炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

文字の大きさ
52 / 62

49 退路無き者たち

しおりを挟む
 トントントン。

 ララが木製の円形テーブルに広げた大きな紙へ、定規を使ってスラスラと図面を描き込んでいく。
 カランの港に近い、少し開けた草原には松明が赤々と燃え、異様な夜の気配が漂っていた。

 細かな部品はチャクミの作業員たちが手分けして製作し、百人の兵士とキーンとジーンが、ララの指定した材料を入手する役を担っていた。

「なんだこれ? 意味が分からんのだが?」
 ジーンが手渡された準備材料リストを、松明の灯りを頼りにキーンへ見せると、一つ一つ説明が返ってくる。

「説明されたところでさっぱりだ。欲しい材料は持って行っていいと言われてるから、一緒に来てキーンが選んでくれ。兵士たちに運ばせる。」

「どこかに材料倉庫でもあるのか?」

「カラン城とカラン港、その他どこからでも、何でも持って行っていいそうだ。まあ、コラン城まで戻る時間は無い。そういう状況ってことだろう。」

「すごいな。よし、急ぐぞ。ララの優先順位どおりだ。」

 ジーンとキーンはカラン港へ急ぎ、停泊中の船から部品を外し、馬車から車輪を外し、建設中の現場から防水布を回収したりと、次々に材料を調達しては、兵士にララの元へ届けさせた。

「意外と順調だな。今のところ全部そろってる。」
 ジーンが満足げに笑う。

「ララが実際に見た物からしか必要にしてないんだろう。ミクシアもララも、今ある物で作るのが得意だからな。」

「ほう…感心することばかりだ。」

「ああ。チャクミの作業場は皆が特技を持ってるが、あの二人は別格だ。誰にも真似できん。…さ、急ぐぞ。」

「よし、次行こう。」

「しかしまあ、こんな夜中に材料運んでたら盗賊と思われそうだな。」
 キーンとジーンが笑い合いながら、なおも材料の調達を続けた。


 ララの設計に基づき、ミクシアが全体の指揮をとって完成を急ぐ。
 精度が求められる工程が増えてきてからは、チャクミの作業員のみが分担して仕上げるようになっていた。

「ジーンたちは、イルエスタが攻めてくる情報をどうにか高い確度で掴んでくれ。それに合わせて配置を進める。」

「わかった。と言っても、どこまで力になれるか分からんが。」

「できる範囲で頼む。」

 徹夜作業が続いた。

 朝が来て、昼が過ぎ、夕方。
 交代で少し眠りながら、カランとコランで準備してくれた食事をモグモグと頬張り、最後の調整に取りかかっていた。

「すまん。イルエスタの情報は得られなかった。」
 ジーンが頭を下げる。

「見張りを続けて、海に少しでも異常があれば連絡をください。やっぱり、ララの翼を使って探るか。」

「手が離せないから、嫌々だけど貸すよ。」
 ララが工具を振り回しながら、翼の保管場所を指差す。

「僕に行かせて。」
 ディアルトが、ララの作った翼をじっと見つめた。

 似ている。
 
 レンに。
 
 胸が少し痛い。寂しい。
 だけど、勇気が湧いてくる。 
 不思議な感情。

「レンの翼をそのまま真似してるからね。人が使うために色々改良はしたけど。」

「うん。すごく似てる。柔らかさも、形も。でも…だいぶ大きいし、軽いんだね。」

「扱いは少し複雑。コツがいるよ。」

 ララは翼をディアルトの両腕に装着し、外れないように丁寧に調整する。

「これで空、飛べるの?」

「私の発明だよ? 一定間隔で羽ばたくの。鳥の気分ってやつ。」

 ララが簡単に飛び方を説明する。
 どう考えても無理だとディアルトは思う。

「こう?」
 翼を軽くパタパタ。

「うわっ!!」
 足元がふわっと浮き、慌てて動きを止めて着地した。

「原石っていうのを使ってるの。超貴重だからね、絶対なくさないでよ。」

「原石、う、うん。」
 驚きで身体を固くしながら、翼を軽く触る。
 懐かしい感触がした。

「あ! こら! あまり触らないで! 微妙なバランスで成り立ってるの!」
 ララが工具を投げる真似をして、ぷんすかと怒る。

「ご、ごめん。」

 その後、少し羽ばたきの練習をしただけで動きに慣れ、風をつかんで海の方角へと飛び立っていった。
 風に乗って、そのまま夜空の高みへと舞い上がる。

「なんかさ、レンと一緒にいるみたいだ。」
 ディアルトが笑った。
 涙が頬を伝って落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

処理中です...