」

「2!」

「1!」

「撃てぇ!!!」

 爆音と白煙が砲台から吹き溢れると、海に向かい弾丸が放射される。

「ひゃあ!」
 ララがその反動で吹き飛ばされる。

 ミクシアが慌ててぎゅっと抱き留める。
 全員が既に確認できないその先に一斉に視線を向ける。

 静寂を裂く、小さな破壊音。

 それだけ。
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