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51 夜の果てに残る光
しおりを挟むその日の夕方。
カランの港には複数の兵器と、それに似せた張りぼてが物々しく設置されていた。
「さてと。最終チェックをしてくれ。それと、海だけでなく背後の警戒も怠るなよ。同じことは繰り返さないぞ。」
ミクシアが走り回り、各配置の微調整を続けていく。
そこから少し離れた場所には本陣が設けられ、コラン王や各国の代表者による臨時政府の面々が集まっていた。
名目上はここから指揮を執ることとなっているが、実際はミクシアが現状を報告するだけの一方通行の情報伝達である。
「よし、兵士は全員持ち場についた。追加であと100人が動ける状態だ。」
ジーンとキーンが並んでミクシアに告げる。
「わかった。その100名は臨時政府の護衛に回してくれ。ここからは全員、持ち場を離れないように。戦闘態勢に入る。」
ララはミクシアの隣で、暇そうにぼーっとしている。
「ララ、あれの最終チェックは大丈夫か?」
「うん。もう手元にないし。」
「そうか。じゃあ、寝ててもいいぞ。」
「さすがにこの状態じゃ寝れないよ。寝すぎて眠くないのよね。」
「じゃあ、ゆっくりしててくれ。」
「ほい。」
ララがふにゃふにゃと力を抜き、トコトコとどこかへ歩いていった。
徐々に陽が落ち、赤い空がすぐに暗闇へと変わる。
上空から、ぴゅーっと音を立てて羽の生えた人影が急降下してきた。
「ミクシア! 船が来る! 大きくて、でっかい大砲を積んだのが3隻!」
「よし、あとどれくらいで到着しそうだ!」
「もうすぐだよ。すごく早いんだ!」
「わかった。上空から見張ってくれ。作戦は頭に入っているな!?」
「うん、大丈夫。高度も一定を保てる。だいぶ空を飛ぶの慣れたよ。」
ディアルトが腰に付けた明かりを点灯させると、両手に力を込めて思いきり羽ばたき、すぐに上空へと舞い上がる。
そして暗くなった空に印を残すように、イルエスタの船の上空へと移動していった。
「よし、イルエスタが来たぞ!! ここからは実戦だ!! いくぞ!!」
ミクシアの叫びに、周囲から一斉に応える声が上がる。
「どぉーーーーーーーん!!!」
前方から発射された砲弾が頭上を通過し、激しい衝撃とともにミクシアたちの後方で爆発する。
破片が空から降り注いだ。
「危ねぇ!」
叫び声が上がるが、あらかじめ設置していた退避用の建物を盾にして防いだため、被害はほとんどなかった。
イルエスタの船は接近するなり砲撃を仕掛けてきたため、全員が身を伏せて第二波に備える。
港の最前線で構えるミクシアたちには、海面が大きく揺れているのが見えた。
すでにイルエスタの船は、カランの港から肉眼で確認できる距離にまで近づいている。
「こっちも応戦するぞ!! 撃てぇ!!」
ミクシアの合図で、ディアルトの腰の灯りを目印に、カランの砲撃兵たちが火薬で簡易的に作製した白い煙を吐く煙幕弾を一斉に放つ。
たちまち港全体が白い煙に包まれた。
「問答無用で攻撃か……交渉の余地なしって感じだな。」
ミクシアが照明弾をイルエスタの船に向かって撃ち上げる。
パッと光が空で開き、ゆっくりと降下しながら船を照らした。
三隻のうち、最も後方の船に大きな黒い旗が掲げられており、他の二隻よりも装飾が豪華だった。
イルエスタ軍の旗艦であることを、まるで誇示するように見せていた。
その旗艦の位置を確認すると、ミクシアは赤色の煙幕弾を上空へと打ち上げ、少しずつ後方へと下がっていく。
周囲は白煙に覆われ、視界が奪われていく。
もちろん、港に設置された兵器は船を沈めるほどの威力はないため、敵船からの砲撃はますます激しさを増していった。
カランの港に上陸する前に、陸上兵器を一掃するつもりなのだろう。
速度を落としながらも、確実に港へと近づいてくる。
「適度に撃ったら、次の作戦に移行するぞ!」
ミクシアの号令に、兵士たちは大急ぎで最前線を離れ、港の中央部へと集まった。
残った兵士たちは2門の砲台で、目視できる距離まで迫ったイルエスタの軍艦に向かって砲撃を続けたが、白煙の影響で狙いが定まらず命中率は大きく低下していた。
それでも、大きな砲声とオレンジ色の閃光を一斉に放つその大砲は、威嚇効果としては十分だった。
イルエスタ軍の兵士たちは銃を構え、射程にカランの港が入ると、船上からの一斉射撃が始まる。
細かな銃声が無数に重なり、空気が震える。
「よし、全員撤退! 急いで港の中央部へ!」
ミクシアが波止場に接近した船へ白煙を吐く煙幕弾を撃ち込み、一斉に走り出す。
全員が慌ててその場から離れた。
その時、イルエスタの軍艦のはるか上空から、光が一直線に、線を描くように船上へと落下していった。
「合図だ!」
ミクシアが叫ぶと、どこからか赤い花火が三発、夜空に打ち上げられる。
次の瞬間、
カランの港のイルエスタの船が停泊し上陸しようとしていた地点の複数箇所から、激しい爆光と破裂音がほとばしった。
地鳴りとともに海面が大きく揺れ、連続する爆発が起こる。
その異常を察したイルエスタの艦隊は、ゆっくりと港を離れていった。
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