炎光に誘われし少年と竜の蒼天の約束 ヴェアリアスストーリー番外編

きみゆぅ

文字の大きさ
54 / 62

51 夜の果てに残る光

しおりを挟む

 その日の夕方。
 カランの港には複数の兵器と、それに似せた張りぼてが物々しく設置されていた。

「さてと。最終チェックをしてくれ。それと、海だけでなく背後の警戒も怠るなよ。同じことは繰り返さないぞ。」
 ミクシアが走り回り、各配置の微調整を続けていく。

 そこから少し離れた場所には本陣が設けられ、コラン王や各国の代表者による臨時政府の面々が集まっていた。
 名目上はここから指揮を執ることとなっているが、実際はミクシアが現状を報告するだけの一方通行の情報伝達である。

「よし、兵士は全員持ち場についた。追加であと100人が動ける状態だ。」
 ジーンとキーンが並んでミクシアに告げる。

「わかった。その100名は臨時政府の護衛に回してくれ。ここからは全員、持ち場を離れないように。戦闘態勢に入る。」

 ララはミクシアの隣で、暇そうにぼーっとしている。

「ララ、あれの最終チェックは大丈夫か?」
「うん。もう手元にないし。」
「そうか。じゃあ、寝ててもいいぞ。」
「さすがにこの状態じゃ寝れないよ。寝すぎて眠くないのよね。」
「じゃあ、ゆっくりしててくれ。」
「ほい。」
 ララがふにゃふにゃと力を抜き、トコトコとどこかへ歩いていった。

 徐々に陽が落ち、赤い空がすぐに暗闇へと変わる。

 上空から、ぴゅーっと音を立てて羽の生えた人影が急降下してきた。

「ミクシア! 船が来る! 大きくて、でっかい大砲を積んだのが3隻!」
「よし、あとどれくらいで到着しそうだ!」
「もうすぐだよ。すごく早いんだ!」
「わかった。上空から見張ってくれ。作戦は頭に入っているな!?」
「うん、大丈夫。高度も一定を保てる。だいぶ空を飛ぶの慣れたよ。」

 ディアルトが腰に付けた明かりを点灯させると、両手に力を込めて思いきり羽ばたき、すぐに上空へと舞い上がる。
 そして暗くなった空に印を残すように、イルエスタの船の上空へと移動していった。

「よし、イルエスタが来たぞ!! ここからは実戦だ!! いくぞ!!」
 ミクシアの叫びに、周囲から一斉に応える声が上がる。

「どぉーーーーーーーん!!!」
 前方から発射された砲弾が頭上を通過し、激しい衝撃とともにミクシアたちの後方で爆発する。
 破片が空から降り注いだ。

「危ねぇ!」
 叫び声が上がるが、あらかじめ設置していた退避用の建物を盾にして防いだため、被害はほとんどなかった。

 イルエスタの船は接近するなり砲撃を仕掛けてきたため、全員が身を伏せて第二波に備える。
 港の最前線で構えるミクシアたちには、海面が大きく揺れているのが見えた。
 すでにイルエスタの船は、カランの港から肉眼で確認できる距離にまで近づいている。

「こっちも応戦するぞ!! 撃てぇ!!」
 ミクシアの合図で、ディアルトの腰の灯りを目印に、カランの砲撃兵たちが火薬で簡易的に作製した白い煙を吐く煙幕弾を一斉に放つ。
 たちまち港全体が白い煙に包まれた。

「問答無用で攻撃か……交渉の余地なしって感じだな。」
 ミクシアが照明弾をイルエスタの船に向かって撃ち上げる。
 パッと光が空で開き、ゆっくりと降下しながら船を照らした。

 三隻のうち、最も後方の船に大きな黒い旗が掲げられており、他の二隻よりも装飾が豪華だった。
 イルエスタ軍の旗艦であることを、まるで誇示するように見せていた。

 その旗艦の位置を確認すると、ミクシアは赤色の煙幕弾を上空へと打ち上げ、少しずつ後方へと下がっていく。
 周囲は白煙に覆われ、視界が奪われていく。
 もちろん、港に設置された兵器は船を沈めるほどの威力はないため、敵船からの砲撃はますます激しさを増していった。
 カランの港に上陸する前に、陸上兵器を一掃するつもりなのだろう。
 速度を落としながらも、確実に港へと近づいてくる。

「適度に撃ったら、次の作戦に移行するぞ!」
 ミクシアの号令に、兵士たちは大急ぎで最前線を離れ、港の中央部へと集まった。

 残った兵士たちは2門の砲台で、目視できる距離まで迫ったイルエスタの軍艦に向かって砲撃を続けたが、白煙の影響で狙いが定まらず命中率は大きく低下していた。
 それでも、大きな砲声とオレンジ色の閃光を一斉に放つその大砲は、威嚇効果としては十分だった。

 イルエスタ軍の兵士たちは銃を構え、射程にカランの港が入ると、船上からの一斉射撃が始まる。
 細かな銃声が無数に重なり、空気が震える。

「よし、全員撤退! 急いで港の中央部へ!」
 ミクシアが波止場に接近した船へ白煙を吐く煙幕弾を撃ち込み、一斉に走り出す。
 全員が慌ててその場から離れた。

 その時、イルエスタの軍艦のはるか上空から、光が一直線に、線を描くように船上へと落下していった。

「合図だ!」
 ミクシアが叫ぶと、どこからか赤い花火が三発、夜空に打ち上げられる。

 次の瞬間、
 カランの港のイルエスタの船が停泊し上陸しようとしていた地点の複数箇所から、激しい爆光と破裂音がほとばしった。
 地鳴りとともに海面が大きく揺れ、連続する爆発が起こる。

 その異常を察したイルエスタの艦隊は、ゆっくりと港を離れていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

処理中です...