炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

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50 侵略者より早く来る影

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 そして、さらに夜が明けた。

「私は終了。寝る。」

 そのまま地面に横になり、倒れるように眠るララ。

「こっちは片付けるから、あとは計画通りに準備を頼む。」

 ミクシアはララを抱きかかえ、宿泊所の部屋へと連れて行く。
 キーンは三百人の兵士たちに指示を出し、完成した発明品を慎重に抱えて移動させていく。

「これで完成か?」

「本当に簡易バージョンだな。まあ、最低限って感じだ。」

 よだれを垂らしながら眠るララは、まるで荷物のように抱えられている。

「で、これはどう使うんだ?」

 背後から、どこかで聞いたことのある女性の声が近づく。
 両手が塞がっているミクシアは歩みを止め、嫌そうに眉をひそめた。

「また出たか。」

「私はお化けか。」

 黒いフードを深く被り、顔は見えない。
 その女性は手にしていた赤い石を指ではじき、空中で回転させてキャッチした。
 それは、カラン港でイルエスタからの襲撃の撃退を邪魔した正体不明の女性がミクシアの背後に密着する距離で金属の何かの刃先を背に接触させていた。

「よく燃えそうね、あれ。木製の巨大な玉? 箱? 部屋? 先端のは巨大弾丸!? 浮かぶのか!?」

「あのな、忙しいんだけど。」

「じゃあ要点を端的に。あれ何?どうするの?」

「兵器だ。すごいやつ。」

「どんなもの? 教えて?」

「嫌だと言ったら?」

「灰になるね。一瞬で。」

 彼女は赤い石を投げる仕草をして、ニヤリと笑う。

「わかった。」

 ディアルトがララをそっと地面に寝かせる。
 兵士たちは完成品を重そうに抱え、慎重に運搬を続けていく。
 その後ろを、ミクシアに着いてその女性は小走りでついてきた。

「まあこれはだな、こんな感じで。」

「ほうほう。」

「それで、これがこうだな。」

「はー。」

「さらにこれがこうだ!」

「すごいじゃん!」

 ミクシアはなぜか得意げに、その仕組みと動きまで丁寧に説明した。

「ほうほう、なかなかの技術力だ。イルエスタに並ぶかもね。」

「もういいか?」

「いいよ。」

「あっさりだな。」

「本当だったら邪魔したい気持ちでいっぱいだが、ご褒美だ。」

「ご褒美?」

「あの竜を犠牲にする選択をしたことだ。」

「あれはあいつの意志だ。」

「嘘だね。あの少年を守るため、竜に空中で爆発するようあらかじめ伝えていただろう。知ってるぞ。」

「な、なぜ、そのことを!?」

「ふっ。勘だ。」

「……」

「まあいい。我々はここで撤退する。」

「……」

「もう一つ、褒美をあげよう。イルエスタの船は今日、日が落ちる頃にカランの港に入る。三隻。その中の黒い旗を掲げた一隻が旗艦。そいつを破壊すれば、おそらく撤退するだろう。」

「なぜそんなことを?」

「趣味だ。」

「おい?」

「またどこかで会うかもな。」

「名は?」

 女性はフードを外して素顔をさらすと、にやりと笑い、飛び跳ねるようにどこかへ去っていった。
「イルエスタのユルカだ。」
 離れ間際にかすかに聞こえた。

「イルエスタのユルカ?なんだったんだ。信じていいのか?」

 ミクシアは息を飲み、その去って行く背を見つめていた。

 その女性が去って行った先で待ち構えていた二人の女性。
「もう限界です。戻りましょう。」

「何が?」

「え、あの、イルエスタの旗艦はムスクルスが指揮を執っているようです。見つかると厄介かと。」

「そうねぇ。ここで撃ち殺してもいいけど。どうかな?」

 先ほどの女性が、胸元から銃を抜き出す。

「あの、ここでは難しいかと、あの、その。」

「代わりにテチがやってくれる?」

「え?あの、あの、同じ王族でダメですよ。」
 ユルカに迫られてテチと呼ばれた女性が焦る表情で首を振った。 

「ほら、困ってるじゃない。もう撤退しましょう。」
 横で細かくユルカとミクシアの会話を記録していた別の女性が、肩をすくめた。

「冗談。至急この大陸を離れる。」

「はい。」

「でも離れてから、この結果だけは見ていくから。」

「わかりました。」

 その言葉を最後に、一隻の高速艇がラン大陸を離れていった。
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