炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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49 退路無き者たち

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 トントントン。

 ララが木製の円形テーブルに広げた大きな紙へ、定規を使ってスラスラと図面を描き込んでいく。
 カランの港に近い、少し開けた草原には松明が赤々と燃え、異様な夜の気配が漂っていた。

 細かな部品はチャクミの作業員たちが手分けして製作し、百人の兵士とキーンとジーンが、ララの指定した材料を入手する役を担っていた。

「なんだこれ? 意味が分からんのだが?」
 ジーンが手渡された準備材料リストを、松明の灯りを頼りにキーンへ見せると、一つ一つ説明が返ってくる。

「説明されたところでさっぱりだ。欲しい材料は持って行っていいと言われてるから、一緒に来てキーンが選んでくれ。兵士たちに運ばせる。」

「どこかに材料倉庫でもあるのか?」

「カラン城とカラン港、その他どこからでも、何でも持って行っていいそうだ。まあ、コラン城まで戻る時間は無い。そういう状況ってことだろう。」

「すごいな。よし、急ぐぞ。ララの優先順位どおりだ。」

 ジーンとキーンはカラン港へ急ぎ、停泊中の船から部品を外し、馬車から車輪を外し、建設中の現場から防水布を回収したりと、次々に材料を調達しては、兵士にララの元へ届けさせた。

「意外と順調だな。今のところ全部そろってる。」
 ジーンが満足げに笑う。

「ララが実際に見た物からしか必要にしてないんだろう。ミクシアもララも、今ある物で作るのが得意だからな。」

「ほう…感心することばかりだ。」

「ああ。チャクミの作業場は皆が特技を持ってるが、あの二人は別格だ。誰にも真似できん。…さ、急ぐぞ。」

「よし、次行こう。」

「しかしまあ、こんな夜中に材料運んでたら盗賊と思われそうだな。」
 キーンとジーンが笑い合いながら、なおも材料の調達を続けた。


 ララの設計に基づき、ミクシアが全体の指揮をとって完成を急ぐ。
 精度が求められる工程が増えてきてからは、チャクミの作業員のみが分担して仕上げるようになっていた。

「ジーンたちは、イルエスタが攻めてくる情報をどうにか高い確度で掴んでくれ。それに合わせて配置を進める。」

「わかった。と言っても、どこまで力になれるか分からんが。」

「できる範囲で頼む。」

 徹夜作業が続いた。

 朝が来て、昼が過ぎ、夕方。
 交代で少し眠りながら、カランとコランで準備してくれた食事をモグモグと頬張り、最後の調整に取りかかっていた。

「すまん。イルエスタの情報は得られなかった。」
 ジーンが頭を下げる。

「見張りを続けて、海に少しでも異常があれば連絡をください。やっぱり、ララの翼を使って探るか。」

「手が離せないから、嫌々だけど貸すよ。」
 ララが工具を振り回しながら、翼の保管場所を指差す。

「僕に行かせて。」
 ディアルトが、ララの作った翼をじっと見つめた。

 似ている。
 
 レンに。
 
 胸が少し痛い。寂しい。
 だけど、勇気が湧いてくる。 
 不思議な感情。

「レンの翼をそのまま真似してるからね。人が使うために色々改良はしたけど。」

「うん。すごく似てる。柔らかさも、形も。でも…だいぶ大きいし、軽いんだね。」

「扱いは少し複雑。コツがいるよ。」

 ララは翼をディアルトの両腕に装着し、外れないように丁寧に調整する。

「これで空、飛べるの?」

「私の発明だよ? 一定間隔で羽ばたくの。鳥の気分ってやつ。」

 ララが簡単に飛び方を説明する。
 どう考えても無理だとディアルトは思う。

「こう?」
 翼を軽くパタパタ。

「うわっ!!」
 足元がふわっと浮き、慌てて動きを止めて着地した。

「原石っていうのを使ってるの。超貴重だからね、絶対なくさないでよ。」

「原石、う、うん。」
 驚きで身体を固くしながら、翼を軽く触る。
 懐かしい感触がした。

「あ! こら! あまり触らないで! 微妙なバランスで成り立ってるの!」
 ララが工具を投げる真似をして、ぷんすかと怒る。

「ご、ごめん。」

 その後、少し羽ばたきの練習をしただけで動きに慣れ、風をつかんで海の方角へと飛び立っていった。
 風に乗って、そのまま夜空の高みへと舞い上がる。

「なんかさ、レンと一緒にいるみたいだ。」
 ディアルトが笑った。
 涙が頬を伝って落ちた。
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