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48 希望を仕込む夜
しおりを挟むその晩。
「少しだけ、ゆっくりできた。」
わずかに眠っただけでも、頭がすっきりしているのが分かった。
上半身を起こして息を吐き、周囲を見回して、また小さく長く息を吐く。
「お揃いで。」
ミクシアが笑う。
キーンとジーンは深刻な表情で周辺地図に何かを書き込んでいる。
ララは何かの設計図を赤ペンで修正中。
ディアルトは静かに文字の練習をしている。
他のチャクミ作業所の者たちは、寝たり、本を読んだり、おしゃべりしたりと、全員集合して思い思いに過ごしている。
警備兵も数名、部屋の中を見回っている。
ぎゅうぎゅう詰めの室内。
よく文句も言わず待機していたものだと、ミクシアは少し感心した。
「それでは調査結果だ。武器は剣が五百本ほど、盾も同じくらい。弓矢も同じぐらいだ。ただ、それを扱える兵士は各拠点に十人ずつ警護を残すと、実際に動かせるのは合計三百人ほどだ。」
キーンが調査結果の記された紙をミクシアに渡す。
「平和な国だな。狩りの時代の自給自足か。」
ミクシアは苦笑する。
自身で見て回った感触どおり、予想の範囲内。
「臨時政府から、ラン大陸の兵士はすべてミクシアに協力するようにとのお達しだ。」
「そりゃ光栄です。」
ミクシアがまた苦笑した。
他国出身の自分に頼ってきた時点で、これも想定内。
もはや、国内には頼れる者がいないのだろう。
キーンが地図を広げる。
ラン大陸の重要拠点、港付近の地形、潮流と海深が細かく書かれている。
「ここに、前に見せてもらったララスペシャルを設置できるか?」
ミクシアが地図の一点を指し示し、ララに確認する。
「うーん。無理。材料が無い。あと時間も。」
「材料はあのおじさんたちが全部手配してくれる。百人貸してやる。チャクミ作業所の全員もつける。できるだけ精密で、頑丈なやつだ。」
ミクシアがジーンとキーンを親指で示す。
「でもさ、自分で言うのもなんだけどさ、あれ危ないよ?構想段階だし。実際に作ったこと無いし。失敗したら普通に死ぬし。」
「一日やる。それでなんとか頼む。」
「あのさ!一日って、材料集めるだけでも足りないでしょ!?しかももう夜だし!」
「ほらほら、そうしてる間に時間は減るぞ。配置場所はマスモに相談してくれ。この地図に地形、全部書いてある。」
「一日じゃ無理!じゃあ、一日でできるもの作るからね!?どうなっても知らないからね!?」
「任せる。」
「じゃあ、もう、あれ作っちゃうからね!!」
「おう。他にも手は考えてある。ララスペシャルは奥の手ってやつだ。」
「うし!最高傑作、創っちゃる!!」
ララが勇んで部屋を飛び出し、チャクミの工作員たちも緊張した顔で追いかけていく。
ミクシアが指でジーンとキーンに合図を送る。
「ララの指示に従って材料集め。それと工作も手伝ってくれ。運び込み、設置にも人がいる。総動員で頼む。」
「それはいいが、他の手って?そっちにも人手必要なんじゃ?」
「無い。ララに全部賭けた。」
「おいっ!」
「大丈夫だ。ララはしくじらない。ちゃんと納期は守るし、失敗なんてほぼ無い。たまにしか屋根を吹っ飛ばさない。」
「何回も作業所の屋根ぶっ壊してるの知ってんぞ、俺は!!」
キーンが顔を真っ赤にする。
「まあ、だめだった場合は作戦Bだ。」
「なんだそれ。」
「全員で逃げよう。」
キーンもジーンも表情を変えない。笑わない。
「とりあえず、俺とジーンもララの手伝いに行く。ミクシアは?」
「俺はもう少しあがく。それと、カルゴ港付近に大砲をずらっと並べて威嚇する配置を頼む。配置はここだ。」
ミクシアが地図に書き込む。
「大砲なんか、この大陸には無いぞ?」
「壊れた砲台でも、形が似ていればいい。遠くから見たら全部大砲に見える。」
「なるほど。すぐ手配する。」
キーンとジーンが急いでララの後を追っていった。
「さてと、俺も頑張るか。」
ミクシアが立ち上がり、全身を伸ばし、ディアルトを連れて外へ出ていった。
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